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K-POPや韓国ドラマへの興味も学びの入り口。歴史の中の「人」を見つめ、多文化共生社会を生きるヒントをつかむ

比較文化学部 比較文化学科

酒井 雅代 准教授

2025/5/17

「人」に焦点を当ててその実態を解明し、具体的な歴史を描く

――研究内容を教えてください。

専門分野は歴史で、日本史をベースとして主に日本の対外関係史を研究しています。具体的には、江戸時代の日本が他の国や地域とどのように交流していたか、とくに朝鮮王朝との関係からひもといています。高校までの教科書には、江戸時代の国際交流として、江戸幕府に朝鮮王朝からの外交使節(通信使)が派遣されていたことや、朝鮮・釜山に日本人居留地が設けられた事実が紹介されています。私の研究では、そこからさらに個々の「人」に焦点を当て、両国の人々の間にどのような国際交流があったか、双方の社会や国同士の関係にどう影響したかを解明していきます。

――具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

歴史の研究はミステリーの謎解きと似ているところがあり、結論を裏付ける史料を十分に集めて読み、分析、論証していきます。現在は江戸時代から明治初期までの外交史研究に関心があり、外交の現場にいた人々の間でどのような交渉があったのか、それに対して対馬藩、朝鮮王朝、江戸幕府あるいは明治新政府の思惑はどうだったかなどを明らかにしています。最終的には、人々の活動と国家政策とを統合した歴史を描くことを目指しています。
日本と朝鮮王朝との関係は、時代ごとに変遷しており、江戸時代には友好的で対等だった関係が、幕末維新期を経て明治新政府のもとで非友好的で支配する・されるという関係に変わっていったと考えられています。「国」の視点で見るとたしかに急速に悪化したように見えますが、実際の現場にいた「人」の視点で見ると、対立的な関係ばかりではなかったことが調べてみるとわかってきました。研究活動では、時に歴史上の現場を訪れて分析を進めることも。釜山には200年前と同じ道路や風景が残っている場所が多く、自分の足で歩いて距離感を理解するようなフィールドワークも大切にしています。

過去の人々から、異国や異文化間で起こる出来事を学ぶ

――この研究との出会いを教えてください。

大学時代、日本史を専門的に学ぶにはアジア圏の言語理解が必要だと考え、韓国語を第二外国語として選択しました。1年次の春休みに、先生や学生と渡韓して現地学生と交流する機会を得たのですが、意思疎通に苦労する場面があり、歴史や文化が異なる相手を理解するときに、言語が果たす役割の大きさを痛感したのです。
ちょうどその頃、日本近世史の授業で知ったのが日朝外交を担っていた対馬藩の朝鮮語通訳官の存在です。調べてみると、通訳としてだけでなく、単独で朝鮮側と交渉する外交官のような役割もあったということを知り、個人として相手の文化や習慣を十分理解しているだけに、日本側の主張を通さなければいけないという職務に大きな苦労や葛藤があったのではないか、と思いを馳せました。そして、どのようにその困難を乗り越えたのかに強く関心を持ち、異国や異文化と接しながら活動する人々そのものに興味を覚えるようになったのです。


――研究の魅力はどんなところにありますか。

私の研究のポイントは、異国や異文化に接していた人々の活動から歴史を描くところ。史料を十分に集め、結論に至るまでには手間も時間も要しますが、それが研究の醍醐味です。また、過去の人々の言動や考えを分析することで、文化の異なる人々の間で起こることや、それを個人や組織がどう乗り越えてきたかを学べる点も魅力です。過去の話にとどまるものでなく、多様なバックグラウンドの人々と共生する現代社会を生き抜く手掛かりにもなるでしょう。

大学で「好き」を探究し、カタチにする

――学生たちの教育で意識していることは何でしょうか。

K-POPや韓国ドラマなどをきっかけに、韓国への関心が高い学生がとても増えています。「日韓関係論」などの授業やゼミで心掛けているのは、自分の好きなアイドルが育ってきた韓国社会や文化、歴史にまで学生たちが一歩踏み込み、興味の幅を広げていけるような内容を展開することです。また、私自身、大学1年次の渡韓経験が研究の道に進むきっかけになっているので、学生たちにもさまざまな体験をしてほしいと考えています。そのため、長期休暇中に文化研修として学生たちと韓国へ行ったり、博物館や美術館などに出掛けて実物を見たりといった経験を通じて、思考力や想像力を伸ばし、多角的な視野を得られるようサポートしています。

――受験生へのメッセージをお願いします。

高校生活の中でいろいろなことを体験し、自分の「好き」をぜひ、見つけてください。大学は、その「好き」をさらに深めカタチにしていく場です。比較文化学部には、日本と世界の文化に関心を持つ学生が多く集まっています。また、さまざまな地域を研究する教員がおり、その数も本学の中でもっとも多いため、皆さんの関心に近い選択肢があると思います。自分の「好き」を手掛かりに、大学4年間で実践的に学ぶ形式の授業やプログラムを通じて探究を深め、多文化共生社会で生きる力を身につけませんか。