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科研費 過去の採択状況 平成28(2016)年度

採択課題一覧

大学

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研究種目等研究課題名研究代表者所属職名研究期間
(年度)
実施状況報告書・実績報告書研究成果報告書
基盤研究(A)人が生育する限界的環境に於ける発育発達(生活技術の発達を含む)と成熟の総合的研究

人が生育する限界的環境に於ける発育発達(生活技術の発達を含む)と成熟の総合的研究

発育発達過程に関する研究は19世紀後半からヨーロッパ、アメリカ、日本を含む東アジアなどの四季のある産業が発達した先進的な国々で行われてきた。よって子供の発育発達に関する知識はこれら以外の地域では蓄積されてこなかった。本研究によってこれまで未知であった東南アジア諸民族の発育発達に関するデータを収集・蓄積し、またこれまでに定説として信じられてきた重要な学説の弱点、誤謬を修正することが出来た。例示すると思春期の身長スパートの普遍的一律性の修正、狩猟採集民の思春期長期化の確認などである。2次的には各地域・民族のデータによって発育発達評価基準値が得られ、不適切な発育発達診断が是正される基礎を提供した。

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大澤 清二人間生活文化研究所所長H27-H30
基盤研究(B)海外日本人社会における移民主体の変容とコミュニティの再形成に関する経験的研究

海外日本人社会における移民主体の変容とコミュニティの再形成に関する経験的研究

インドネシアの海外日本人社会にみるかぎり、移民主体は長い間戦前からのコロニアル体制下の(国の施策によって移動した)「国策移民」→ポスト・コロニアル下の(企業の都合で移動した)「企業移民」が中心であった。またコミュニティも日本国内のコミュニティを持ち込んだもの、あるいはそれと相同的なものが支配的であった。しかし2000年をまたいで、移民主体がそれまでの「企業移民」から(自らの意志で移動した)「ライフスタイル移民」へとシフトするようになっている。日本人社会も日本人会中心のものから日本人会もその一つである(one of them)多中心的なものに変化している。

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吉原 直樹社会情報学部教授H25-H28
消臭抗菌抗アレルギー繊維の機能性評価と介護医療分野への応用

消臭抗菌抗アレルギー繊維の機能性評価と介護医療分野への応用

近年、衣服着用時にかゆみやあかみなどのアレルギー症状を訴える人が増えてきた。皮膚科医はアレルギー性皮膚炎患者に対して化学繊維ではなく綿の着用を推奨する。本研究は、接触する着衣と皮膚との関係に着目して、アレルギー症状を発症する原因を布帛の力学的特性、皮膚のpH、常在菌、汗を可能な外部皮膚刺激因子として相関を調べた。さらに、これらの外部刺激因子の軽減を目的として、消臭抗菌抗アレルギーポリエステルを調製し、汗臭に対する消臭効果、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性およびアレルギー性皮膚炎患者の皮膚に与える影響などを調べた。これらの結果をまとめ、アレルギー性皮膚炎患者の着衣に必要な布帛の機能について検討した。

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水谷 千代美家政学部教授H26-H29
東南アジア伝統衣服製作技術体系の解明と伝承教育最適化のためのプログラム開発

東南アジア伝統衣服製作技術体系の解明と伝承教育最適化のためのプログラム開発

東南アジアの無文字社会に伝承される身体を用いた衣服製作技術は急激な社会の変貌により現在消失の危機に瀕している。そこで本研究では①「地(じばた)による衣服製作技術」が現存する諸民族を対象としたフィールド調査によってそれらの技術を映像と文字に置き換え、後世に伝えるべく保存した。②同時にこの技術の伝承過程を技術要素に分解し、項目反応理論によって難易度を計量し、③この難易度に従って最適化した習得過程を見出し併せて習得最適年齢を求め、これによる伝承方法とそのプログラムを開発した。

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下田 敦子人間生活文化研究所講師H26-H29
日系国際児のバイリテラシー形成過程の質的探究とその展開

日系国際児のバイリテラシー形成過程の質的探究とその展開

本研究の学術的意義は、次の2点にある。第1点は、児童期に複数の言語で読み書きを習得する国際児のバイリテラシーの発達は、定期的かつ協働的な家族内実践に支えられていることを独日国際児の事例を通して具体的に開示したことである。第2点は、日本語を複数言語の1つとして習得する児童の作文力の発達過程は、日本語母語児とは違う道筋を辿ることをドイツ語を優勢言語とする児童の例に基づいて具体的に示したことである。これらの知見は、これまでほとんど未解明であった日系国際児の継承日本語リテラシーの伸び方に関する基礎資料となり、日本語補習校における作文指導の改善という実践的課題にも貢献し得るものである。

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柴山 真琴家政学部教授H26-H30
基盤研究(C)資産運用型「賃貸併用住宅」の市街地更新およびコミュ二ティへの影響と効果の分析

資産運用型「賃貸併用住宅」の市街地更新およびコミュ二ティへの影響と効果の分析

戸建住宅中心の住宅系市街地では、住宅の増改築、建替え等が居住者のライフステージの変化に伴って行われ、相続税対策や資産運用目的での建築行為が市街地の変容に大きな影響を与えている。
本研究は、資産運用目的の賃貸住宅を併設した住宅(賃貸併用住宅)を対象として、①建築動向や建築実態を把握し、②20 年前に建築された賃貸併用住宅の追跡調査をもとにオーナー家族の住生活の変化等を把握した。さらに、③住宅系市街地への影響およびこれら住宅の活用方策(地域での居場所としてのコミュ二ティ形成上の意義)を検討し、資産運用型の住宅建築の制御と住生活ニーズ面および市街地環境面を考慮した活用のあり方を示した。

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松本 暢子社会情報学部教授H25-H28
栄養士養成施設卒業生、在校生の健康リスクとBMI、体脂肪率に関する横断・縦断研究

栄養士養成施設卒業生、在校生の健康リスクとBMI、体脂肪率に関する横断・縦断研究

1975年から1984年に栄養士養成施設を卒業した対象者の青年期の体格や栄養素摂取状況と壮年期の体格、栄養摂取状況、食習慣、健康関連QOLとの関連性について縦断研究の手法を使って検討をおこなった。また、青年期に習得した栄養学の知識、卒業後の専門就業経験が中高年期の体格、栄養摂取状況、食習慣、健康関連QOLに与える影響についても検討をおこなった。
一方、2012年から2016年に栄養士養成施設に在籍した対象者のBMI、体脂肪率から、やせや隠れ肥満の者を同定し、基礎代謝量、血圧、骨量、ヘモグロビン推定値、食品・栄養摂取状況、生活習慣・食習慣との関連性について横断研究の手法を使って検討をおこなった。

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小林 実夏家政学部准教授H25-H28
近世近代の枠を越えた十九世紀絵入小説史を記述するための書誌学的研究

近世近代の枠を越えた十九世紀絵入小説史を記述するための書誌学的研究

従来は必ずしも明らかでは無かった幕末から明治初期にかけての草双紙を中心とする絵入小説の様相に関して、その全体像を概観できる程度までは資料を整備できた。今後の叩き台として明治期草双紙の書目を公開する予定である。
一方、十九世紀前半に出板された「読本」に関しては、フランスのギメ東洋美術館で読本の口絵挿絵だけを蒐めて合冊した大量の資料を見出すことが出来、十九世紀末に貸本屋での役割を終えた絵入読本の末路の一端を明らかに出来た。欧羅巴で沸き起こったジャポニズムの隆興に乗じて、絵入読本の絵だけが輸出されたものであると思われる。つまり日本十九世紀小説は絵入であったが故に国外で享受されるに至ったのである。

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高木 元文学部教授H25-H28
中高年女性の健康力と若年期の食生活・生活習慣に関する縦断研究

中高年女性の健康力と若年期の食生活・生活習慣に関する縦断研究

本研究の対象者は49 - 63歳女性、調査は、更年期症状、健康状態、既往歴、食への意識および習慣に関する自記式調査票と食物摂取頻度調査にて実施した。さらに対象者が大学在籍時に記入した3日間の食事記録調査票も合わせて解析を行った。
その結果、更年期症状と関連のあった大学在籍時の栄養素等摂取量は、動物性たんぱく質、脂質、食塩、多価不飽和脂肪酸、食物繊維であった。脂質は総脂肪だけでなく、動物性脂質、植物性脂質も更年期症状のうち、くよくよする、疲れやすい、動悸、胸のしめつけ、関節痛、手足のしびれと正の相関があった。

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上杉 宰世家政学部准教授H25-H29
地方青年結社における「文」の実践に関する社会史研究

地方青年結社における「文」の実践に関する社会史研究

本研究は、1900年前後の地方青年の文学を、多様な社会的実践として理解することを目的とする。概要は①地方青年の文章の内容の分析、②文章による青年同士のコミュニケーションの分析、③地方青年の文学を出版した出版社の分析である。
本研究の成果として、①福島県の文章回覧誌を翻刻した。②文語体書簡文が生成する青年たちのホモソーシャルな関係を明らかにした論文を発表した。

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木戸 雄一文学部准教授H26-H28
集団的尊敬による集団間紛争解決過程の解明

集団的尊敬による集団間紛争解決過程の解明

集団間の紛争を解決するためには、対立集団に対するイメージを改善し、成員の建設的態度を形成していく必要がある。本申請課題では対立集団のイメージおよび集団間紛争解決に対する尊敬の効果を検討した。外集団に対する尊敬は外集団の人間性知覚(温かさと有能さ)と集合的感情(集合的罪悪感など)を介して、人々の紛争解決的態度(謝罪と補償)を強めていた。また内集団が対立集団から尊敬されているというメタ尊敬も、基本的には同様の心理過程を経て紛争解決的態度を強めていたが、その過程においては外集団に対する親密さという集団間感情と外集団に対する象徴的脅威が大きな影響力を持つことが明らかになった。

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熊谷 智博文学部准教授H26-H28
属性付きグラフのレスポンシブ可視化の研究

属性付きグラフのレスポンシブ可視化の研究

オープンソース開発コミュニティやソーシャルメディアなどでは、大規模なネットワーク構造のデータがよく出現し蓄積される。 本研究では、ユーザがこのようなネットワークデータの構造特性を容易に発見できるようにする新しい可視化手法を提案する。また、このようなネットワークの成長の過程を3Dアニメーションで簡単かつ直観的に表現する可視化ツールを開発した。そのツールはthree.jsおよびNeo4jグラフデータベースを使用して実装され、Webブラウザ上で簡単に操作可能である。

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藤村 考社会情報学部教授H26-H28
災害時におけるDV被害者支援と民間シェルターの役割

災害時におけるDV被害者支援と民間シェルターの役割

本研究では、東日本大震災被災地におけるDV被害者支援の現状について、民間シェルター、4つの自治体及び関係諸機関のデータを通して考察した。同被災地では、大震災以降、DV被害が増加し被害の質に変化がみられた。経済的暴力等女性への暴力が複雑化、深刻化している。民間シェルターは、同大震災直後から女性への支援を行ない、被災地都心部だけでなく地方部へも足繁く通い、相談、保護、支援を率先して行なってきたが、これらの取り組みは被災地において孤立化するDV被害者が支援にアクセスできる契機となる。民間と行政が連携をはかり、専門性を身につけた支援者や行政担当者を育成していく等早急な支援体制の構築が求められている。

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小川 真理子社会情報学部特別研究員(PD)H26-H28
「表現の自由」とヘイト・スピーチ法規制をめぐる社会学的研究

「表現の自由」とヘイト・スピーチ法規制をめぐる社会学的研究

初めてヘイトスピーチを聞いた時「反感を感じた」71.9%、「驚いた」61.1%、「恐怖を感じた」49.7%の一方、「共感した」8.3%。「街頭で一緒にヘイトスピーチを唱えたい」1.7%、逆に「街に出てカウンター行動に参加したい」は10.4%。ヘイトスピーチを繰り返し聞くうち「違和感が増加した」52.8%、逆に「違和感が減少した」10.4%。ヘイトスピーチを「表現の自由」と見なすのは23.4%、「法で規制すべき」は47.6%。法規制すべきなのは、「人権を侵害する言動」76.3%、「特定の社会的弱者への憎悪表現」10.9%、「表現の自由を侵害する言動」38.2%、「思想信条の自由を侵害する言動」37%、「特定の政治家への憎悪表現」10.9%。外国人が増える結果として「日本の文化が豊かになる」70.7%、「社会の活性化」70.4%、「経済の活性化」59.2%、「日本人の働き口が奪われる」34%、「日本の文化がそこなわれる」22.5%。グローバル化で競争は激化、労働条件は悪化し、貧富の格差も拡大、将来への不安や閉塞感が増す中、少子高齢化で日本経済の停滞が懸念されるため、外国人に肯定的期待を寄せる者は少なくないが、外国人が対等・優位になり自分の既得権益が脅かされたり、追い抜かれる場合に排他的な傾向が強まる。「全体主義、排外主義ではなく、一人一人が大切にされ、お互いの個性、豊かさを尊重する、豊かさを分け合い、共に生きる社会を望んでいます。ヘイトスピーチをする人々は社会の中で自分が大切にされているという実感がないのではないでしょうか」(日本籍女性・自由記述より)
ヘイトスピーチのターゲットとされた人々のアイデンティティにダメージを与える、特に子どもの成長に悪影響が大きいと考えられている。コミュニティの中で生きる場合より、孤立無縁でカミングアウトせずに生きる方がダメージが深いと思われる。

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鄭 暎惠人間関係学部教授H26-H28
初心者および中級者への継続的スーパーヴィジョンの効果とプロセスに関する実証的研究

初心者および中級者への継続的スーパーヴィジョンの効果とプロセスに関する実証的研究

心理療法のトレーニングに欠かせないスーパーヴィジョンのプロセスの中で初心者・中級セラピストはどのような経験をしているのかを、インタビュー調査・質問紙調査および実際のスーパーヴィジョン場面の動画分析によって明らかにした。まず16名の初心者・中級者にインタビューを実施し、結果として「ヴァイザーや周囲の人が超自我のように感じる」「SVを活用できない」などの第一段階から「救われるSV」を体験できる第二段階へのプロセスが確認された。また、さらに7名の初心者において「SVによる元気づけ」が体験されている一方で「ヴァイザーに振り回される」体験をしている初心者もいることが確かめられた。

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福島 哲夫人間関係学部教授H26-H28
第二次世界大戦期、米英両国の世界地理認識の比較研究―地図史研究の方法論を用いて―

第二次世界大戦期、米英両国の世界地理認識の比較研究―地図史研究の方法論を用いて―

2014年度夏季に米国立公文書館と米連邦議会図書館、2015年度夏季に英国立公文書館と英国図書館で資料調査を行った。収集した史料・文献に基づき、2015年5月17日に富山大学で開催された日本西洋史学会で学会報告を、また同年10月17日に福島大学で行われた政治経済学・経済史学会秋季学術大会でパネル報告を行った。2015年度の研究成果を「第二次世界大戦期、アメリカ軍の標的地図」として、また2016年度に「第二次世界大戦期、米英同盟による地図作成―『斜角遠近法標的地図(ギアリングスの地図)』を中心に―」として研究成果を発表した。

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高田 馨里比較文化学部准教授H26-H28
ユーザーにフレンドリーな高精度3次元ファッション・デザインシステムの開発

ユーザーにフレンドリーな高精度3次元ファッション・デザインシステムの開発

情報通信技術を利用したファッションオーダーシステムの開発において,着装シミュレータが“3次元”で一般消費者に使いやすく,かつ精度の高いシミュレーションを実現できるための要件を検討した.その結果,既存のソフトウェアについて開発メーカーとのカスタマイズの検討と改善を行い,3次元の基準点測定表示可能なシミュレーションソフトウェアを開発した.また,タイトスカートとフレアスカートの3次元測定値から,幾何学的なパラメータとして,点集中のガウス曲率,点集中の測地的曲率,点集中の平均曲率を計算して,加齢による体型変化や,使用するテキスタイルの力学物性との間に関係を見出すことができた.

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團野 哲也家政学部教授H27-H29
1960年代のG10とOECD/WP3

1960年代のG10とOECD/WP3

国際金融システムの不安定は現在も継続している。その背景には、現在の国際金融制度の国際金融市場との不適合や国際政策協調の機能不全がある。こうした金融不全への対応として、IMF、FSB、G20、OECD、バーゼル委員会などの役割が検討されているが、これを明らかにするためには、それらの組織の起点まで戻る必要がある。本研究は、1960年代のG10、OECD/WP3、主要国政府国際金融部門の一次資料を新たに発掘することを通して、主要国間の政策対立、とくに米と欧州諸国やBISとの政策対立の存在を検出することができた。また、国際金融機関内部での内的な金融理論の形成も検出しえた。

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伊藤 正直社会情報学部教授H27-H29
ガバナンスのリスク社会論・監査社会論的研究――資本主義と民主主義の現代的変容

ガバナンスのリスク社会論・監査社会論的研究――資本主義と民主主義の現代的変容

1980年代以降、現代社会の統治構造は、国家による垂直的な統治(ガバメント)から、国家・企業・NPO等、多様な主体による水平的な統治(ガバナンス)へと移行してきている。本研究では、このような統治構造の変化を「リスク社会論」や「監査社会論」に関連づけて分析した。研究をつうじて、「リスク管理」や「監査」の概念が当初の意味を超えて大幅に拡大解釈され、組織や社会の日常的・全般的な活動にわたって適用されるようになったこと、さらに、リスク管理や監査が組織や社会の統治原理を構成する基本的な要素になってきたことを明らかにした。

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正村 俊之社会情報学部教授H27-H29
制度環境における企業の戦略的対応と組織間関係構築に関する研究

制度環境における企業の戦略的対応と組織間関係構築に関する研究

制度環境において、企業が戦略的に対応し、組織間関係を構築するのかについて明らかにしている。組織論特に新制度理論の成果をもとに、制度企業家、埋め込まれたエージェンシー、制度的対応などの考え方により、制度環境に対応する戦略・組織・組織間関係のモデルを構築した。企業とステイクホルダーとのパワーや信頼とともに、組織内要因として、部門間パワー、対境担当者のポジションとパワー、トップのリーダーシップが影響を与えることを明らかにした。

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山倉 健嗣社会情報学部教授H27-H29
移行期における次世代自動車の開発と普及のための税制と規格,規制の理論・実証分析

移行期における次世代自動車の開発と普及のための税制と規格,規制の理論・実証分析

本研究の目的は、移行期における次世代自動車の開発と普及を図るための効果的な税制と規格、規制を解明することである。理論分析の結果、次世代自動車の市場規模が小さい場合、税制がイノベーションを効果的に促すことを明らかにした。また、電気自動車の普及のためには、車体価格に応じた補助金より充電池容量に応じた補助金の方が効果的であることを明らかにした。そして実証分析では、自動車税制が技術革新に強く影響を与えること、そして次世代自動車の普及には維持に関する税制上の優遇が効果的であることを明らかにした。

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荒川 潔社会情報学部准教授H27-H29
近世中国におけるムスリムの問答体文献の研究

近世中国におけるムスリムの問答体文献の研究

本研究では中国ムスリム哲学者、王岱輿の弟子達がまとめた問答集『希真正答』の特徴を検討した。『希真正答』において、王岱輿はムスリム以外に道教徒、仏教徒、そして儒者達と問答を行っている。ムスリムとの問答ではイスラームの教義に関するもの以外に、身の回りにおける自然科学分野に関するものもあった。一方、相手が非ムスリムの場合は王岱輿に説得、納得させられる形になっている。まとめた弟子達によれば、ムスリムは問答によって人間的な成長をするという考え方がある。『希真正答』は文字ではなく問答によって真の知を追い求めようとした書であるといえる。

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佐藤 実比較文化学部准教授H27-H29
ラテン語詩と近世初期日本の交差

ラテン語詩と近世初期日本の交差

研究期間中に1)P.Palumbo (1573) Non Recedat Volumen Legis Huiusの背景および近世初期日本における受容について、2)ヴァティカン写本(MS. Reg. lat. 426)の最後部にあるラテン語寸詩および叙事詩断片計4点の内容および源泉について、3)B.Pereira (1640) Paciecidos Libriの背景や内容について、調査や発表を行った。特に2)の、近世初期日本人神学生によって筆写されたのではないかと推定される擬古典ラテン語詩4点が、1588年にリスボンで刊行された書籍から採られているとほぼ同定できたことが最大の成果である。

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渡邉 顕彦比較文化学部准教授H27-H29
日本語文学における検閲とジェンダー

日本語文学における検閲とジェンダー

大正・昭和期の新聞・雑誌メディアの言語と小説の言語を主な分析対象とし、ジェンダーをめぐる言説論理が検閲制度とのかかわりによってどのように形成されたのかを明らかにしようとするのが、本研究の目的である。戦前期の検閲は、制度としての伏字を基軸として実践されたが、本研究では検閲とジェンダーという主題に基づき、伏字とジェンダーの力学の関係性を検証した上で、伏字のもつ記号的効果を理論化し、検閲という観点から、日本語文学におけるジェンダー編成を明らかにすることを目指した。
本年度は、(1)明治期の言説編成をめぐる資料調査、(2)現代における明治・大正期の物語の表象という2点を念頭に、資料調査と考察を行った。大妻女子大学図書館、国立国会図書館、国文学研究資料館、都立図書館等で、1次資料を収集するとともに、調査を進めた。その過程で、不可視にされた戦時性暴力の構造について考察し、可視と不可視の境界線がどのように記述されるかという観点から、女性身体と暴力の構造、セクシュアリティをめぐる規範の生成、それにかかわる検閲的な禁止の問題について考察を進めた。
また、ジェンダー論やセクシュアリティ研究、クィア理論に関する理論的文献について、研究会等での発表や討議を通じて、新たな理論的地平を獲得することにつとめた。そのなかで、プライベートな領域の策定と公への「現れ」を規制するセクシュアリティの制度について検証するとともに、ナショナリズムをめぐる情動の構成をジェンダー論的な観点から考察し、国内学会等で研究発表をおこなった。かつての検閲をめぐる感性がナショナリズムの情動とどのように切り結ぶのか検証し、その情動には不可視化されたかたちで性暴力の構造が伴われるというテーマ設定のもと、分析をおこない、考察の一部を論文にまとめた。

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内藤 千珠子文学部准教授H27-H31
金融市場の高頻度データ解析とリスク管理への応用

金融市場の高頻度データ解析とリスク管理への応用

金融データーにはネットワークデータ(企業間ネットワーク、株式保有関係、取引関係など)と時系列データ(企業業績、株価)の2種類のデータ構造がある。これらのタイプの違うデータ構造をもつデータを統合して解析する手法の開発を目指した。特に、ネットワークの各ノード上に時系列データが付随した複合的なデータに対して畳み込みニューラルネットワークを適用する方法を検討した。
具体的には、畳み込みニューラルネットワークなどの学習マシーンにデータを入力する前に、スペクトラルクラスタリングによって次元圧縮を行い学習時間を圧縮する方法を検討・応用した。この手法を用いる対象データとしては、ネットワークデータと、そのネットワークのノードに付随した時系列データである。金融データとしては株式市場における企業間ネットワークと株価・業績などの時系列データを想定している。
今回用いたスペクトラルクラスタリングは、ネットワークの隣接行列からラプラシアンを構成して、その固有値問題(主成分分析)を解いて、寄与の大きい固有値・固有ベクトルを求める。それを2次元グラフ上に表現して、そのグラフ上で時系列データを表現すると画像データと類似したデータ構造となる。そのうえで畳み込みニューラルネットワークを適用することによって、次元圧縮で高速に学習されるアルゴリズムとなる。今回、これを他分野のデータに応用したが、今後金融データ(企業業績、株価データ)に応用する予定である。

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落合 友四郎社会情報学部准教授H27-H31
星座カメラi-CANを活用した,日本中の小学校で星の学習ができる教材の開発

星座カメラi-CANを活用した,日本中の小学校で星の学習ができる教材の開発

星座カメラi-CANを日本中どこの小学校でも一斉に使えるようなシステムを構築し、日本中の小学校の理科の授業で星の学習を行う時期には、全ての理科教科書が扱っている星座等の星の集まりにカメラを向けて、小学校の理科授業中に星座カメラの映像を使って星空の観察ができるような体制をつくった。
九州から北海道までの10カ所の小学校で星座カメラを使った理科の授業を実施、星座カメラi-CANを使った後に、子どもたちが星を観察してきた記録とi-CANを使わずに観察してきた場合の記録の精度を見ることで、i-CANを活用する効果を評価することができた。

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石井 雅幸家政学部准教授H28-H30
伝統的農法「稲田養魚」の高い米魚生産性を支える生態系プロセスの科学的検証

伝統的農法「稲田養魚」の高い米魚生産性を支える生態系プロセスの科学的検証

稲田養魚の高い生産性を支えるメカニズムを解明するため、炭素窒素安定同位体比を用いて水田内の有機物フローを評価した。養魚水田は慣行水田に比べて動物性有機物の供給が大きかった。この養魚水田の動物性有機物は、魚(フナ)のふんによってかなりの程度説明されたが、養魚飼料の食べ残しのほうがより大きな割合を占めた。フナの餌に占める天然餌料の割合は一定程度あるものの、養魚飼料の貢献のほうがより大きかった。以上のことから、養魚水田生態系内部の食物連鎖が土壌肥沃化に一定の役割を果たすことが示された一方、系外から投入される養魚飼料が土壌の栄養状態により大きく作用し、本農法の高い生産性をもたらしていることがわかった。

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小関 右介家政学部准教授H28-H30
手芸文化データベースの構築と教育現場への活用

手芸文化データベースの構築と教育現場への活用

本研究は明治~昭和時代の女子教育で行われた高度な手芸教育の再評価と、教育現場への活用方法を見出すことを目標に行った。関東の女子大学4校所蔵の手芸作品881点と手芸技法書5冊の画像からデータベース(非公開)を作成した。このデータベースを学生30名、手芸をする一般ユーザー4名に試用してもらった。この結果を受け、一般的なHP型とSNS型を作成し、データベースとリンクさせたことで、検索性と情報発信力が高まり、ユーザーの使用性が向上した。手芸文化を広く発信し活用するには、データベースは有効な手段であり、さらに汎用性の高いSNS等のフォーマットを併用することが重要であることが明らかとなった。

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中川 麻子家政学部准教授H28-H30
エジプト・コプトの染織品とインド更紗の制作年代および制作地の特定に関する研究

エジプト・コプトの染織品とインド更紗の制作年代および制作地の特定に関する研究

平成30年度の研究実績として、国内調査を女子美術大学で実施した。約50点のコプトの染織品と40点のインド更紗(コプトの遺跡から発掘されたと考えられている作品)の調査を終えた。またこれらのインド更紗のうち8点については、放射性炭素年代測定(AMS-14C法)を実施し、各作品の制作年代を検討した。その結果、それぞれ15世紀が6点、13-14世紀が1点、8世紀が1点の3群に分類できるような結果が出た。8世紀と制作の可能性が指摘された作品は、藍で染色された作品であり、染料の影響を慎重に評価する必要があるが、相当量の染料成分が残留しないと年代をずらすことは難しいので、8世紀頃に制作された作品と考えることができる。
本調査の結果はイギリス・オックスフォード大学アシュモリアン博物館が永年行ってきたコプトの染織品に含まれるインド更紗の制作年代に関する研究に照らし合わせても、妥当な結果と考えられる。平成29年度の調査研究の成果として『大妻女子大学家政系研究紀要』第55号に「Report on Coptic Textiles in the Collection of Ashmolean Museum」を発表した。また放射性炭素年代測定の結果を踏まえた報告は、『月刊 考古学ジャーナル』No.725,2019に「エジプト・コプトの染織品とインド更紗の制作年代および制作地の特定に関する研究」として2019年5月に発表した。今後はコプトの染織品と日本のコレクターとの関係について『文化資源学』への投稿を考えている。

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須藤 良子家政学部講師H28-H30
学校の教員と取り組む合理的配慮指針に基づく教材開発と授業手法の開発

学校の教員と取り組む合理的配慮指針に基づく教材開発と授業手法の開発

児童生徒一人ひとりの抱える困り感の軽減や解消を目指して,手作り教材を制作し,日常の教育活動の中で実践を行い,「これまで不可能だったことを可能にする」本研究活動は,国内だけでも 200 名を超える一大研究プロジェクトとなっている。これまで,発語のない児童生徒,知的障害を持つ児童生徒,自閉症の児童生徒,場面緘黙の児童生徒,視覚障害を持つ児童生徒,読みの困難な児童生徒,肢体不自由の児童生徒,学習障害を持つ児童生徒などが,多岐にわたる活動に取り組み,自立感,達成感を味わい,仲間意識を育み,学校に自分の居場所を作ることに成功するなど,これまで不可能だったことを可能にする取り組みを行うことができた。

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生田 茂社会情報学部教授H28-H30
家庭における日々の家事/活動をゲーミフィケーション化する研究

家庭における日々の家事/活動をゲーミフィケーション化する研究

家庭における日々の家事や行動にゲーミフィケーション要素を追加することで,少しでも楽しく家事や行動が行えるようにし,かつ,継続するためのモチベーションを向上させることが本研究の目的である.ゲーミフィケーションは,遊びや競争など, 人を楽しませて熱中させるゲーム要素や考え方を, ゲーム以外の分野で応用していこうという取り組みである.平成28年度および平成29年度においては幼児対象歯みがき支援に取り組み,平成30年度においては,幼児を対象とした食育支援を追加して取り組んだ.歯磨き支援の成果は情報処理学会が主催するDICOMO 2018において発表した他,国際会議CollabTech'18に採択されて発表した.
平成30年度から開始した幼児を対象とした食育支援については,子供が好き嫌いをしないように完食のサポートをするということと親子間のコミュニケーションを支援することを目的として実施した.スマートフォンに搭載されている加速度センサーを用いて,幼児が何をどのように食べているかを推測する機能を備えている.具体的には幼児の食事プレートの底にスマートフォンを置き,スマートフォンに内蔵されている加速度センサーがプレートの傾きを検知することで検出するようになっている.食べている料理に応じて異なる動物の鳴き声が出るようにした.これによって,最後まで飽きずに食事ができる且つ「楽しく」食事をすることができ,それをきっかけに親子間のコミュニケーションが増える手助けをすることを目指している.

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市村 哲社会情報学部教授H28-H30
中世後期ロンドンの「外国人」と都市社会

中世後期ロンドンの「外国人」と都市社会

本研究では、中世ロンドンを、都市の「外部」との関係性の中で考察するための第一歩として、「外国人」(alien)とされた人々を取り上げた。まず、中世ロンドンの「外国人」に関わる研究動向を整理し、その結果を、研究会や国際学会において発表した。そのうえで、代表者は、15世紀ロンドンの「外国人」の出身地・居住地・職業などの概要をまとめて発表した。また、ロンドン市立文書館において、14~15世紀ロンドンの「外国人」が残した遺言書を収集した。分担者の佐々井真知氏は、同職ギルド(同業者組合)が「外国人」とどのように関わったのかを考察するため、金細工師ギルドを取り上げ、当該ギルドの規約の分析を行った。

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上野 未央比較文化学部准教授H28-H30
穀類の摂取による高血圧症の予防効果と腸内代謝を介したメカニズムの研究

穀類の摂取による高血圧症の予防効果と腸内代謝を介したメカニズムの研究

β-グルカン含量の異なる2系統の大麦(ホワイトファイバーとファイバースノウ)を食餌性肥満モデルマウスに給餌し、血圧に及ぼす影響を検討した。本実験の対照群の収縮期血圧が120.7±8.2mmHgであったことから食餌性高血圧が発症したと考えられた。それに対し、ホワイトファイバーでは有意に血圧を低下させる作用が示された。収縮期血圧では、ファイバースノウも低下傾向(p=0.05)であったことから両大麦ともに高血圧予防または改善作用があると考えられ、β-グルカン量が多いほど効果が顕著であることが示された。大麦の血圧低下作用のメカニズムを調べるため、血清アンジオテンシンⅡ濃度とACE活性を調べたが、有意差が認められなかった。したがって、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系による調節作用ではないことが示された。同様に、内臓脂肪蓄積低減に伴う、脂肪組織からのアンジオテンシノーゲンの発現量低下によるメカニズムも認められず、逆に発現量が高まることが示された。また、交感神経系を介したレプチンの血圧上昇促進作用が報告されている。本結果より、ホワイトファイバー群で血清レプチンが有意に低かったため、血清レプチン低下が血圧低下の要因と考えたが、血圧と血清レプチン濃度との間に相関性は認められなかった。したがって、レプチン濃度でも説明ができなかった。
一方、盲腸重量と血圧との有意な負の相関が認められたため、短鎖脂肪酸を介した血圧調節が考えられた。大麦の血圧低下作用は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を介さない、短鎖脂肪酸を介した作用の可能性が示唆された。今後、盲腸内短鎖脂肪酸解析を行い、血圧との相関性を検討していく。

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青江 誠一郎家政学部教授H28-H31
現代日本語の自他に関する構文的研究

現代日本語の自他に関する構文的研究

本研究の目的は「構文」に関する文法的知識が実際に使用される文の生成・解釈において重要な役割を果たすことを、現代日本語の自他構文を例にして明らかにすることである。
本年度は、接続助詞的な意味を表す「のが」と「のを」を持つ文を、自動詞構文・他動詞構文からの拡張と位置付け、それぞれ自動詞構文・他動詞構文の基本的な意味をどのように受け継いでいるか、どこまで元の意味を失っているかを詳細に検討した。
その結果、「のが」「のを」は、状態変遷性を表す自動詞構文の主格・対抗動作性を表す他動詞構文の目的格という格助詞の意味から、二つの事態を「逆接」「対比」の意味でつなぐものへと拡張した実例が見いだせるものの、拡張するにつれ(自動詞構文・他動詞構文の特徴が失われるにつれ)許容度は下がり、動的事象の変化の解釈が得られない状況での「逆接」「対比」用法は受け入れがたいことが明らかになった。この拡張の結果としての逸脱的な「のが」の文と「のを」の文の意味は接近しているが、「のを」の文が「のが」の文に近づく関係にあることも明らかにした。
「のが」「のを」を用いて動的事態変化ではない、「対比」を表す場合、発話者は自動詞構文・他動詞構文の構文的意味である「変化」の意味を、《対比する》という思考のプロセスに写像して表現したものと考えられ、「に対して」などの表す「対比」とは意味が異なることを明らかにした。「逆接」や「対比」の意味そのものが発話者の主観と言われるが、その「逆接」「対比」を、自動詞構文・他動詞構文の持つ構文的意味を鋳型として主体的に捉え表現するという意味でも、「のが」「のを」文の「逆接」「対比」は主観的であると言える。

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福島(天野) みどり文学部教授H28-H31
挑戦的萌芽研究欧米並びにアジアとの比較を介した日本近代文学及び映画における死の表象の再構築

欧米並びにアジアとの比較を介した日本近代文学及び映画における死の表象の再構築

日本近代文学及び映画が死をどのように表象し、時代に応じていかにそのイメージを変質させていったのか、同時代の欧米並びにアジアにおいて生産された表象との差異として歴史的に把握することにより、近代社会において消費される死の表象の意味を、明らかにした。換言すれば、本研究は、言語と視覚における、二重化された表象の不可能性を介して、近代における超越的な審級のイメージ形成を対象化する歴史的な試みであった。

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城殿 智行比較文化学部教授H26-H28
寝たきり高齢者のQOL改善のための機能性繊維の応用に関する研究

寝たきり高齢者のQOL改善のための機能性繊維の応用に関する研究

我が国の寝たきり高齢者の人口が福祉先進国よりも圧倒的に多い。福祉先進国では、介護器具を用いて身体の残存機能を活かして高齢者の自助を支援する。本研究は、介護システムや介護器具について調査した。また、尿臭、排泄物臭のような身体起源の悪臭が問題視されていることから、本実験では、寝たきり高齢者の病室内環境を想定した実験室を作り、消臭性繊維を悪臭源近傍で消臭する方法を検討した。まず、室内空気の流れをシミュレーションした装置を作成し、消臭性繊維の消臭機構および消臭効果を調べた。次に、排気ダクト内や換気マットレス内に消臭性繊維を設置または寝具に応用し、消臭効率を測定して消臭性繊維の適正化を提案した。

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水谷 千代美家政学部教授H27-H29
日中戦争の記憶と表象に関する総合的研究――1940-1960年代を中心に

日中戦争の記憶と表象に関する総合的研究――1940-1960年代を中心に

本研究では、日中戦争・アジア太平洋戦争の同時代に中国での戦争を描いた日本語のテクストを取り上げ、当時の書き手たちが現代進行形の戦争をどう表現したか、幅広く検討した。また、戦後の文学や映画において、中国の戦場における日本軍の加害の記憶がどう表現されたかについて、精しい調査と分析を行った。上記の研究の成果は、単著『プロパガンダの文学 日中戦争下の表現者たち』(共和国、2018年5月刊行)などの成果として公表した。今回の研究を通じて、20世紀の戦争をテーマとする国際的・学際的な共同研究への手応えを掴むとともに、文学研究の側から戦争とメディアの関係を問うことの意義を確認することができた。

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五味渕 典嗣文学部准教授H27-H29
作家の計量分類による日本近現代文学史の構築

作家の計量分類による日本近現代文学史の構築

本研究の目的は、日本の近現代作家の伝記的事実に関する情報等をもとに、その属性を計量的に分析・分類し、現在通行する文学史を検証することである。現段階では、文学史の検証を行うまでには至っていないが、この3年間で、日本の近現代において小説分野で活躍した84名の作家について1,847の属性項目を収録したデータベースを作成することができた。例えば、作家の活躍について数値で示した項目群などは、文学史の分析を行うに当たっては、これまでにない有用なデータである。

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高橋 寿美子人間生活文化研究所助手H27-H29
リアルオプション・アプローチを用いたプロスポーツチームの価値評価手法の開発

リアルオプション・アプローチを用いたプロスポーツチームの価値評価手法の開発

スポーツチームの価値評価は,一般の事業会社に比較するとはるかに難しい.それが困難性を有する最大の原因は,スポーツチームの価値が,移籍やフリーエージェントに関して選手あるいはチームが有する選択権,上位大会への進出の有無による年間試合数の変動,上位リーグへの昇格や下位リーグへの降格の可能性等に依存するからである.このような認識の下,本研究では,代表的な価値評価手法であるDCF法によっては評価が難しい上記の諸要素の価値を,オプション価格モデルを用いて算定する方法を開発した。

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寺石 雅英キャリア教育センター教授H27-H29
ポスト3・11と原発事故被災者の「難民」化の実相

ポスト3・11と原発事故被災者の「難民」化の実相

福島第一原発の事故による避難者は国策としての復興施策と展望なき自治体存続と一体化した早期帰還政策とによって「戻る住民」、「待つ住民」、「戻らない住民」に分断されている。そして特に「待つ住民」と「戻らない住民」は苦境においやられ、「難民」化しつつある。その様相は、家族離散する者、失業する者/貧困化する者、自殺する者など、多岐にわたり、総じて生活困難に陥る者が続出している。しかし国や県、そして当該自治体の復興施策はハード中心の「大文字の復興」となっており、日常生活への復帰をめざす「小文字の復興」とは乖離している。しかしそれにもかかわらず、上記の「難民化」をとらえかえす動きも立ちあらわれている。

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吉原 直樹社会情報学部教授H28-H29
若手研究(B)ハワイ語ラジオ番組の相互行為分析

ハワイ語ラジオ番組の相互行為分析

本研究はアメリカ合衆国ハワイ州におけるラジオ番組カ・レオ・ハワイを分析対象としている。1970~80年代にホノルルで放送された400を越える番組の録音に基づき、番組の全体像を描き出すことを目指した。カ・レオ・ハワイは、ハワイ先住民の言語文化の記録を通じてコミュニティの形成と維持を行うメディア実践であった。

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古川 敏明文学部講師H25-H28
少年犯罪の社会問題化とその収束に関する社会学的研究

少年犯罪の社会問題化とその収束に関する社会学的研究

少年犯罪の社会問題化は、1997年の神戸・連続児童殺傷事件報道において、事件を個人にも社会にも問題を還元せずに「考え続けよう」とした新聞各社のジャーナリズムの良心が、逆に少年犯罪を過大に不可解な問題とさせてしまった「意図せざる結果」に端を発していると考えられた。また、社会問題化の収束は、ニュース・フレームそれ自体の変化というよりはそれが変わらなかったことによるニュース・バリューの低下および東日本大震災の発生に伴う社会面(ニュース時間)の占拠という、各個の事件に外在した原因によるものではないかと考えられた。

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牧野 智和人間関係学部講師H26-H28
「語り」の蓄積からコミュニティの物語を出力する地域デジタルアーカイブの構築と運用

「語り」の蓄積からコミュニティの物語を出力する地域デジタルアーカイブの構築と運用

本研究は、地域コミュニティでの「語り」に着目したアーカイブを構築することにより、地域における情報技術の新しいモデルを研究するものであった。具体的には、地域住民が多数出演した宮城県亘理郡山元町「りんごラジオ」の放送記録をデジタル化し、これを中心としたアーカイブシステムを構築、復興記録の地域における活用について調査した。それらの結果から、東日本大震災後に運営が長期化した臨時災害放送局のメディアとしての位置づけなどについて考察した。

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松本 早野香社会情報学部講師H27-H29
民族誌的アプローチにもとづく難民の定住プロセスの国際比較研究

民族誌的アプローチにもとづく難民の定住プロセスの国際比較研究

本研究では、タイのミャンマー(ビルマ)難民キャンプからフィンランドとオーストラリアに再定住した難民(カレンニー難民)の定住プロセスを民族誌的に明らかにする。移住第一世代の定住状況を明らかにするため、就労状況、難民のネットワーク、自助活動、民族的アイデンティティのあり方、難民経験の活用といった点に着目した。日本とアメリカが受け入れた難民の状況とも比較し、2005年以降に世界各地に再定住していった難民の定住状況が明らかになった。

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久保 忠行比較文化学部講師H27-H29
台湾ニューシネマとそれ以降の台湾映画における「日本時代」表象研究

台湾ニューシネマとそれ以降の台湾映画における「日本時代」表象研究

本研究では、現代台湾映画における「日本時代(日本統治時代)」の表象について分析した。その結果、『海角七号』が公開された2008年をメルクマールとして、それ以降の現代台湾エンターテイメント映画に描かれる「日本時代」は、日本植民地統治への批判や評価というよりも、中国との緊張関係に直面している21世紀の台湾において、台湾の歴史物語の一部の創造および再記憶化のための素材として機能していることが明らかになった。

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赤松(佐藤) 美和子比較文化学部准教授H27-H30
視線随伴パラダイムを用いたAgency調整システムの発達過程の解明

視線随伴パラダイムを用いたAgency調整システムの発達過程の解明

本研究では、我々がこれまで行為主体感の発達評価のために用いてきた視線随伴課題を応用し、社会的文脈に応じた視線の合目的操作を8か月児が行えるかどうかについて、3つの実験を通じて検討した。具体的には、社会的な相互作用(攻撃行動)が観察されるアニメーションを見せ、自分の視線の操作が悪役キャラクターを懲らしめられるような文脈にすると、乳児は悪役を懲らしめるような目の動きを示した。しかし、視線の操作が悪役キャラクターをこらしめられないような文脈にすると、視線の操作が変化することが分かった。

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宮崎 美智子社会情報学部講師H28-H30
里親養育における里親と実子の意識とその支援のあり方

里親養育における里親と実子の意識とその支援のあり方

平成30年度の計画と実績の概要は以下のとおりである。

  1. インタビュー項目の作成・協力者の選定:国内のインタビュー調査のインタビュー項目、大学内の倫理審査の認定、協力者の選定を行った。インタビュー項目の作成は、里親・実子それぞれのインタビュー項目を作成した。また、大学内の倫理審査では、科学研究費の執行・倫理に沿った審査を行っている。
  2. インタビュー調査の実施:里親と実子へのインタビュー調査の実施の計画を行ったが、平成30年度はプレ調査を含む里親への4件の調査を行った。プレ調査では、里親家庭の実子にも面会することができ、年齢が計画よりも低いためインタビューは行わなかったが実際の里親家庭で考えたことなどを聞き取ることができた。インタビューでは実子と委託児童の養育においての課題や実子支援に関する内容を聞き取ることができた。
  3. 平成28年に行った海外視察オーストラリアのフォスタリング機関(里親支援機関)への調査報告についてまとめ、実子支援についてのプログラムの内容や現状の実子支援についてまとめた。このまとめに関しては2019年7月に発行予定の論文に掲載する予定である。
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山本 真知子人間関係学部講師H28-H31
研究活動スタート支援貧困世帯の若者の移行と家族に関する研究

貧困世帯の若者の移行と家族に関する研究

本研究では、①生活保護世帯の若者がいかに学校から仕事へと移行するのか、②移行する前と後で、彼らと家族との関係性はどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。彼らの移行には、家庭生活での彼らの役割や家族の状況、生育環境が影響しており、次の移行へ移ったとしても彼らの家族への愛着は変わらないことが分かった。しかし、経済的負担によって、家族関係が変化することも示唆された。また学校から仕事へと移行するためには家族以外の第三者との関係が築けているかどうかがひとつの分岐点となっていることが見出された。

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林 明子家政学部講師H28-H29
特別研究員奨励費DV被害者支援と民間シェルターにおける米・加・日の比較研究

DV被害者支援と民間シェルターにおける米・加・日の比較研究

本研究では、アメリカ(米)・カナダ(加)・日本におけるDV被害者支援に携わる民間シェルターの現状と課題について比較検討を行ない、実効性のあるDV被害者支援を検討することを目的に研究を遂行してきた。平成29年度は、米加の現地実態調査を実施し、研究成果の一部を学会(国際学会2回、国内2回)等で報告した。米ロサンゼルス調査では、民間シェルター支援者、加トロント調査では、民間女性NGOの代表・支援者へ聞き取り調査を行った。また、これまでの
日本の民間シェルター及び民間女性NGO、行政、関係機関への聞き取り調査を基に考察を行なった。
米加では、女性への支援は民間女性NGOの活動からスタートしたが、現在では、州政府、関係機関、民間女性NGO、民間シェルター、医療関係者等多様な主体が連携をとりネットワークを構築し支援を行っている。一方、本調査から明らかになった米加の団体に共通する課題は、外国籍や複合的な困難を抱えるDV被害者への対応や女性の自立支援の難しさに直面していることである。日本では、DV防止法施行以降、DV被害者支援制度は整備されつつある。しかし、公的機関による支援がDV被害者の一時保護以降の継続的なアフターケアを含んでいない等未だに課題は多い。このような中、民間シェルターは先駆的に支援を行ってきた。本調査を通して明らかになった論点は、第1に、運営上の問題や行政による財政支援の不足は、日本の民間シェルターに際立った特徴であることである。有償ボランティアを余儀なくされている支援者の待遇の改善は喫緊の課題である。第2に、DV被害者支援において不可欠とされる関係機関の連携は、日本では二極化しており、関係機関間でも温度差がみられた。一方、米加ではDV被害者を中心とした支援と連携体制が整備されつつある。米加における法制度と支援との関連、官民の連携等については引き続き調査を継続し検討する。

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小川 真理子社会情報学部特別研究員(PD)H28-H30
研究成果公開促進費(学術図書)On Extration from Subjects:An Excorporation Account江頭 浩樹比較文化学部准教授H28

短期大学部

※研究課題名をクリックすると課題詳細がご覧いただけます。

研究種目等研究課題名研究代表者所属職名研究期間
(年度)
実施状況報告書・実績報告書研究成果報告書
基盤研究(C)「量産衣料のデジタル仮縫い工房」開発のためのベーシックパターンモデルの検討

自律的な積み上げ学習につながる授業内・外学習時のメタ認識出現条件

本研究は,学習者自身の学習に対するメタ認識が活性化される条件を探ることにある。授業で目標に向かって積み上げていく学習について,また,授業外で日々機械的に積み上げていく学習において,学習者自身が自律的に学習を活性化させていく条件を検討するものである。学習プロセスを観察し,学習者の認識を観察することで,学習におけるメタ認識が意識される条件を特定することを目指している。その最終目的は,どのような学習環境を教室で教師が作るのが,学習者の支援となるのかを確認することにある。また,その後の自律的学習につなぐ観点を探ることにある。研究方法としては,期間,目標,内容,教員の異なるいくつかの授業の流れと,授業とは関係なく,学習者が授業外で自律的に進める学習プロセスと意識を観察し,授業参加者,授業外学習継続者の意識を分析することで,学習者のメタ認識条件を探ろうと考えている。具体的には次のように実施する。
授業内の学生の関心点を観察するため,授業後に,授業課題に対して関心を覚えた点とそれに対してどのような行動をとったかを記述に残すように指示し,その記述内に見られる学生の認識が,メタ認識に関わるものか,個人的関心のものか,個人的に見たテーマに関連するものかをラベル付けして,分析する準備とする。また,学期の開始時,途中,終了時に内省した授業への個々人の参加状況を,学期末に並べて比較し,学習者の意識,メタ認識に関する言及回数,場面,対象を調べ,それらに関する考えや意識を質的に分析する準備とする。授業外の学生の関心点,継続の動機を確認するために,教職者に,授業外で授業とは関係ないが必要だと考える学習を続ける動機と,継続,結果に関する意識を調べる。
これらの調査の結果を総合して,自律学習のための教師の支援のポイントを探る。

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土肥 麻佐子家政科准教授H27-H29

全国学校別 採択件数・配分額一覧表

※文部科学省ホームページ「 科学研究費助成金 配分結果」にて公表された資料を基に本学が作成しました。

大学

短期大学部