大学紹介
入試・入学
学部・短大・大学院
研究
就職・キャリア
​学生生活
​留学・国際交流
地域連携・社会貢献

科研費 過去の採択状況 平成30(2018)年度

採択課題一覧

大学

※研究課題名をクリックすると課題詳細がご覧いただけます。

研究種目等研究課題名研究代表者所属職名研究期間
(年度)
実施状況報告書・実績報告書研究成果報告書
基盤研究(A)人が生育する限界的環境に於ける発育発達(生活技術の発達を含む)と成熟の総合的研究

人が生育する限界的環境に於ける発育発達(生活技術の発達を含む)と成熟の総合的研究

発育発達過程に関する研究は19世紀後半からヨーロッパ、アメリカ、日本を含む東アジアなどの四季のある産業が発達した先進的な国々で行われてきた。よって子供の発育発達に関する知識はこれら以外の地域では蓄積されてこなかった。本研究によってこれまで未知であった東南アジア諸民族の発育発達に関するデータを収集・蓄積し、またこれまでに定説として信じられてきた重要な学説の弱点、誤謬を修正することが出来た。例示すると思春期の身長スパートの普遍的一律性の修正、狩猟採集民の思春期長期化の確認などである。2次的には各地域・民族のデータによって発育発達評価基準値が得られ、不適切な発育発達診断が是正される基礎を提供した。

CLOSE
大澤 清二人間生活文化研究所所長H27-H30
基盤研究(B)日系国際児のバイリテラシー形成過程の質的探究とその展開

日系国際児のバイリテラシー形成過程の質的探究とその展開

本研究の学術的意義は、次の2点にある。第1点は、児童期に複数の言語で読み書きを習得する国際児のバイリテラシーの発達は、定期的かつ協働的な家族内実践に支えられていることを独日国際児の事例を通して具体的に開示したことである。第2点は、日本語を複数言語の1つとして習得する児童の作文力の発達過程は、日本語母語児とは違う道筋を辿ることをドイツ語を優勢言語とする児童の例に基づいて具体的に示したことである。これらの知見は、これまでほとんど未解明であった日系国際児の継承日本語リテラシーの伸び方に関する基礎資料となり、日本語補習校における作文指導の改善という実践的課題にも貢献し得るものである。

CLOSE
柴山 真琴家政学部教授H26-H30
臭いの快不快評価定量化の試みと在宅介護不快臭対策への応用

臭いの快不快評価定量化の試みと在宅介護不快臭対策への応用

我が国の高齢者人口は、2016年3459万人で総人口に占める割合が27.3%となり、2065年には約4割を占めると予想され、日本は高齢化が急速に進んでいる。近年、75才以上で介護が必要な人数が増えて高齢者施設の需要が急増している。しかし、介護保険法の改定によって特別養護老人ホームへの入所は原則要介護3以上とされ入所を制限されている。また、平成24年に行われた内閣府の調査では、60歳以上の男女を対象として日常生活を送る上で介護が必要となった場合、どこで介護を望むかという質問に対して、男女共に自宅での介護を望むが一番多い結果であった。これらのことから、今後は在宅介護が中心になると予想される。
在宅介護現場、病院および高齢者施設では、においが問題視されている。においが原因で、介護に負担を与え、被介護者と家族の家族関係を悪化させることがある。一方、在宅介護は、閉ざされた環境下で家庭の生活状況に応じてにおいが異なり、様々な生活臭と介護臭とが混合した状態で存在すると考えられる。高齢者施設や病院では、においに対して換気扇、消臭カーテン、消臭壁紙など大規模な設備を用いて対策が講じられている。しかし、家庭での介護では、悪臭除去のための設備に限界があり、市販の消臭剤を用いた簡便な消臭方法で対策をしているのが現状である。
本研究は、実際に在宅介護家庭の臭気を収集して不快臭の種類と原因物質を調べることを目的とした。在宅介護における被介護者の居室に捕集材を一週間放置後、捕集された成分を抽出してGC-MSに供した。その結果、尿臭、排泄物臭、加齢臭のような身体から発生する不快臭で、汗や加齢臭を想起させる脂肪酸類ノネナール、尿などの排泄物を想起させるフェノール類が検出された。

CLOSE
水谷 千代美家政学部教授H29-H32
経験的概念としての「ポジショナリティ」の実証的研究

経験的概念としての「ポジショナリティ」の実証的研究

2018年度は、様々な社会的権力関係を実証的に分析することを通じて、ポジショナリティに纏わる①齟齬・係争、②当事者性、の2点を中心に研究を行なった。日本と沖縄の関係については、基地問題をめぐる運動論的争点の一つである「県外移設論」「基地引き取り論」への批判的言説を分析することによって、「沖縄人」「日本人」というポジショナリティおよびその権力関係を浮き彫りにできた。また梶田孝道らの「受益圏/受苦圏」概念が、ポジショナリティの整理において一定程度有効であることも確認された。同時に「沖縄人」のポジショナリティは現在の権力性と歴史性の双方によって規定され、東アジア周辺地域との歴史的関連性、琉球列島諸島の差異の考察が、必須であることを再確認した。さらにこれらの沖縄に関わる分析と、在日外国人や昨今のヘイトスピーチをめぐる議論に表出するポジショナリティの構造を比較し、共通性を発見することができた。またDV被害女性を支援するNGO支援者の分析過程で、公的機関の一部にはDV被害当事者及びNGOのポジショナリティを軽視する傾向があり、支援の際に齟齬や対立があることや、外国人市民の権利獲得支援運動等において性差に基づくポジショナリティの軽視が、齟齬や当事者性の混乱を惹起している状況も確認できた。これらの分析から、社会運動等の現場で、多様なアイデンティティ(国籍・性・エスニシティ等)を有する参加者が協働し合っている事実を、ポジショナリティの無効化と混同する傾向が強いことが確認された。総じてポジショナリティをめぐっては、コミュニケーション水準における齟齬と、集団責任についての認識水準における齟齬の、二つの水準の齟齬があることが明らになった。また当事者性という概念も、ポジショナリティとの関連による複層性に留意する必要が確認できた。またポジショナリティの量的調査法についても基礎的検討を行った。

CLOSE
池田 緑社会情報学部准教授H30-H32
ミャンマー135民族の民族服製作技術の残存調査と技術学習過程の最適化方法論の開発

ミャンマー135民族の民族服製作技術の残存調査と技術学習過程の最適化方法論の開発

  • 東南アジア諸国の博物館等には多様な少数民族の民族服が保存展示されているが、民族服の製作技能保有者、継承者は全域的に激減しつつある。彼らの社会の殆どが無文字社会の為に学習マニュアルや文字資料が残されておらず消失が危惧されている。本研究ではミャンマーの135全民族の伝統的正装・民族服の製作技術を保存し、継承者の学習を容易にする為に教育科学的合理性をもつ学習過程の開発・提案を行い、その製作技術と民族服文化を後世に継承する為の基礎研究を行う。
  • 初年度である2018年度は、4月に国内メンバーによる準備会を開催し、役割分担を確認するとともに、「調査員調査手引き」を作成した。これを使用して5月にミャンマーの協力機関(大学)において調査協力者、調査員を対象とした研修と標本資料収集に向けた準備を開始した。次いで7月には、135全民族の伝統的正装・民族服(男女計270)の現物標本資料の収集を開始した。収集した標本は番号を付し、収集時の情報(収集日、収集場所、収集者、資料提供者、製作者等)を文字情報として保存した(標本整理)。さらに詳細な調査(標本資料の寸法計測、製図、民族服の特徴を固有属性(糸の種類・織り方・文様の種類・形状の特徴等)の抽出)のための準備を行った。
  • 民族服製作技能保有者と継承者・学習者を探し出し、民族服製作に関する経歴に関する実態調査(性別・年齢・居住地・製作可能な民族服(正装)の種類・保有技術の種類等)を開始した。
  • 2月、調査研究の拠点であるミャンマーの協力機関(大学)において、次年度に向けた調査研究の打合せを行った。
CLOSE
下田 敦子人間生活文化研究所講師H30-H33
基盤研究(C)ガバナンスのリスク社会論・監査社会論的研究――資本主義と民主主義の現代的変容

ガバナンスのリスク社会論・監査社会論的研究――資本主義と民主主義の現代的変容

1980年代以降、現代社会の統治構造は、国家による垂直的な統治(ガバメント)から、国家・企業・NPO等、多様な主体による水平的な統治(ガバナンス)へと移行してきている。本研究では、このような統治構造の変化を「リスク社会論」や「監査社会論」に関連づけて分析した。研究をつうじて、「リスク管理」や「監査」の概念が当初の意味を超えて大幅に拡大解釈され、組織や社会の日常的・全般的な活動にわたって適用されるようになったこと、さらに、リスク管理や監査が組織や社会の統治原理を構成する基本的な要素になってきたことを明らかにした。

CLOSE
正村 俊之社会情報学部教授H27-H30
(期間延長)
移行期における次世代自動車の開発と普及のための税制と規格,規制の理論・実証分析

移行期における次世代自動車の開発と普及のための税制と規格,規制の理論・実証分析

本研究の目的は、移行期における次世代自動車の開発と普及を図るための効果的な税制と規格、規制を解明することである。理論分析の結果、次世代自動車の市場規模が小さい場合、税制がイノベーションを効果的に促すことを明らかにした。また、電気自動車の普及のためには、車体価格に応じた補助金より充電池容量に応じた補助金の方が効果的であることを明らかにした。そして実証分析では、自動車税制が技術革新に強く影響を与えること、そして次世代自動車の普及には維持に関する税制上の優遇が効果的であることを明らかにした。

CLOSE
荒川 潔社会情報学部准教授H27-H30
(期間延長)
女子学生を対象とした食行動異常発現・維持の要因分析と予防教育法の開発

女子学生を対象とした食行動異常発現・維持の要因分析と予防教育法の開発

本研究では,女子学生を対象に,食行動異常の発生機序や維持要因について検討した。ここでは,食行動異常発現・維持に係る心理的メカニズム(心理モデル)を策定することを第一の目的とした。検討の結果,身体に関する他者評価への懸念を起点とする頑健な心理モデルが策定された。また,男性を対象とした心理モデルを検討した。その結果,女性モデルと比較することにより,性差を考慮した検討を行った所,女性性パーソナリティの高さが食行動異常の発現・維持に関係する可能性が推測された。以上の結果を踏まえ,食行動異常の予防的心理教育プログラムを考案した。

CLOSE
山蔦 圭輔人間関係学部准教授H27-H30
(期間延長)
日本語文学における検閲とジェンダー

日本語文学における検閲とジェンダー

大正・昭和期の新聞・雑誌メディアの言語と小説の言語を主な分析対象とし、ジェンダーをめぐる言説論理が検閲制度とのかかわりによってどのように形成されたのかを明らかにしようとするのが、本研究の目的である。戦前期の検閲は、制度としての伏字を基軸として実践されたが、本研究では検閲とジェンダーという主題に基づき、伏字とジェンダーの力学の関係性を検証した上で、伏字のもつ記号的効果を理論化し、検閲という観点から、日本語文学におけるジェンダー編成を明らかにすることを目指した。
本年度は、(1)明治期の言説編成をめぐる資料調査、(2)現代における明治・大正期の物語の表象という2点を念頭に、資料調査と考察を行った。大妻女子大学図書館、国立国会図書館、国文学研究資料館、都立図書館等で、1次資料を収集するとともに、調査を進めた。その過程で、不可視にされた戦時性暴力の構造について考察し、可視と不可視の境界線がどのように記述されるかという観点から、女性身体と暴力の構造、セクシュアリティをめぐる規範の生成、それにかかわる検閲的な禁止の問題について考察を進めた。
また、ジェンダー論やセクシュアリティ研究、クィア理論に関する理論的文献について、研究会等での発表や討議を通じて、新たな理論的地平を獲得することにつとめた。そのなかで、プライベートな領域の策定と公への「現れ」を規制するセクシュアリティの制度について検証するとともに、ナショナリズムをめぐる情動の構成をジェンダー論的な観点から考察し、国内学会等で研究発表をおこなった。かつての検閲をめぐる感性がナショナリズムの情動とどのように切り結ぶのか検証し、その情動には不可視化されたかたちで性暴力の構造が伴われるというテーマ設定のもと、分析をおこない、考察の一部を論文にまとめた。

CLOSE
内藤 千珠子文学部教授H27-H31
金融市場の高頻度データ解析とリスク管理への応用

金融市場の高頻度データ解析とリスク管理への応用

金融データーにはネットワークデータ(企業間ネットワーク、株式保有関係、取引関係など)と時系列データ(企業業績、株価)の2種類のデータ構造がある。これらのタイプの違うデータ構造をもつデータを統合して解析する手法の開発を目指した。特に、ネットワークの各ノード上に時系列データが付随した複合的なデータに対して畳み込みニューラルネットワークを適用する方法を検討した。
具体的には、畳み込みニューラルネットワークなどの学習マシーンにデータを入力する前に、スペクトラルクラスタリングによって次元圧縮を行い学習時間を圧縮する方法を検討・応用した。この手法を用いる対象データとしては、ネットワークデータと、そのネットワークのノードに付随した時系列データである。金融データとしては株式市場における企業間ネットワークと株価・業績などの時系列データを想定している。
今回用いたスペクトラルクラスタリングは、ネットワークの隣接行列からラプラシアンを構成して、その固有値問題(主成分分析)を解いて、寄与の大きい固有値・固有ベクトルを求める。それを2次元グラフ上に表現して、そのグラフ上で時系列データを表現すると画像データと類似したデータ構造となる。そのうえで畳み込みニューラルネットワークを適用することによって、次元圧縮で高速に学習されるアルゴリズムとなる。今回、これを他分野のデータに応用したが、今後金融データ(企業業績、株価データ)に応用する予定である。

CLOSE
落合 友四郎社会情報学部准教授H27-H31
星座カメラi-CANを活用した,日本中の小学校で星の学習ができる教材の開発

星座カメラi-CANを活用した,日本中の小学校で星の学習ができる教材の開発

星座カメラi-CANを日本中どこの小学校でも一斉に使えるようなシステムを構築し、日本中の小学校の理科の授業で星の学習を行う時期には、全ての理科教科書が扱っている星座等の星の集まりにカメラを向けて、小学校の理科授業中に星座カメラの映像を使って星空の観察ができるような体制をつくった。
九州から北海道までの10カ所の小学校で星座カメラを使った理科の授業を実施、星座カメラi-CANを使った後に、子どもたちが星を観察してきた記録とi-CANを使わずに観察してきた場合の記録の精度を見ることで、i-CANを活用する効果を評価することができた。

CLOSE
石井 雅幸家政学部教授H28-H30
伝統的農法「稲田養魚」の高い米魚生産性を支える生態系プロセスの科学的検証

伝統的農法「稲田養魚」の高い米魚生産性を支える生態系プロセスの科学的検証

稲田養魚の高い生産性を支えるメカニズムを解明するため、炭素窒素安定同位体比を用いて水田内の有機物フローを評価した。養魚水田は慣行水田に比べて動物性有機物の供給が大きかった。この養魚水田の動物性有機物は、魚(フナ)のふんによってかなりの程度説明されたが、養魚飼料の食べ残しのほうがより大きな割合を占めた。フナの餌に占める天然餌料の割合は一定程度あるものの、養魚飼料の貢献のほうがより大きかった。以上のことから、養魚水田生態系内部の食物連鎖が土壌肥沃化に一定の役割を果たすことが示された一方、系外から投入される養魚飼料が土壌の栄養状態により大きく作用し、本農法の高い生産性をもたらしていることがわかった。

CLOSE
小関 右介家政学部准教授H28-H30
手芸文化データベースの構築と教育現場への活用

手芸文化データベースの構築と教育現場への活用

本研究は明治~昭和時代の女子教育で行われた高度な手芸教育の再評価と、教育現場への活用方法を見出すことを目標に行った。関東の女子大学4校所蔵の手芸作品881点と手芸技法書5冊の画像からデータベース(非公開)を作成した。このデータベースを学生30名、手芸をする一般ユーザー4名に試用してもらった。この結果を受け、一般的なHP型とSNS型を作成し、データベースとリンクさせたことで、検索性と情報発信力が高まり、ユーザーの使用性が向上した。手芸文化を広く発信し活用するには、データベースは有効な手段であり、さらに汎用性の高いSNS等のフォーマットを併用することが重要であることが明らかとなった。

CLOSE
中川 麻子家政学部准教授H28-H30
エジプト・コプトの染織品とインド更紗の制作年代および制作地の特定に関する研究

エジプト・コプトの染織品とインド更紗の制作年代および制作地の特定に関する研究

平成30年度の研究実績として、国内調査を女子美術大学で実施した。約50点のコプトの染織品と40点のインド更紗(コプトの遺跡から発掘されたと考えられている作品)の調査を終えた。またこれらのインド更紗のうち8点については、放射性炭素年代測定(AMS-14C法)を実施し、各作品の制作年代を検討した。その結果、それぞれ15世紀が6点、13-14世紀が1点、8世紀が1点の3群に分類できるような結果が出た。8世紀と制作の可能性が指摘された作品は、藍で染色された作品であり、染料の影響を慎重に評価する必要があるが、相当量の染料成分が残留しないと年代をずらすことは難しいので、8世紀頃に制作された作品と考えることができる。
本調査の結果はイギリス・オックスフォード大学アシュモリアン博物館が永年行ってきたコプトの染織品に含まれるインド更紗の制作年代に関する研究に照らし合わせても、妥当な結果と考えられる。
平成29年度の調査研究の成果として『大妻女子大学家政系研究紀要』第55号に「Report on Coptic Textiles in the Collection of Ashmolean Museum」を発表した。また放射性炭素年代測定の結果を踏まえた報告は、『月刊 考古学ジャーナル』No.725,2019に「エジプト・コプトの染織品とインド更紗の制作年代および制作地の特定に関する研究」として2019年5月に発表した。今後はコプトの染織品と日本のコレクターとの関係について『文化資源学』への投稿を考えている。

CLOSE
須藤 良子家政学部講師H28-H30
学校の教員と取り組む合理的配慮指針に基づく教材開発と授業手法の開発

学校の教員と取り組む合理的配慮指針に基づく教材開発と授業手法の開発

児童生徒一人ひとりの抱える困り感の軽減や解消を目指して,手作り教材を制作し,日常の教育活動の中で実践を行い,「これまで不可能だったことを可能にする」本研究活動は,国内だけでも 200 名を超える一大研究プロジェクトとなっている。これまで,発語のない児童生徒,知的障害を持つ児童生徒,自閉症の児童生徒,場面緘黙の児童生徒,視覚障害を持つ児童生徒,読みの困難な児童生徒,肢体不自由の児童生徒,学習障害を持つ児童生徒などが,多岐にわたる活動に取り組み,自立感,達成感を味わい,仲間意識を育み,学校に自分の居場所を作ることに成功するなど,これまで不可能だったことを可能にする取り組みを行うことができた。

CLOSE
生田 茂社会情報学部教授H28~H31
家庭における日々の家事/活動をゲーミフィケーション化する研究

家庭における日々の家事/活動をゲーミフィケーション化する研究

家庭における日々の家事や行動にゲーミフィケーション要素を追加することで,少しでも楽しく家事や行動が行えるようにし,かつ,継続するためのモチベーションを向上させることが本研究の目的である.ゲーミフィケーションは,遊びや競争など, 人を楽しませて熱中させるゲーム要素や考え方を, ゲーム以外の分野で応用していこうという取り組みである.平成28年度および平成29年度においては幼児対象歯みがき支援に取り組み,平成30年度においては,幼児を対象とした食育支援を追加して取り組んだ.歯磨き支援の成果は情報処理学会が主催するDICOMO 2018において発表した他,国際会議CollabTech'18に採択されて発表した.
平成30年度から開始した幼児を対象とした食育支援については,子供が好き嫌いをしないように完食のサポートをするということと親子間のコミュニケーションを支援することを目的として実施した.スマートフォンに搭載されている加速度センサーを用いて,幼児が何をどのように食べているかを推測する機能を備えている.具体的には幼児の食事プレートの底にスマートフォンを置き,スマートフォンに内蔵されている加速度センサーがプレートの傾きを検知することで検出するようになっている.食べている料理に応じて異なる動物の鳴き声が出るようにした.これによって,最後まで飽きずに食事ができる且つ「楽しく」食事をすることができ,それをきっかけに親子間のコミュニケーションが増える手助けをすることを目指している.

CLOSE
市村 哲社会情報学部教授H28-H30
中世後期ロンドンの「外国人」と都市社会

中世後期ロンドンの「外国人」と都市社会

本研究では、中世ロンドンを、都市の「外部」との関係性の中で考察するための第一歩として、「外国人」(alien)とされた人々を取り上げた。まず、中世ロンドンの「外国人」に関わる研究動向を整理し、その結果を、研究会や国際学会において発表した。そのうえで、代表者は、15世紀ロンドンの「外国人」の出身地・居住地・職業などの概要をまとめて発表した。また、ロンドン市立文書館において、14~15世紀ロンドンの「外国人」が残した遺言書を収集した。分担者の佐々井真知氏は、同職ギルド(同業者組合)が「外国人」とどのように関わったのかを考察するため、金細工師ギルドを取り上げ、当該ギルドの規約の分析を行った。

CLOSE
上野 未央比較文化学部准教授H28-H30
穀類の摂取による高血圧症の予防効果と腸内代謝を介したメカニズムの研究

穀類の摂取による高血圧症の予防効果と腸内代謝を介したメカニズムの研究

β-グルカン含量の異なる2系統の大麦(ホワイトファイバーとファイバースノウ)を食餌性肥満モデルマウスに給餌し、血圧に及ぼす影響を検討した。本実験の対照群の収縮期血圧が120.7±8.2mmHgであったことから食餌性高血圧が発症したと考えられた。それに対し、ホワイトファイバーでは有意に血圧を低下させる作用が示された。収縮期血圧では、ファイバースノウも低下傾向(p=0.05)であったことから両大麦ともに高血圧予防または改善作用があると考えられ、β-グルカン量が多いほど効果が顕著であることが示された。大麦の血圧低下作用のメカニズムを調べるため、血清アンジオテンシンⅡ濃度とACE活性を調べたが、有意差が認められなかった。したがって、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系による調節作用ではないことが示された。同様に、内臓脂肪蓄積低減に伴う、脂肪組織からのアンジオテンシノーゲンの発現量低下によるメカニズムも認められず、逆に発現量が高まることが示された。また、交感神経系を介したレプチンの血圧上昇促進作用が報告されている。本結果より、ホワイトファイバー群で血清レプチンが有意に低かったため、血清レプチン低下が血圧低下の要因と考えたが、血圧と血清レプチン濃度との間に相関性は認められなかった。したがって、レプチン濃度でも説明ができなかった。
一方、盲腸重量と血圧との有意な負の相関が認められたため、短鎖脂肪酸を介した血圧調節が考えられた。大麦の血圧低下作用は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を介さない、短鎖脂肪酸を介した作用の可能性が示唆された。今後、盲腸内短鎖脂肪酸解析を行い、血圧との相関性を検討していく。

CLOSE
青江 誠一郎家政学部教授H28-H31
現代日本語の自他に関する構文的研究

現代日本語の自他に関する構文的研究

本研究の目的は「構文」に関する文法的知識が実際に使用される文の生成・解釈において重要な役割を果たすことを、現代日本語の自他構文を例にして明らかにすることである。
本年度は、接続助詞的な意味を表す「のが」と「のを」を持つ文を、自動詞構文・他動詞構文からの拡張と位置付け、それぞれ自動詞構文・他動詞構文の基本的な意味をどのように受け継いでいるか、どこまで元の意味を失っているかを詳細に検討した。その結果、「のが」「のを」は、状態変遷性を表す自動詞構文の主格・対抗動作性を表す他動詞構文の目的格という格助詞の意味から、二つの事態を「逆接」「対比」の意味でつなぐものへと拡張した実例が見いだせるものの、拡張するにつれ(自動詞構文・他動詞構文の特徴が失われるにつれ)許容度は下がり、動的事象の変化の解釈が得られない状況での「逆接」「対比」用法は受け入れがたいことが明らかになった。この拡張の結果としての逸脱的な「のが」の文と「のを」の文の意味は接近しているが、「のを」の文が「のがの文に近づく関係にあることも明らかにした。「のが」「のを」を用いて動的事態変化ではない、「対比」を表す場合、発話者は自動詞構文・他動詞構文の構文的意味である「変化」の意味を、《対比する》という思考のプロセスに写像して表現したものと考えられ、「に対して」などの表す「対比」とは意味が異なることを明らかにした。「逆接」や「対比」の意味そのものが発話者の主観と言われるが、その「逆接」「対比」を、自動詞構文・他動詞構文の持つ構文的意味を鋳型として主体的に捉え表現するという意味でも、「のが」「のを」文の「逆接」「対比」は主観的であると言える。

CLOSE
天野 みどり文学部教授H28-H31
学校管理下で起こる心臓突然死の予防に向けた市民AEDの普及と効果に関する研究

学校管理下で起こる心臓突然死の予防に向けた市民AEDの普及と効果に関する研究

2018年度は、日本スポーツ振興センター(JSC)の災害共済給付データから、2015年度分の院外心停止情報を取得した。これを総務省消防庁の全国救急蘇生統計と結合し、前年度作成したレジストリに追加した。本レジストリを用いて、2008年4月~2015年12月に全国の学校管理下で発生した児童生徒(小学校・中学校・高等学校・高等専門学校)の院外心停止症例の解析を行った。居合わせた市民によってAEDを貼付された心停止患者は8年間で62%から87%に増加していた。これに伴い、社会復帰できた患者も8年間で38%から58%に増加した。また、AED貼付と心肺蘇生が両方行われた場合には、何もされなかった場合に比べて約2.5倍社会復帰できた割合が高かった。
次に、スポーツ活動中に発生した心停止症例の特徴と転帰について分析を行った。学校において、スポーツ中の心停止は児童生徒の全心停止の約半数を占めており、大半が非外傷性の心停止によるものであった。スポーツ種目としては、長距離走(22%)、サッカー・フットサル(13%)、バスケットボール(12%が多かった。学校種別にみると、小学校では水泳(53%)、中学校と高校では長距離走(23.0%・22.4%)が多かった。居合わせた市民によってAEDが貼付さたのは80%、社会復帰できたのは53%であった。
更に、全国救急蘇生統計を用い、学校内外で発生した6歳~17歳の院外心停止症例を対象に、居合わせた市民による救命処置の実状とそれに伴う患者予後の年次推移を明らかにした。市民によるAEDショックを受けた患者は2005年には0.1%であったが、2014年には6%に増加した。これに伴い、社会復帰できた患者は2005年に5%であったのが2014年には9%に増加した。

CLOSE
清原 康介家政学部講師H29-H31
近代ボストン美術館における日中米文化交流

近代ボストン美術館における日中米文化交流

米国のボストン美術館には、「中国最後の文人」と称される呉昌碩の手になる「与古為徒」扁額が掛けられている。これは、当時上海在住の漢学者・長尾雨山が、ボストン美術館中国・日本美術部長であった岡倉天心に贈ったものである。岡倉は、ボストン美術館のために中国美術収蔵活動を行い、成果が高く評価されているが、本研究では、その根底に長尾や呉昌碩の助力があったことを指摘し、岡倉の活動が中国の文人的教養に基づいた高度なものであったことを提示し、近代において画期的成果を収めたボストン美術館を舞台とする日・中・米文化交流の重要なる意義を明らかにすることを目的とする。
この研究目的を達成するため、2018年度は、2017年度よりのボストン美術館所蔵資料分析、検討を引き続き行うと共に、あわせて、日本、中国における資料収集のための研究調査を行った。「研究実施計画」に記した米国ボストンでの研究調査は、研究の進捗状況に鑑みて、2019年度に実施することにしたい。
2018年度に刊行された関連研究論文は、「足未踏日本、名仍震東瀛―従与日本人士交流的角度看呉昌碩芸術的本質」〔中文〕2018・4 紫禁城(北京故宮博物院)2018年第4期、「河井セン廬的印学」〔中文〕2018・10 世界図紋与印記国際学術研討会論文集(西レイ印社出版社)、「呉昌碩と『呉氏宗譜』2019・3・20 大妻女子大学紀要-文系- 51号、「呉昌碩の官途」2019・3・31 中国近現代文化研究20号の4本であるが、すでに入稿済の研究論文として、「長尾雨山の近代日中美術交流における貢献」アジア遊学 特集日本から見た東アジア近代美術、「日本人士による呉昌碩展覧会と図録」関西大学論文集山本竟山の書と学問、「長尾雨山と依水園」中国文化第77号、「長尾雨山と書画文墨趣味ネットワーク」書論第45号の4本があり、2019年度刊行の予定である。

CLOSE
松村 茂樹文学部教授H29-H31
17・18世紀フランスにおける文献資料に見るモリエールと古典ラテン喜劇作家の受容

17・18世紀フランスにおける文献資料に見るモリエールと古典ラテン喜劇作家の受容

1643年の王位継承から1715年の死までフランスの歴史の中で最も長い治世の中で、ルイ14世は対外的な行動力と内政においてヨーロッパの頂点を極めた。そしてその功績は現在もパリの至る所に記されている。絶対王政確立におけるルイ14世の政治的手腕の一つとして文化政策があげられるが、その中で国王のイメージ戦略を含む演劇というライヴ・パフォーマンスは欠かせない。そこにはルイ14世のもとで彼の要望に応え続けた喜劇作家モリエールの存在がある。彼の古典ラテン喜劇作家から受け継いできた理想の喜劇を作り続ける劇作法、為政者と観客が求めるものを提供した作品は、「愉しませながら教え諭す」という喜劇の理論を具現化し、21世紀の我々に娯楽としての魅力と17世紀のフランス社会を写しだした文化史としての魅力を提示している。モリエール劇団の一員ラ・グランジュの『帳簿』と、彼によって劇作家の死後出版された全集、アンドレ・フェリビアンによるヴェルサイユ宮殿における祝祭の公式報告書、モンティニ神父やバラールによる報告書、『ガゼット』、シャルル・ロビネの書簡、財務省に呼ばれたオランダ人ホイヘンスの報告書などがそれらを証明している。モリエールが古典ラテン喜劇作家の後継者であることは、第一に彼の作品がその死後も評価され続けていることに見て取れる。同時に、世紀末になって古典ラテン喜劇作家が再び仏訳され、テレンティウスの作品が翻案されたことにより、フランス喜劇の神髄に古典ラテン喜劇作家が息づいていることが明らかとなった。

CLOSE
榎本 恵子文学部講師H29-H31
高齢期に対応した多世代共生型集住(コレクティブハウス)の有用性に関する研究

高齢期に対応した多世代共生型集住(コレクティブハウス)の有用性に関する研究

本研究は、継続的な人間関係と居住環境の中で、日常的な安心が担保され、住棟内に居住者間の交流と生活の一部を協働するシステムをもつ共生型集住(コレクティブハウス)を対象として、高齢期まで住み続けることができる自立期に有用な住運営システムの在り方について検討することを目的としている。
居住後25年が経過した先進事例、スウェーデンにある熟年コレクティブハウス「フェルドクネッペン(以下FK)」を対象とした、居住者へのアンケート、訪問ヒアリング調査を実施し、生活・住運営実態から、高齢期まで自立して住み続けられる条件を分析した。その結果、良好で安定した共生環境の継続には、①長期的な課題を整理し、性別や年齢構成、運営上の役割の観点からの慎重な入居者選定 ②住運営の組織化および運営方法のマニュアル化 ③運営の中心となる次代の人材育成 ④入居希望者を含む外部サポーターによるコレクティブ活動の支援 ⑤居住者相互の共助意識、が必要であるとの知見を得た。
上記の結果を、住総研「研究論文集」にて論文発表、日本建築学会学術講演梗概集に論文を投稿済みで、今年9月に口頭発表する予定である。また、日本の自立期の高齢期に対応した共生型集住(グループリビング)の生活・運営実態の把握のために、「COCO湘南台」「COCOたかくら」の運営者にヒアリング調査を行った。その結果、①調査を実施した2つの事例は居住者の年齢や身体状況に差があること ②現在は居住者による主体的な生活運営はほとんどみられない。③生活や精神面を支え、物理的な介護のサポートなどを行うライフサポートアドバイザーの存在が大きいこと、がわかった。コレクティブハウスにおいても、ライフサポートアドバイザーの役割を担うしくみ(居住者の中から選出など)の導入も考えられる。この調査結果についても、上記の住総研「研究論文集」にてまとめて発表した。

CLOSE
大橋 寿美子社会情報学部教授H29-H31
住居系市街地の住宅更新における賃貸併用住宅の有用性に関する研究

住居系市街地の住宅更新における賃貸併用住宅の有用性に関する研究

今年度は2年目であり、住宅市場における賃貸併用住宅の建築動向の把握を行った昨年度(住宅展示場の調査など)に引き続き、賃貸併用住宅の建築動向に関するデータの収集の一環として、既存統計調査での取り扱いについて検討を行った。住宅メーカー各社の建築実績の概要が把握できたものの、定量的な把握は困難であることが確認できた。さらに、賃貸併用住宅の建築がこれまでの東京23区外延部から、郊外部へと広がっていることや、それらの地域へ向けた営業が徐々に行われていることが分かった。また、D社の建築した賃貸併用住宅の平面図・配置図の分析を行い、これらの住宅建築の建築設計上および敷地や立地上の特性についての検討を行い、敷地の広さや接道条件などとの関係により、住宅平面が異なることも分かった。近年、賃貸住宅の空き家化が問題視されるなか、賃貸併用住宅の建築が活発な要因をさぐるとともに、地域的課題を明らかとする必要があり、賃貸住宅建築のなかでの賃貸併用住宅の比重、オーナー住宅との関係などが重要な点であることが確認された。さらに、賃貸併用住宅としての特殊性や、その他の賃貸住宅と比較して有利な点を明らかとすべく、賃貸併用住宅の管理を行っているD社の管理部門他へのヒアリングを実施し、建築企画段階および建築後の入居者管理・建物の維持管理における問題を把握することができた。比較的敷地が広く、その地域に定住意向の強い持家層の建築が多いことや、賃貸住宅経営の経験があるなどの、賃貸併用住宅建築を行った居住者像をより明らかにした。

CLOSE
松本 暢子社会情報学部教授H29-H31
日本の出産文化の歴史社会学的研究―リプロダクティブヘルスと助産所の機能を中心に

日本の出産文化の歴史社会学的研究―リプロダクティブヘルスと助産所の機能を中心に

2018年度は研究代表者、研究分担者、研究協力者間の研究交流を深めるとともに、それぞれの研究を深めた。京都府助産師会と大阪府助産師会には資料の電子化とリスト修正作業終了後に、返却をおこなった。特に京都府資料は、図書・雑誌類は少なく、その多くが産婆会時代の事務にかかわる様々なタイプの資料だったことから、資料リストを修正する必要が増えた。このため、資料返送の際に研究代表者大出と研究協力者の岡本が京都府助産師会館にて立ち会い、修正リストと資料との照合作業をおこなった。当初の予定された電子化作業とは別に、大阪府助産師会で保管されていた戦前期の助産カルテについて(2017年度段階では電子化の対象外としていた)、劣化が著しいことから、資料の電子化の依頼があり、郵送にてこれを受け取った。また京都府助産師会からは1936年に実施された大日本産婆会(京都大会)にかかわる資料が会館内で保管されているとのことで、すでに電子化済みの資料に加えて、これらの資料の電子化の依頼を受け、作業を継続している。
大阪府助産師会が保管していた「堺市赤ちゃん審査会写真帖(帳)」資料をもとに日本社会学会にて学会発表(ポスター)を行った。また戦前期の産院について19世紀末期からおよそ半世紀にわたる法律の変遷を整理し制度的に跡づけ、これを日本助産学会学術集会にて学会発表(ポスター)を行った。
2018年度は研究代表者が戦前期の産婆会の全国組織化にかかわる産師法制定運動についてまとめた論文を中心に『産婆と産院の日本近代』という単著を出版した。著書がきっかけになり日本助産師会出版から2019年2月号の依頼原稿と出産ケア政策会議主催のシンポジウムにおける基調講演の依頼を受け実施した。
戦前期産婆会関連資料リストの修正、電子化資料の確認作業(ページの漏れ、ページレイアウトの統一など)を進めた。この作業は今年度も継続中である

CLOSE
大出 春江人間関係学部教授H29-H31
スーパーヴァイザー養成のためのメタ・スーパーヴィジョンに関する研究

スーパーヴァイザー養成のためのメタ・スーパーヴィジョンに関する研究

以下の組み合わせでメタ・スーパーヴィジョンの実践とそのプロセスおよび効果の分析、検討を進めている。スーパーヴァイジー(Svee)4名:20歳代の臨床心理士もしくは大学院生、スーパーヴァイザー(Svor)4名:30歳代から40歳代でSvorの経験が初めてかもしくは少ない臨床心理士。これらに対してメタSVor(50歳代の臨床心理士でSVor経験20年以上、メタSvor経験5年以上)1名。スーパーヴィジョンの対象となった事例は、医療機関や大学の心理相談室、公的機関の従業員相談室等の事例であった。すべての事例と組み合わせに関して、まずメタSV無しのSV数回をおこない、カウンセラー自己効力感測定の後に、2,3回のSVごとにメタSVの実施を3回繰り返す。そして再びカウンセラー自己効力感測定と振り返り用紙の記入を求めた。また、すべてのセッションを録画・録音し、さらに毎回のSVとメタSV終了直後にSV満足度尺度、SV作業同盟質問紙を実施した。結果としては、まずSVを受けたSVeeからは、以下に代表される振り返りが得られた。「SVorが私の考えを理解しようと寄り添ってくれるようになった」「メタSV以前は、SVorの見立てや方針に沿わなくてはいけない、そしてSVorの求める正解があって、それを理解しなければいけないような気がしていたが、メタSV開始後はそれらの気持ちが薄れて自由に考え、それを自由に伝えられるようになった。」「メタSV以前は、約束しているから行くという受動的な面もあったが、最近は意識的に考えたとことをもっていくようになりVorの意見を聞きたいと思うことが増えた。」。また、メタSVを受けたSVorからは「SVee理解の深まり」「SVeeに応じた介入」「介入スキルの増加」「自身の臨床の非言語的な部分のり返り」等に大きな効果があったと報告された。

CLOSE
福島 哲夫人間関係学部教授H29-H31
ジェンダーからみる近代日中女性関係史の総合的研究――月曜クラブと一土会を中心に

ジェンダーからみる近代日中女性関係史の総合的研究――月曜クラブと一土会を中心に

  1. 関連史料の所蔵状況に関する調査及び収集・・・研究代表者(上海社会科学院歴史研究所、台湾中央研究院近代史研究所他)と分担者それぞれの個別の史料調査を行った。

  2. 研究会の開催・・・2018年5月6日、6月23日、7月27日、11月23日、2019年2月24日の5回、それぞれ例会を開催した。具体的には月曜クラブと一土会の史料に関する講読、研究方向と方法の検討等を行った。なお、7月27日には、ゲスト報告者の江上幸子氏(フェリス女学院大学名誉教授)による「『女声』、田村俊子と関露」に関する報告を、11月23日には、同じく島田大輔氏(立命館アジア・日本研究機構専門研究員)による報告「太田宇之助と中国:中国専門記者の戦前・戦中・戦後」も行った。

  3. 笠間杉子氏所蔵書簡等の調査・・・5月5日には姫路において、当地在住の笠間杉子氏(竹中繁の教え子である石川忍の孫)へのインタビューと所蔵書簡等の調査を行い、貴重な情報と資料を得ることができた。翌日6日の例会では、それらの資料に関する整理と情報共有を行った。

  4. 国際シンポジウムへの参加と報告・・・11月8~11日に、上海社会科学院歴史研究所・神奈川大学非文字資料研究センター主催の円卓会議「中国・上海都市研究の新動向」(於上海社会科学院歴史研究所)に、研究代表者の石川照子が参加し報告を行った(「上海のキリスト教ーー戦後・建国後・そして現在」)。また、中国の研究者たちとの学術交流も行った。
CLOSE
石川 照子比較文化学部教授H29-H31
第二次世界大戦期、空爆標的地図にみる米英連合国の空爆戦略の転換

第二次世界大戦期、空爆標的地図にみる米英連合国の空爆戦略の転換

前年度までに第二次世界大戦期における米英連合国の地図作成協力体制について研究調査を進め、ヨーロッパ戦線で用いられた爆撃標的地図の作成過程を考察した。これにより、ヨーロッパ戦線における空爆作戦の変更(白昼精密爆撃からレーダーを用いた爆撃へ)が、アジア・太平洋戦線における地域爆撃・じゅうたん爆撃にどう連なっていくのかを検証することが可能になったと考える。2018年度は、イギリスの英国図書館地図室と英国立公文書館で調査を進め、1943年から1944年にかけて米英豪連合国がアジア・太平洋方面の地図・海図を共有していたという地図史料コレクションならびに文書史料を調査し、分析している。これにより本研究が期間内に明らかにしようとする課題(2)戦線における地図作成を含む空爆作戦準備、実際の空爆戦略そして空爆評価という一連のプロセスを調査し、「精密爆撃」方針から「地域爆撃」へと転換したのかについて考察した。2018年度はこれら一連の研究調査を踏まえて、社会・国民に発信するため、愛媛大学で開催された第48回空襲・戦災を記録する会全国連絡会議で、二つの研究成果報告を行った。一つ目は、同じく愛媛大学で開催された第19回米軍史料の調査・活用に関する研究会で、第二次世界大戦期の米英両国の空爆地図調査方法について報告した。二つ目は、全国各地の空襲調査報告が行われる本大会で「第二次世界大戦における米英爆撃標的地図の変容」について報告した。参加者との質疑応答を通じて、ヨーロッパ戦線からアジア・太平洋戦線への空爆作戦の連続性と断続性について一層研究を進める重要性を認識することができた。

CLOSE
高田 馨里比較文化学部准教授H29-H31
障害者の修正衣服ガイドライン作成に向けた更衣と座位姿勢に適したズボンの製作と評価

障害者の修正衣服ガイドライン作成に向けた更衣と座位姿勢に適したズボンの製作と評価

  1. 修正ズボンの製作-座位に適したズボンパターンの修正-平成30年4月に研究代表者が所属を変更し、それに伴い研究フィールドを首都圏に移した。研究を円滑に進めるため、平成30年度からCADの専門家を研究分担者に加え、リハビリテーション医療の研究者と作業療法士に指導を依頼した。都内のリハビリテーション病院および障害者スポーツ同好会、リハビリテーション専門学校の協力を得て被験者を募り、ズボンの製作と着用実験を実施した。被検者は、手足にまひがあり、医学的評価において立位でズボンをはき上げる動作は自立しているが、体を屈めにくく手指や腕の動きが硬いとされる7名である(50~80代の脳卒中の人、男性6名、女性1名)。試験着は、一般的なズボン原型で製作したものと、座位姿勢に合わせて原型を修正し製作した2種類である。被験者は2種類の試験着を2週間着用し着脱動作を確認した後、4ヶ月間の着用テストを実施した。着用期間中、被験者と介助者は、日常生活での着脱性と着用感、用便時の不具合を記録した。
  2. 着脱動作による修正効果の数値化と多角的評価および評価基準の検討2種類のズボンについて、着装時(座位・立位)のシルエットの評価と、着脱動作による生理的負担(所要時間、心拍数、血圧、加速度)の測定および感覚評価を行った。また、作業療法士がAMPSの視点から着脱動作を評価し、障害と更衣動作の関係を分析した。測定は着用テスト2週間終了時点で行った。修正パターンで製作したズボンは、座位姿勢でW.L.が水平に保たれ、背中の開きが改善され腹部の圧迫も少なかったことから、修正方法の有効性が確認された。立位姿勢のシルエットは、やや腰回りが大きかったが概ね良好であったため、本修正パターンは、着装評価において立位・座位姿勢に適したパターンであると判断した。着脱動作と生理的負担については現在分析中である。
CLOSE
雙田 珠己人間生活文化研究所研究員H29-H31
旧英領カリブの多文化共生社会に関する実証的研究:白人性のオーラルヒストリー分析

旧英領カリブの多文化共生社会に関する実証的研究:白人性のオーラルヒストリー分析

本研究は、時と場所により異なる意味を持つ流動的な概念であり、多くの場合非白人に対する優越性信仰と社会経済的特権を意味する「白人性」の多様性に着目し、①複合的な社会階層・階級の中での人種間の軋轢の中で、他者との交流を通じた白人としてのアイデンティティの構築過程、②差別を生み、差別化の根源となる集団で、経済的・文化的強者である白人と白人性についての理解、③偏見や差別の構造解明、④異文化許容・多文化共生を可能にする個人の4点について、旧英領3国(トリニダード・バルバドス・ジャマイカ)における事例を総合的に比較し、その特徴を究明することにある。今年度の研究実績は以下のとおりである。

  • 資料収集:2019年2月後半~3月前半、トリニダードで現地のヨーロッパ系市民に対しオーラルヒストリー聞き取り調査を実施。なお、2019年1月後半に予定していたジャマイカでの現地調査は、体調不良により未実施。
  • 研究発表:2018年11月、コスタリカで開催された国際学会において、トリニダードとバルバドスの白人性を比較した “Questioning whiteness: ‘Who is white?’in Barbados and Trinidad”を発表。
  • 論文発表:①「旧英領カリブ海地域における白人性の多様性-バルバドスとトリニダードの比較」人間生活文化研究. 2018.28. pp.63-98. ②「カリブ社会のグローバル化とグローカル化-トリニダードのカーニバルを事例に-」人間生活文化研究. 2018.28. pp.721-730. ③“Questioning whiteness: ‘Who is white?'-A case study of Barbados and Trinidad-”. International Journal of Human Culture Studies. 印刷中。
CLOSE
伊藤 みちる国際センター講師H29-H31
十九世紀の絵入本における画文一体構成に着目した書物(メディア)史研究

十九世紀の絵入本における画文一体構成に着目した書物(メディア)史研究

今年度は、手元で見られる浮世絵の図録や展覧会のカタログなどから、填詞入り浮世絵を見出し、主として填詞とその書き手に関するデータベース化を進めてきた。ただ、管見に入る資料の多くは揃物の端物が多く、揃物の全貌を知るための所在調査が不可欠であり、手間暇を費やす必要があったが、発見できないことも多かった。消費された商品としての浮世絵は、完全な保存が期待できるのは、主として海外のコレクションで、幕末から明治初期に来日した西欧人が、浮世絵の芸術的文化的価値を見出してくれなければ、壊滅していた文化資源であることを痛感した。一方、フィールドワークとしては、国内調査として三重県の石水博物館へ出向いた。未だ広く一般に公開されているわけではないが、川喜田家の旧蔵コレクションは稀覯本の宝庫である。近年中には正式な目録が公開される由であるが、幸いにも他に所蔵の知られていない馬琴の中本型読本『敵討枕石夜話』の改題本『讎同士石與木枕』の早印本などの調査が出来た。海外では、昨年調査へ行ったアメリカ合衆国のサンフランシスコ州立大学バークレイ校とスタンフォード大学へも、本研究課題以外の研究経費で出向くことができたので、昨年の調査データで不明の点を確認してきた。また、フランス国立ギメ東洋美術館図書室蔵の填詞入り浮世絵と大量の絵入本の調査をした。調査資料は目下整理中であるが、最終的なデータに活かせる資料の閲覧が出来た。
今年度の調査を通じて、絵入本とりわけ地本と浮世絵の関係を明らかにするためには、今少し十九世紀の絵入本に関する調査も不可欠であることを認識しつつあり、今後の研究の方向として留意していきたいと思う。

CLOSE
高木 元文学部教授H29-H32
育児期の女性の精神的社会的要因や地域・家族の支援と子どもの食環境や発達との関連

育児期の女性の精神的社会的要因や地域・家族の支援と子どもの食環境や発達との関連

国立成育医療センターで実施されている「成育母子コホート研究」の生後6年後の調査を子の母親・父親を対象に質問紙法により実施した。調査の内容は、子の食習慣、しつけ、世話について、母親・父親それぞれの食習慣についてである。これらの調査とあわせて簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた食事調査の実施を行った。来年度も引き続き調査対象者の数を増やしデータ構築をすることによって、出産後うつ、不安障害、健康度等の子どもの栄養や発達、あるいは母親、父親の食事への影響について明らかにする予定である。特に、妊娠中および出産後の母親の栄養摂取状況を、エネルギー栄養素摂取量を算出して摂取量の過不足について評価することのみならず、食事バランスガイド、食事の多様性、食事パターンを用いた新しい評価方法によって把握するための検討を行い、出産後うつ、不安障害、健康度等の子どもの栄養や発達、あるいは母親、父親の食事への影響について関連を明らかにする。また、これらの関連に出産・育児に関するソーシャルサポート、家族のサポートが与える影響について明らかにする予定である。

CLOSE
小林 実夏家政学部准教授H29-H33
子どもの権利の視点に立つNPOの支援構造と倫理的基盤形成のメカニズムに関する研究

子どもの権利の視点に立つNPOの支援構造と倫理的基盤形成のメカニズムに関する研究

2018年度は、本研究の基盤となる子どもの権利の視点について、それを子ども支援における単なる理念としてではなく、子どもを取り巻く児童福祉の課題を解決するための具体的な手段として生かすために、その方法論についての研究に取り組んできた。具体的には、①子どもの権利の視点に立つNPO団体へのヒアリング調査と参与観察調査をとおして、各団体が子どもの権利の視点をどのように位置付け、児童福祉実践に生かし、課題解決に取り組んでいるのか、子どもの権利の視点に立つNPOの支援構造についてのデータ収集と予備的考察を実施したこと。合わせて、②人権概念に基づく当事者主体の社会福祉理論に関する文献研究に取り組み、上記実践内容に関する理論的背景・基盤についての検討を行った。本研究の意義は、子育て支援や児童福祉の法定サービスが整備されてきた一方で、子ども虐待、貧困、いじめ、子ども・若者の自死、子どもが犠牲となる事故など、数多の問題が発生し、悪化している中で、サービスありきではなく、「子どもの権利に基づく、子どもを主体としたつながりの支援」の方法とその要件を明らかにすることである。こうした課題に応えるために、2018年度は、子どもの権利の視点に立つNPOの支援構造として、①子どもを主体としたつながりを、「子どもの最善の利益」の配慮(条約3条)を軸とした支援によってつくり出すこと、②子どもを主体としたつながりの対象として、「子どもの権利条約」に規定された子どもの総合的な権利内容を活用できることを、データ分析と考察を通して導き出したことである。

CLOSE
加藤 悦雄家政学部准教授H30-H32
他者の記憶のアーカイブ――戦後日本社会における従軍体験テクストに関する基礎的研究

他者の記憶のアーカイブ――戦後日本社会における従軍体験テクストに関する基礎的研究

2018年度は「研究の始発期」と位置づけ、研究代表者のこれまでの研究実績を本研究課題の基盤として位置付けなおし、その内容を発展・深化させていくための土台作りを中心的に行った。具体的には、2018年5月に単著『プロパガンダの文学 日中戦争下の表現者たち』(共和国)を刊行、日中戦争期の同時代に語られていた戦争・戦場の表象と、そこで文学・文学者が果たした役割について検討した。さらに、この単著にかかるブック・トークや読書会に参加、歴史学・社会学、社会運動など、従来の文学・文化研究の枠組みにとどまらないさまざまな立場からの問題提起を受けとめて議論することで、本研究課題の現在的な意義を確認することができた。11月には日本人ブラジル移民の文学・文化活動を研究するエドワード・マック氏を招聘、川口隆行氏(広島大学)、高榮蘭氏(日本大学)と連携した国際ワークショップ企画に参画、従来必ずしも「文学」とは見なされてこなかった一連のテクスト群を、文学研究の立場から取り上げる際の課題と可能性について議論を深めた。
また、資料調査としては、8月に山梨県立図書館・甲府市立図書館、9月に大津市立図書館で戦時期・占領期の関係資料の確認・調査を行ったほか、10月には岩手県宮古市に出張、木戸雄一氏(大妻女子大学)とともに、徳冨蘆花が明治期の青年軍人の日記をもとに執筆した小説『寄生木』関係資料、ラジオドラマ台本等を実見、近代日本における地域と軍事、地方青年と戦争との関わりについて、新たな知見を得ることができた。あわせて、いくつかの道・県の「護国神社」の調査とフィールドワークを行うことで、それぞれの地域が、どの戦争の・どの場面を「記憶」し、どのような「顕彰」活動を行ってきたかについて、資料の収集と検討を重ねた。

CLOSE
五味渕 典嗣文学部教授H30-H32
電気自動車を接続したスマートグリッドの構築に関する制度設計の経済学的研究

電気自動車を接続したスマートグリッドの構築に関する制度設計の経済学的研究

近年、太陽光発電などの再生可能エネルギーや電気自動車の活用が環境政策の重要課題となっている。本研究は、スマートグリッドと電気自動車との効率的な接続により太陽光発電と電気自動車の双方の普及・活用を目指す政策の効果を解明する。そのため、スマートグリッドを効率化する税制や料金体系に関する経済理論を構築し、太陽光発電と電気自動車の普及・活用のための政策立案と、その効果の実証的分析を行う。H30年度は、太陽光発電システムの普及を促す政策の効果の解明を目的として、太陽光発電システムの需要構造を分析した先行研究を概観することで、効率的な普及を実現するための要因を把握するとともに、普及政策の効果を検討した。その結果、太陽光発電システムへの投資には大きな不確実性を伴うため、固定価格買取制度などの固定的な金銭的インセンティブとともに、リースなどの不確実性を低下させる取引形態の普及促進が効果的であることがわかった。また、太陽光発電システムの導入におけるピア効果のため、その普及においてコミュニティーの役割が重要視されていることもわかった。この成果については、論文「太陽光発電システムの需要構造と普及政策の効果」にまとめ、大学紀要に掲載した。また、電気自動車とガソリン車が混在する過渡期の最適な自動車税制の解明を目的とし、2006年から2015年までのデータを用いて、Berry et al. (1995)のランダム係数ロジットモデルにより自動車の需要構造を分析し、得られた需要構造をもとに、走行距離に応じた課税が導入された場合のシミュレーションを行った。この成果を論文「Consumer Valuation of Future Costs versus Purchase Prices: A Study of Japan's Auto Market」にまとめ、日本経済政策学会の国際会議で報告した。

CLOSE
荒川 潔社会情報学部准教授H30-H32
ミャンマー連邦共和国における基礎教育学校の適正規模・適正配置に関する研究

ミャンマー連邦共和国における基礎教育学校の適正規模・適正配置に関する研究

平成30年度の研究計画では、次の2本の研究の柱を考えた。1.年度・種類の異なるデータセットを組み合わせたビッグデータの構築に関しては、計画書作成時に存在していた2013年、2014年、2016年に加え、新たに、2017年、2018年のデータを得て、これらも加える作業を行った。ただ、47,000校のデータについて5年分を一つのファイルに管理することはコンピュ-タソフトの能力を超えるため、分析目的に応じて、変数、年度を減らして分析する事とした。
2.学校位置情報の分析に関しては、2017年度のデータを元に学校統廃合による教員数削減効果を分析した。データの利用可能性なども考慮し、人口密度が比較的小さなKayar州、人口密度が比較的大きなAyeyawady管区を例に取り分析した結果、概ね同じような結果が得られた。即ち、相互の直線距離が最大距離3 Kmまでの学校は統合する事にすれば、小学校教員を中心にして現実的な基準教員数を約25%削減でき、1 Kmまでであっても約10%の削減が可能である。3Kmまでの統合では学校規模のメディアンは現在の3倍程度になるが、それでも1学年2学級程度でちょうど良い。教員数については、現員と比較しても、全体として教員不足は十分解消し、複式学級も解消し、余裕まで生まれる。教員数を10%削減できる意味は2017年度で35.8千名の削減となり、その年間給与分66.7ビリオン・チャットを学校建設に回せば30ft×30ftを4個つなげた標準的な校舎を年間637校舎建設するだけに相当する。また必要教員数を削減できる事は教育制度改革による今後の教員需要増加への対策として、大きな期待が出来る事を示した。

CLOSE
牟田 博光人間生活文化研究所特別研究員H30-H32
コンピュータプログラミング学習の神経基盤に関わる基礎研究

コンピュータプログラミング学習の神経基盤に関わる基礎研究

新学習指導要領では、「プログラミング的思考」の育成を目指して、小中高等学校の全ての段階でプログラミング学習が必修化される。しかし、コンピュータプログラミング学習には、言語や数学など記号の操作力,論理的思考力,目標達成など、ヒトの認知機能を支える能力が関わっていると考えられるが,「プログラミング的思考」に比較的特異的な能力あるいは神経基盤が存在するのか,あるいは記号の操作力など他の認知能力の基盤を流用しているのかは、過去に神経科学的研究がほとんど存在しないため明らかでない。そこで本研究では、コンピュータプログラミング学習が脳の神経可塑的変化に及ぼす影響及び学習過程が脳活動に与える影響をMRI等により測定し、これら一連の研究成果を通して、プログラミング教育の教育的意義や指導法を考察する基礎資料の収集を試みる。
本年度は、30名のプログラミング未学習者を集め、うち実験群(22名)は15回の授業に加えて11回の講習会を受け、プログラミングの中間試験および事後試験、さらに最終作品の提出を義務付けた。プログラミング学習をしない統制群は8名であった。実験群は学習の前・中・後の3回、統制群は学習の前後の2回、脳構造(T1、拡散強調画像)、脳機能(安静時脳機能活動)を撮像した。さらに、学習の前後に学習やプログラミングに関する興味・関心等に関するアンケート、学習前の知的機能検査を行った。その結果、知的機能検査および統制群と実験群の脳構造の比較(横断分析)では有意な差は見受けられなかった。これは統制群の人数が少数であったためと考えられる。一方、昨年度の実験群のデータと合わせた34人の学習前後の変化(縦断分析)では、脳構造に有意差傾向がみられる部位のあることが明らかになった。

CLOSE
本郷 健社会情報学部教授H30-H33
学童期小児における運動器発達と食事・生活状況との関連

学童期小児における運動器発達と食事・生活状況との関連

平成28年度~29年度に都内小学校2校において5、6年生を対象として測定したデータ(414名)について集計・分析を行った。その結果、身長、体重、肥満度、骨格筋量、体脂肪率においては、東京都心部と山間部の小学校では測定値に違いはなく、骨密度は、男子において山間部のほうが有意に高かったことから、校庭の広さ等の運動環境は子どもの骨密度に影響する可能性が考えられたが、筋肉量や体脂肪率には影響をあたえないと考えられた。性別で比較すると、体脂肪率は6年生で男子よりも女子のほうが有意に高かった。また、学年別に比較すると、骨格筋量および全体筋肉量は男子において5年生よりも6年生のほうが多く、体脂肪率は女子において5年生よりも6年生のほうが高いことがわかった。これらのことから、小学6年生ころから第二次性徴にともなう身体構成の変化を確認することができた。以上の結果を含めてさらに調査・測定を進めるため、来年度からの測定にむけて機器整備、補修をおこない、新規に購入した骨密度については測定バイアス軽減のために測定トレーニングを実施した。また、対象校の選定については運動環境等を考慮しながら研究協力依頼をすすめている。

CLOSE
上杉 宰世家政学部准教授H30-H34
若手研究(B)「語り」の蓄積からコミュニティの物語を出力する地域デジタルアーカイブの構築と運用

「語り」の蓄積からコミュニティの物語を出力する地域デジタルアーカイブの構築と運用

本研究は、地域コミュニティでの「語り」に着目したアーカイブを構築することにより、地域における情報技術の新しいモデルを研究するものであった。具体的には、地域住民が多数出演した宮城県亘理郡山元町「りんごラジオ」の放送記録をデジタル化し、これを中心としたアーカイブシステムを構築、復興記録の地域における活用について調査した。それらの結果から、東日本大震災後に運営が長期化した臨時災害放送局のメディアとしての位置づけなどについて考察した。

CLOSE
松本 早野香社会情報学部講師H27-H30
(期間延長)
台湾ニューシネマとそれ以降の台湾映画における「日本時代」表象研究

台湾ニューシネマとそれ以降の台湾映画における「日本時代」表象研究

本研究では、現代台湾映画における「日本時代(日本統治時代)」の表象について分析した。その結果、『海角七号』が公開された2008年をメルクマールとして、それ以降の現代台湾エンターテイメント映画に描かれる「日本時代」は、日本植民地統治への批判や評価というよりも、中国との緊張関係に直面している21世紀の台湾において、台湾の歴史物語の一部の創造および再記憶化のための素材として機能していることが明らかになった。

CLOSE
赤松 美和子比較文化学部准教授H27-H30
芸術評価のための現代的価値論の構築:アートワールドの多元化をふまえて

芸術評価のための現代的価値論の構築:アートワールドの多元化をふまえて

本研究では、「芸術的価値」という概念をあらためて問い直し、その概念の正当性と役割を考察した。その研究の中で見えてきたのは、「芸術的価値」という概念は現代ではもはや不必要かもしれないし、役に立たないかもしれない、という可能性であった。また本研究では、芸術的価値に大きく関わる営みとして、「批評」という営みの意義や機能を分析した。批評の正当性を担保するためには、従来「理想的観賞者」という道具立てが用いられてきたが、本研究で見えてきたのは、いまやその道具立てはあらためて見直すべき時が来ている、という点であった。

CLOSE
森 功次国際センター講師H27-H30
ハーレム・ルネサンス期における性規範の近代化と米国黒人文学の関連性について

ハーレム・ルネサンス期における性規範の近代化と米国黒人文学の関連性について

本研究は1920-30年代のハーレム・ルネサンス期の黒人文学を対象として、女性の性的経験の表象を歴史的に検証したものである。20世紀前半の米国では、友愛結婚、優生学、社会衛生の言説の普及にともない、ヴィクトリア朝時代の規範であった「リスペクタブル」(上品)であること以上に「ノーマル」(正常)であることが求められるようになった。本研究はウォレス・サーマン、ゾラ・ニール・ハーストン、ネラ・ラーセンを中心に扱い、そのような規範に文学の女性表象がどう規定されつつ抵抗しているかを詳らかにした。また、その後の黒人作家(とりわけノーベル賞作家トニ・モリスン)の身体表象に影響を与えていることも明らかにした。

CLOSE
石川 千暁文学部講師H28-H30
視線随伴パラダイムを用いたAgency調整システムの発達過程の解明

視線随伴パラダイムを用いたAgency調整システムの発達過程の解明

本研究では、我々がこれまで行為主体感の発達評価のために用いてきた視線随伴課題を応用し、社会的文脈に応じた視線の合目的操作を8か月児が行えるかどうかについて、3つの実験を通じて検討した。具体的には、社会的な相互作用(攻撃行動)が観察されるアニメーションを見せ、自分の視線の操作が悪役キャラクターを懲らしめられるような文脈にすると、乳児は悪役を懲らしめるような目の動きを示した。しかし、視線の操作が悪役キャラクターをこらしめられないような文脈にすると、視線の操作が変化することが分かった。

CLOSE
宮崎 美智子社会情報学部講師H28-H30
里親養育における里親と実子の意識とその支援のあり方

里親養育における里親と実子の意識とその支援のあり方

平成30年度の計画と実績の概要は以下のとおりである。1.インタビュー項目の作成・協力者の選定:国内のインタビュー調査のインタビュー項目、大学内の倫理審査の認定、協力者の選定を行った。インタビュー項目の作成は、里親・実子それぞれのインタビュー項目を作成した。また、大学内の倫理審査では、科学研究費の執行・倫理に沿った審査を行っている。
2.インタビュー調査の実施:里親と実子へのインタビュー調査の実施の計画を行ったが、平成30年度はプレ調査を含む里親への4件の調査を行った。プレ調査では、里親家庭の実子にも面会することができ、年齢が計画よりも低いためインタビューは行わなかったが実際の里親家庭で考えたことなどを聞き取ることができた。インタビューでは実子と委託児童の養育においての課題や実子支援に関する内容を聞き取ることができた。
3.平成28年に行った海外視察オーストラリアのフォスタリング機関(里親支援機関)への調査報告についてまとめ、実子支援についてのプログラムの内容や現状の実子支援についてまとめた。このまとめに関しては2019年7月に発行予定の論文に掲載する予定である。

CLOSE
山本 真知子人間関係学部講師H28-H31
ハワイ語ラジオ番組を事例とする危機言語の復活とメディア利用に関する会話分析的研究

ハワイ語ラジオ番組を事例とする危機言語の復活とメディア利用に関する会話分析的研究

消滅の危機に瀕した言語(危機言語)の記述研究は、文法書や辞書の作成に重きが置かれ、話者間の相互行為という視点が十分でなかった。本研究は相互行為という視点から、危機言語の話し言葉データを収集・分析し、従来の危機言語研究を補完・発展させることを目的としている。危機言語を復活させる試みの成功例としてはハワイ語がある。しかし、ハワイ語の場合も話者間の相互行為という視点が十分でなかった。本研究の具体的な目的はハワイ語ラジオ番組の会話分析を通じて従来の記述研究を補完し、ハワイ語の復活とメディアの関係性を明らかにすることである。本研究では先住民語であるハワイ語ラジオ番組「カ・レオ・ハワイ」(以下KLH)における言語使用を分析している。KLHは「ハワイの声」という意味で、第1期(1972 年から1989 年)と第2期(1991年から2000 年)からなる。第1期はハワイ語の記録を目的とし、番組パーソナリティーが主に年配の母語話者をゲストとして招いてさまざまなトピックについて会話をし、時折、電話をかけてくる別の母語話者であるリスナーたちとも話すという番組形式であった。一方、第2期は母語話者の高齢化が進み、ゲストはハワイ語のイマージョン教育(没入教育)を受けた新たな、若い母語話者や大学などでハワイ語を学習した第2言語話者が占めるようになったという特徴がある。KLH の第1期と第2期に見られる言語実践をより詳細に比較していくために、平成30(2018)年度も研究協力者の協力を得て引き続き番組音声ファイルの文字起こしを進めた。特に第2期を中心に番組音声ファイルの文字起こしを進め、データベースを拡充するとともに、データの分析を行った。

CLOSE
古川 敏明文学部准教授H29-H32
研究成果公開促進費(学術図書)Development of a Methodology for Optimizing the Oral Transmission of Traditional Clothes-Making Techniques in a Preliterate Society下田 敦子人間生活文化研究所講師H29-H30

短期大学部

※研究課題名をクリックすると課題詳細がご覧いただけます。

研究種目等研究課題名研究代表者所属職名研究期間
(年度)
実施状況報告書・実績報告書研究成果報告書
基盤研究(C)自律的な積み上げ学習につながる授業内・外学習時のメタ認識出現条件

自律的な積み上げ学習につながる授業内・外学習時のメタ認識出現条件

本研究は,学習者自身の学習に対するメタ認識が活性化される条件を探ることにある。授業で目標に向かって積み上げていく学習について,また,授業外で日々機械的に積み上げていく学習において,学習者自身が自律的に学習を活性化させていく条件を検討するものである。学習プロセスを観察し,学習者の認識を観察することで,学習におけるメタ認識が意識される条件を特定することを目指している。その最終目的は,どのような学習環境を教室で教師が作るのが,学習者の支援となるのかを確認することにある。また,その後の自律的学習につなぐ観点を探ることにある。研究方法としては,期間,目標,内容,教員の異なるいくつかの授業の流れと,授業とは関係なく,学習者が授業外で自律的に進める学習プロセスと意識を観察し,授業参加者,授業外学習継続者の意識を分析することで,学習者のメタ認識条件を探ろうと考えている。具体的には次のように実施する。
授業内の学生の関心点を観察するため,授業後に,授業課題に対して関心を覚えた点とそれに対してどのような行動をとったかを記述に残すように指示し,その記述内に見られる学生の認識が,メタ認識に関わるものか,個人的関心のものか,個人的に見たテーマに関連するものかをラベル付けして,分析する準備とする。また,学期の開始時,途中,終了時に内省した授業への個々人の参加状況を,学期末に並べて比較し,学習者の意識,メタ認識に関する言及回数,場面,対象を調べ,それらに関する考えや意識を質的に分析する準備とする。授業外の学生の関心点,継続の動機を確認するために,教職者に,授業外で授業とは関係ないが必要だと考える学習を続ける動機と,継続,結果に関する意識を調べる。
これらの調査の結果を総合して,自律学習のための教師の支援のポイントを探る。

CLOSE
中尾 桂子国文科准教授H30-H32

全国学校別 採択件数・配分額一覧表

※文部科学省ホームページ「 科学研究費助成金 配分結果」にて公表された資料を基に本学が作成しました。

大学

短期大学部