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人類が古代から追い続ける宇宙の謎に迫り、天文学の魅力を広く発信する

社会情報学部 社会情報学科 環境情報学専攻

下井倉 ともみ 准教授

2024/12/09

星が生まれる瞬間や進化の様子を、さまざまな望遠鏡で観測する

――研究分野について教えてください。

研究分野は天文学です。天文学では、星や銀河、宇宙の構造など宇宙そのものを対象に、その本質的な姿を解き明かしていきます。人類は、古代から空を眺めて星を観測し、さまざまな発見をしてきました。現代では、人工衛星や高性能の観測装置の開発によって、以前は不可能だった観測や調査が次々と可能になり、今なお新しい発見が生まれています。この、古代からの探求と最先端技術による発見が織りなす天文学は、まさに『最も古く、そして最も新しい学問』と言えるのではないでしょうか。

――研究テーマと、その具体的な内容を教えてください。

電波、赤外線、可視光など、さまざまな波長の光を観測できる望遠鏡を用いて、地上からと宇宙空間からの観測を行い、太陽のような星がどのように生まれるのかを研究しています。研究の目的は、自ら光り輝く星の誕生プロセスを解明することです。これは太陽系の形成過程の理解にもつながり、ひいては地球や私たち自身の起源を考える重要な手がかりとなります。
では、星はどのように誕生するのでしょうか。宇宙空間には巨大なガス雲(星間分子雲)が存在し、その中で星が誕生していきます。私は星間分子雲からの観測データを解析して、詳細な物理過程の解明に取り組んでいます。最近の研究では、まさに誕生前の星にガスが流れ込む様子を観測で捉え、その成果を論文として発表しました。このような研究は一人では成し遂げられません。国内外の研究者たちと力を合わせて研究を進めており、現在は新しい星形成モデルの構築に取り組んでいます。

天文学との出会いと、その魅力


――この研究との出会いを教えてください。

幼い頃から『なぜ星は輝くのだろう』という疑問を抱いていました。高校生になって、天体からは人間の目には見えないさまざまな種類の光がやってきていることを知りました。特に印象的だったのは、電波や赤外線など、目に見えない光を観測することで、可視光では捉えられない星の誕生の様子が解明できるということです。目に見えない光を通して星の誕生の謎に迫れることに強く惹かれ、このテーマを選びました。


――研究の魅力はどんなところにありますか。

天文学は壮大な宇宙を扱う学問ですが、実は私たちの身近なところにその知識が豊富に活かされています。例えば、スマートフォンのGPS機能は人工衛星からの電波を利用し、天気予報に欠かせない気象衛星も宇宙の観測技術の応用です。このように、さまざまな光(電磁波)の性質を理解し活用することは、天文学の研究から始まりました。星からの情報で私たちの生活が豊かになるのは素敵だと思いませんか。
このように私たちの暮らしを支える技術の源となる一方で、研究者として私が特に魅力を感じるのは、まだ誰も見たことのない星の誕生の謎に挑めることです。観測データを解析していると思いがけない発見に出会うことがあり、そのときの興奮と喜びは何物にも代えがたいです。

天文学の魅力を伝え、学生の興味や視野を広げたい

――学生たちの教育で大切にしていることを教えてください。

授業やゼミでは、天体望遠鏡を使って太陽や星雲を観測するほか、地層を調べるなどの実習を大切にしています。ゼミに入る前までは、理系は難しいと自分の可能性を過小評価してしまっていた学生も、実際に自分の目で観測・調査すると目を輝かせ、もっと知りたいと積極的に研究を進める様子を見てきました。学生たちの探究心には、驚くべき可能性があります。従来の文系・理系の枠にとらわれず、ぜひ自然の奥深さに触れ、その探究に挑戦してほしいと思います。
天文学は文理の境界を自然に橋渡しする学問で、自然科学分野だけでなく、人間の存在について考える哲学、芸術、文学など、さまざまな分野と深く関わっています。この特徴を活かして、ゼミの学生たちはそれぞれの得意分野から、宇宙、地球、環境をテーマにした活動を展開しています。例えば、プログラミングが好きな学生は宇宙をテーマにしたゲームの制作や機械学習を用いた雲の判別コードの開発、また、創作が得意な学生は宇宙の立体地図などの展示物を制作しています。観測データの解析に挑戦し、天文学の研究を進めている学生もいます。地球を宇宙から見る視点を身につけることで学生たちは幅広い視野でものごとを考えられるようになり、このことは社会に出てからの大きな強みとなっています。私にとって、学生たちと一緒に研究に取り組む日々は、かけがえのないものです。


――今後の目標を教えてください。

研究面では、最新の観測技術を駆使して星の誕生の過程をより詳しく明らかにすることを目指しています。そのために、世界中の研究者との共同研究を進めています。同時に、私たちが暮らす地球や宇宙への理解を広げる活動にも力を入れています。天文学の研究は本当に楽しく、この楽しさを多くの人に伝えたいと考えています。宇宙の仕組みが視覚的に分かる天文教材を学生たちと制作するほか、公開講座などによって、天文学の魅力を多くの方々に伝えていきたいです。物理学や天文学分野では女性研究者がまだ少ないのが現状ですが、研究と教育の両面に積極的に取り組み、自然科学の探究に挑戦する女子学生のロールモデルになれればと願っています。