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経済学の視点から、太陽光発電や電気自動車の普及に効果的な政策を導き出す

社会情報学部 社会情報学科 社会生活情報学専攻

荒川 潔 教授

2024/02/20

エネルギー問題解決の一助になるのは、補助金か税制優遇か?

――研究内容を教えてください。

専門分野は応用経済学です。応用経済学とは、消費者や企業などの生産者が経済的な取引を行う市場に注目した経済学の理論だけでなく、調査によって得られたデータを分析して客観的な事実を導き出す計量経済学の手法を用いるもの。着目したテーマについて、世の中で調査されたさまざまなデータをうまく活用して、結論を導き出していきます。私は、太陽光発電と電気自動車のような、再生可能エネルギーとモビリティが効率的に接続する制度設計について研究を進めています。

――具体的にはどのようなことをされているのでしょう。

近年、地球温暖化や電力需給のひっ迫によって、再生可能エネルギーを活用した電力の強靭(きょうじん)性をいかに高めるかが課題となっています。そのため、住宅やオフィスで太陽光発電や蓄電池、電気自動車などを活用した電力の自家消費の普及と、再生可能エネルギー由来の電力を活用した環境負荷の低いモビリティとの両立が求められています。そこで、私の研究では、電力の自家消費導入にかかる、現在と将来の費用を消費者がどのように評価するかに着目し、購入時の補助金と購入後の税金のどちらが普及に効果的なのかを分析しています。太陽光発電を導入するためには、設置時に高額な費用が必要です。一方、設置後は電気代の節約や、売電による利益を得られますが、メンテナンス費用がかかります。消費者がどちらの費用を重視するかを調査することで、政策効果の測定や企業のマーケティング戦略にも寄与すると考えています。

丹念な情報収集やデータ整備が研究のオリジナリティにつながる

――研究の魅力はどんなところにありますか。

太陽光発電と蓄電池、電気自動車を統合したシステムの普及を促進する税制や料金体系、規制とは何かを解明することで、社会課題の解決にもつながるところがこの研究の魅力です。都市の成長には交通が不可欠です。これからは自動運転の車も増えることでしょう。今、議論されているライドシェアが導入されるかもしれません。モビリティの可能性が多くある一方で、環境問題への配慮も重要です。再生可能エネルギーの普及はSDGsに強く関連しています。電気自動車と再生可能エネルギーを組み合わせることで、環境への負荷が小さい移動が実現できると考えています。また、研究を通じて、消費者の需要と供給の構造を分析することは、行動経済学的にも重要な問題だと感じています。

――具体的な研究活動について教えてください。

まず、最新の研究動向に加え、新聞や雑誌で再生可能エネルギーや自動車業界のニュースをチェックし、太陽光発電や電気自動車の普及に必要な政策に関する研究テーマを設定します。そして、太陽光発電や自動車の販売店に行き、現場のスタッフから直接、情報を集めてテーマを展開していきます。分析データに利用するのは、主に官公庁や業界団体が公開している資料です。ただ、直接使えるものはほとんどなく、経済学や統計学の理論と、それに基づいた分析用のプログラムで既存のデータを整備していきます。時間のかかる大変な作業ですが、研究のオリジナリティに結びつく大切なものでもあります。また、既存の研究にはない新しい分析結果が得られても、それが経済学的に意味のある解釈ができるかどうかを丹念に検討する必要があります。このように、さまざまな計量経済学の手法で分析することで、データを多角的に捉えることができ、現実の経済状況を深く理解することにつながっていきます。

身近な事例を通じて、経済学への関心を育てる

――学生たちの教育で意識していることは何でしょうか。

研究成果を授業にフィードバックすることを心掛けています。授業で太陽光発電や電気自動車の普及状況、日本と欧米の消費行動の違いなどを事例として紹介し、学生の経済学に対する理解促進につなげたり、話題の社会課題を取り上げ、関連する産業界の最新ニュースや取り組み内容を説明して就職への意識を高めたりしています。各自でテーマを設定して取り組む卒業研究では、既存のデータ利用だけでなく、必要なデータを収集する手法を考え、アンケート調査や実験を行って分析する大切さを伝えています。

――受験生へのメッセージをお願いします。

経済学、経営学、社会学、メディア学の4分野を学ぶ本専攻では、社会で起こっていることを多面的に見る力が養われます。例えば、同じ事柄でも理論的に分析していく経済学と、現場での調査から考えていく社会学とでは見えてくるもの、導かれる結論も異なります。そういった感覚を身につけ、変化する社会に柔軟に対応できる人材へと成長できる本専攻で一緒に学びましょう。