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学長スピーチ集

2023年度

卒業式式辞

本日、大妻女子大学を卒業される家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部、短期大学部、そして大学院の皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。大妻女子大学の教職員一同とともに、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。また、長い間、お嬢様方の本学での勉学をお支えいただきましたご家族や関係者の皆さまにも、お礼とお祝いを申し上げます。コロナ禍もようやく終息の様相をみせるなか、今年度、ようやく卒業生一同が会して、卒業式を開催することができるようになりました。

コロナ禍の4年間、皆さんの学生生活は、さまざまの困難に見舞われてきました。対面と遠隔講義の組み合わせ継続、留学派遣・受入れの中止・延期、クラブ活動・課外活動の制限などの措置を取らざるを得ませんでした。何よりも、大学で、友達とおしゃべりをしたり、議論をしたりして、楽しい時間を過ごせなかったこと、それが在学中多くの期間続いたことに、とても残念な思いを持ったと思います。こうした困難が続いた中で、皆さんの頑張りにより、無事単位を修得して卒業を迎えられたことを改めて喜びたいと思います。これから皆さんは、新しい環境で新しい生活をスタートさせることになります。新しい仕事を覚え、新しい人間関係をつくっていくことになります。

皆さんがこれから出ていく日本社会のなかで、女性をめぐる環境は、現在、大きな変化の只中にあります。1999年に「男女共同参画基本法」が施行され、2016年には「女性活躍推進法」が施行されるなど、21世紀に入ってから、女性の社会的地位や役割に対する認識は、大きく前進しました。「男女共同参画基本法」は、「男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること」が前提であると宣言しています。また、「女性活躍推進法」は、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図ること」をその課題に掲げています。

さらに、2023年6月に決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023」では、「様々なライフイベントに当たりキャリア形成との二者択一を迫られるのは多くが女性であり、その背景には、長時間労働を中心とした労働慣行や女性への家事・育児等の無償労働時間の偏り、それらの根底にある固定的な性別役割分担意識など、構造的な課題が存在する。 こうした構造的な課題の解消に向けては、従来よりも踏み込んだ施策を講じることが不可欠」として、女性の所得向上・経済的自立の達成、性犯罪・ハラスメント防止など女性が尊厳を持って生きられる社会の実現、政治・経済・社会・科学技術・国際各分野での女性登用目標の達成を掲げています。

女性に対する期待は、これまでよりもずっと大きくなっているということができます。しかし、法律や政策が提起されれば、それが直ちに実現されるかといえば、そうとは限りません。残念なことですが、日本のジェンダー平等は諸外国に比べて大きく立ち遅れています。世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数、その2023年の日本の順位は146か国中125位でした。2006年が80位でしたから、近年、その順位は下がり続けているといえます。

順位低下の大きな理由は、政治分野・経済分野での女性の役割の低さです。例えば、衆議院議員の女性比率は11%、閣僚の女性比率は9%、過去50年間の官庁の長の女性在任比率は1%未満で、新興工業国や開発途上国と比べても、その比率の低さは際立っています。経済分野も同様で、就業者に占める女性の割合は諸外国とほぼ同様な水準であるにもかかわらず、管理的職業従事者に占める女性の割合は14.8%、諸外国の30%以上と比較すると大幅に低い水準にとどまっています。男女の賃金格差も62%と、他の諸外国に比して大きく、同一労働・同一賃金の原則が達成されていません。こうした状況を克服していくことが緊急を求められています。女性が働きやすく生きやすい社会に変えていくことが必要です。

皆さんは、これからそうした日本社会に出ていくことになります。社会に出ていくと、仕事の世界は、さまざまな事柄を皆さんに要請してきます。その要請は、社会の制度や仕組みからくる場合もあります。あるいは個々の企業の要請からくる場合もあります。歴史的な慣習や地域的特性からくる場合もあるでしょう。正しく適切な要請もあれば、おかしな不適切な要請もあるかもしれません。大学で皆さんが学んできたことは、それぞれの学部・学科・専攻によってさまざまですが、それぞれの領域のグラマー、ロジック、レトリックは共通です。グラマーとは約束事、ロジックとは論理的・理性的に考えること、レトリックとはそれを相手に伝える方法のことです。大学でのこれまでの勉強は、そういった要請のどれが適切でどれが不適切かを判断することに必ず役立ちます。論理的・理性的に考えることを忘れないでください。そのことは、社会へのまなざし、社会への関心を持ち続けることによって達成できます。

もうひとつ、本学が掲げてきた「女性の自立」の精神を、維持し続けてほしいと思います。「女性の自立」は、まずは、性差による差別を克服するような自立といえるでしょうが、目指してほしいのはその先です。「女性の自立」が「人間としての自立」であること、自己の尊厳を守る形での自立であること、すなわち「経済的自立」は、あくまで「精神的自立」を前提としたものであること、こうした自立を皆さんに追求していって欲しいのです。

皆さんは、これからこうした変化の只中にある社会に乗り出していくことになります。自分の未来を自分自身で切り開いていく力を身につけていくことが、これまで以上に求められています。

これから、皆さんが社会に旅立つと、うれしいこと、楽しいこととともに、悲しいことやつらいことが、きっとおきてきます。そうしたときは、いつでも大学を訪ねてください。皆さんの母校は、皆さんの悩みや願いを、いつでも聞き入れ、少しでも力になれるよう努力します。

皆さんが、今後、多様な場で活躍されることを心から期待して、卒業のお祝いの言葉としたいと思います。
ご卒業おめでとうございます。


2024年3月23日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

入学式式辞

新入生の皆さん入学おめでとうございます。大妻女子大学の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。ご列席の御父母、ご家族の皆さまにも、お嬢様のご入学、心よりお慶び申し上げます。

大妻女子大学は、今から100年以上前の1908年、明治41年、大妻コタカによって、裁縫・手芸の私塾として呱々(ここ)の声をあげました。それから115年、現在では、本学は、家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部の5学部、短期大学部、大学院人間文化研究科を抱える総合大学となっています。

コタカが私塾を始めた115年前とは、一体どのような時代だったのでしょうか。当時の日本は、日清戦争、日露戦争を経て、資本主義国として確立していくさなかにありました。日露戦争は、当時の日本の国力から言ってやや無理な戦争でもあったため、日本は日露戦後不況と呼ばれる不況に苦しんでいました。にもかかわらず、あるいは、そうであるからこそ、コタカは、女性が職業を身につけ、家族や社会を支える一員となることの大事さを強く認識したといえるでしょう。

それまでの女子教育機関は、いわばエリートによるエリートのための教育機関でした。それに対し、コタカは、不況の中で苦しんでいる普通の家庭、何ら特別でない普通の女性が、社会の中できちんとした生活を営むにはどうしたらよいか、そして普通の女性が社会的に自立するとはどういうことか、そうしたことを考え続けて、大妻技芸学校の設立を決意したのです。本学は、創立以来「女性の自立のための女子一貫教育」を建学の精神としていますが、その「自立」の根源には、こうした若き日の大妻コタカの独自の考え方と強い意思があったということができるでしょう。

2015年に制定された女性活躍推進法は、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図ること」を、その課題に掲げました。2020年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」でも、「あらゆる分野における女性の参画拡大」を最初に掲げ、とくに政策・雇用・地域・学術の分野における女性のさらなる参画を重視しています。さらに、2022年6月に決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2022」では、改めて女性の経済的自立を第一に掲げ、女性が尊厳と誇りをもって生きられる社会の実現を第二に掲げています。

以上のように、コタカが生きてきた時代と比べると、女性が社会で活躍する環境は、法制度的には大きく進んだということができます。しかし、実際の状況は順調に進んでいるとは必ずしもいえません。例えば、世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数、その2022年の日本の順位は146か国中116位でした。また、国内の労働市場ではこの10年間、派遣や契約といった非正規労働者が急激に増加し、現在では5,800万人の総就業者中2,100万人に達し、その多くが女性です。日本のジェンダー平等は諸外国に比べて大きく立ち遅れているといわねばなりません。

目を外に向けてみれば、ウクライナでは多くの女性や子どもたちが国外への避難を余儀なくされ、就業や学習の機会を奪われています。ISやタリバンなどの統治地域では女性が学校から締め出され、修学の機会さえ奪われています。「女性の自立」の第一歩は、何よりも学ぶことです。自分で考え、自分で決定できるようにすること、主体的に物事をとらえられるような豊かな人格を形成することが、「女性の自立」のための条件であり、そのことは「学ぶこと」によってはじめて与えられるのです。

私たちは、皆さんに、これからの大学生活を意義あるものにしてもらいたいと心より願っています。そして、意義ある大学生活を送っていくために、いくつかのことを皆さんに期待したいと思います。

ひとつは、主体的にものごとを考えてほしいということです。高校までと違って、大学での勉強は、ものごとを知る、という以前に、どのように物事を考えるかという、考え方を学ぶ場という特徴があります。正解がないことを勉強するのが、大学での勉強だということもできます。論語に、「思うて学ばざれば則ち殆(あや)うし、学んで思わざれば則ち罔(くら)し」という言葉があります。あれこれ考えるだけで、きちんと知識を蓄えなければ正しい判断はできない、知識を蓄えてもどのように考えるかを知っていないと正しい結論を得ることはできない、という意味です。ぜひ在学中に、きちんと知識を蓄え、きちんと考えて判断できるようになってほしいと思います。

ふたつは、これからの勉強を社会の動きと関連させながら進めていってほしいということです。この3年間、世界は、新型コロナウイルス感染症covid-19という厄災のただなかにありました。コロナ感染症が世界的なものであったため、国境が封鎖されたり、出入国が制限されたりしました。多くの都市でロックダウンが行われ、劇場、ホール、学校など多くの人々が集まる場所が閉鎖され、飲食店などの営業が制限されました。それらは、コロナ禍を収束させるために必要とされる措置でしたが、そのことは同時にさまざまの社会活動、経済活動を制限させることになります。この両者の兼ね合いをどのようにとっていくかが問われることになります。

その判断は誰が行うのでしょうか。今回の蔓延(まんえん)防止措置、緊急事態宣言などに見られるように、一義的には、専門家、政策担当者がその判断を行うことになります。では、その判断を、専門家、政策担当者に完全に任せてしまってよいのでしょうか。私たちはただユーザーとして科学技術を習得していればよいというものではなく、そのような科学技術は果たして自分たちにとって本当によいものなのか、そのような技術を使うことが倫理的に正しい選択であるのかなどまで、私たち自身が判断をせまられるようになっています。学問を進めることによって、皆さんは、判断の基礎となるリテラシーを手にすることができます。卒業するまでに、皆さんは、それぞれ自分が勉強していく領域のグラマー、ロジック、レトリックを身につけていってほしいと思います。

みっつは、大学生活のなかで、先輩、同輩、後輩とよい関係をつくってほしい、ということです。さきほど、「自立」とは何かということをお話ししました。「精神的自立」は、まず個の自立であり、個の確立です。しかし、このことは、自分さえよければいいということを意味するものでは全くありません。「他者との関係のなかで、自己を見つめ直し、相互の力を活かし合い、自己実現できる人間として自立すること」、これこそが本来の自立です。種々の人間関係のなかで、自分の位置をきちんと確立してほしい、そして、ひとに共感する能力を培ってほしい。ひとの喜びを喜びとし、ひとの悲しみを悲しみとし、ひとの怒りを怒りとできる人になってほしい。そのように私たちは考えています。

フランスのレジスタンス詩人ルイ・アラゴンの「ストラスブール大学の歌」の中に、「教えるとは希望を語ること 学ぶとは誠実を胸にきざむこと」という一節があります。フランスの名門校であったストラスブール大学は、ドイツとの国境近くのアルザス地方にありましたが、ナチスの弾圧と戦火から逃れるために、一時フランス中部のクレルモン=フェランに移転しました。しかし、疎開先のクレルモン=フェランで、親衛隊によってストラスブール大学の教員と学生約100名が逮捕され、アウシュヴィッツとブーヘンヴァルトの強制収容所に送還されたのです。レジスタンスに参加していたアラゴンは、このことに強く抗議し、彼らの死を悼み、抵抗を呼びかけたのです。

大学での勉強は何よりも「希望を語る」ことでありたいと考えます。「公正な社会」を実現するために「誠実」であることを願っています。大学で勉強することによって、皆さんには、これまで見えなかった世界が新しく見えるようになってきます。また、見えるようになってほしいと私たちは考えています。

改めて新入生の入学をお祝いし、皆さんのこれからの大学生活が、実り多いものとなることを祈念して、私の式辞といたします。皆さん、本日はまことにおめでとうございます。

2023年4月
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

2022年度

卒業式式辞

本日、大妻女子大学を卒業される皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。大妻女子大学の教職員一同とともに、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。また、長い間、お嬢様方の本学での勉学をお支えいただきましたご家族や関係者の皆さまにも、お礼とお祝いを申し上げます。コロナ禍第8波もようやく終息の様相をみせていますが、コロナ感染症の5類への移行が連休明けの5月8日と決定されているため、今年も、卒業式を2回に分けて開催することといたしました。

コロナ禍の3年間、皆さんの学生生活は、さまざまの困難に見舞われてきました。コロナ感染症の波が何度か訪れるたびに、対面と遠隔講義の組み合わせ継続、留学派遣・受入れの中止・延期、宿泊を伴う講義・演習の中止、クラブ活動・課外活動の制限などの措置を取らざるをえませんでした。就職活動にも多くの支障が出ました。昨年度に比べ、今年度は一定の改善が見られたとはいえ、就職活動は昨年同様長期化し、就活に多くの時間を費やさざるを得ませんでした。

何よりも、大学で、友達とおしゃべりをしたり、議論をしたりして、楽しい時間を過ごせなかったこと、それが3年間も続いたことに、とても残念な思いを持ったと思います。対面で人と接する活動は、人間の生活にとって不可欠のものです。そして、ともに考え、議論し、知を創造することは、教育機関にとって不可欠です。とはいえ、ICT環境が社会のなかで整備され、今後、海外や国内各地ともネットを通じた業務や交流が急速に広まっていくと予想される現在、この3年間のオンライン・オンデマンドの遠隔講義の経験は、皆さんのこれからの生活にプラスになっていくことを確信しています。

こうした困難が続いた中で、皆さんの頑張りにより、無事単位を修得して卒業を迎えられたことを改めて喜びたいと思います。これから皆さんは、新しい環境で新しい生活をスタートさせることになります。新しい環境で、新しい仕事を覚え、新しい人間関係をつくっていくことになります。

女性の就業をめぐる環境は、今大きな変化を迎えています。国内的には、日本の女性就業構造の特徴とされたⅯ型雇用はほぼ解消し、一般職が急縮するとともに、派遣や契約といった非正規雇用が急膨張しています。外に目を向ければ、グローバル化、AI化、SDGs、STEM重視などが進行しています。これまで続いているコロナ禍は、こうした女性の仕事をめぐる状況をどのような方向に換えていくでしょうか。その見通しは、現在の時点では必ずしもはっきりしていません。コロナ禍に始まったテレワークは、コロナ禍が収束しても一定程度は続くでしょう。一般職の縮小は加速するでしょうし、派遣や契約といった非正規就業は、今後も増えていくかもしれません、あるいは減るかもしれません。いずれにせよ、女性が働きやすく生きやすい社会に変えていくことが必要です。

その際に重要なことは、まず、第1に、社会へのまなざし、社会への関心を持ち続けることです。残念ながら、日本のジェンダー平等は諸外国に比べ大きく立ち遅れています。世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数、その2022年の日本の順位は146カ国中116位でした。皆さんはこれからそうした日本社会に出ていくことになります。社会に出ていくと、仕事の世界は、さまざまな事柄を皆さんに要請してきます。その要請は、社会の制度や仕組みからくる場合もあります。あるいは個々の企業の要請からくる場合もあります。歴史的な慣習や地域的特性からくる場合もあるでしょう。正しく適切な要請もあれば、おかしな不適切な要請もあるかもしれません。大学で皆さんが学んできたことは、それぞれの学問領域のグラマー、ロジック、レトリックです。グラマーとは約束事、ロジックとは論理的・理性的に考えること、レトリックとはそれを相手に伝える方法のことです。大学でのこれまでの勉強は、そういった要請のどれが適切でどれが不適切かを判断することに必ず役立ちます。論理的・理性的に考えることを忘れないでください。

第2は、本学が掲げてきた「女性の自立」の精神を、維持し続けてほしいということです。「女性の自立」は、まずは、性差による差別を克服するような自立といえるでしょうが、目指してほしいのはその先です。「女性の自立」が「人間としての自立」であること、自己の尊厳を守る形での自立であること、すなわち「経済的自立」は、あくまで「精神的自立」を前提としたものであること、こうした自立を皆さんに追求していってほしいのです。

女性に対する期待は、これまでよりもずっと大きくなっています。2015年に制定された「女性活躍推進法」は、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図ること」を、その課題に掲げています。2020年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」でも、「あらゆる分野における女性の参画拡大」を最初に掲げ、とくに政策・雇用・地域・学術の分野における女性のさらなる参画を重視しています。さらに、2022年6月に決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2022」では、改めて女性の経済的自立を第1に掲げ、女性が尊厳と誇りをもって生きられる社会の実現を第2に掲げています。皆さんは、これからこうした変化の只中にある社会に乗り出していくことになります。自分の未来を自分自身で切り開いていく力を身につけていくことが、これまで以上に求められています。

これから、皆さんが社会に旅立つと、うれしいこと、楽しいこととともに、悲しいことやつらいことが、きっと起きてきます。そうしたときは、いつでも大学を訪ねてください。皆さんの母校は、皆さんの悩みや願いを、いつでも聞き入れ、少しでも力になれるよう努力します。

皆さんが、今後、多様な場で活躍されることを心から期待して、卒業のお祝いの言葉としたいと思います。
ご卒業おめでとうございます。

2023年3月25日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

入学式式辞

新入生の皆さん入学おめでとうございます。大妻女子大学の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。ご列席の御父母、ご家族の皆さまにも、お嬢様のご入学、心よりお慶び申し上げます。

大妻女子大学は、今から100年以上前の1908年、明治41年、大妻コタカによって、裁縫・手芸の私塾として呱々(ここ)の声をあげました。それから114年、現在では、本学は、家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部の5学部、短期大学部、大学院人間文化研究科を抱える総合大学となっています。

コタカが私塾を始めた114年前とは、一体どのような時代だったのでしょうか。当時の日本は、日清戦争、日露戦争を経て、資本主義国として確立していくさなかにありました。日露戦争は、日本の実力から言ってやや無理な戦争でもあったため、日本は日露戦後不況と呼ばれる不況に苦しんでいました。にもかかわらず、あるいは、そうであるからこそ、コタカは、女性が職業を身に付け、家族や社会を支える一員となることの大事さを強く認識したといえるでしょう。

それまでの女子教育機関は、いわばエリートによるエリートのための教育機関でした。それに対し、コタカは、不況の中で苦しんでいる普通の家庭、何ら特別でない普通の女性が、社会の中できちんとした生活を営むにはどうしたらよいか、そして普通の女性が社会的に自立するとはどういうことか、そうしたことを考え続けて、大妻技芸学校の設立を決意したのです。本学は、創立以来「女性の自立のための女子一貫教育」を建学の精神としていますが、その「自立」の根源には、こうした若き日の大妻コタカの独自の考え方と強い意思があったということができるでしょう。

2015年に制定された女性活躍推進法は、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図ること」を、その課題に掲げました。今年4月には改正女性活躍推進法が施行され、この改正に基づいて、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」、「職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備」の2点について、企業が情報公開するとともに、行動計画を策定することが義務付けられました。また、育児・介護休業法の改正により、同じく今年4月から男性の育児休業取得の促進も掲げられるようになりました。

コタカが生きてきた時代と比べると、女性が社会で活躍する環境は、法制度的には大きく進んだということができます。法制度という点では、今年、もう一つ大きな改正がありました。それは、改正民法の施行によって、今年4月から、成人年齢が18歳に引き下げられたことです。皆さんは、これから親の同意がなくても、スマホの契約、クレジットカードの契約、車やバイクの購入やそれに伴うローン契約などが一人でできるようになります。また、自分の住む場所や進学や就職の進路などを自分で決めることもできるようにもなります。しかし、「成人なのだから全部自分で決めなさい」ということは簡単ですが、社会経験も乏しく、契約に関する知識もほとんどない皆さんが、自分だけの判断で物事を決めるのは大変に危ういことです。それができるようになるためには、学習して正しい知識を身に付けること、正しい判断力を身に付けることが必要です。

「自立する」とは、こうしたことすべてを含んでいます。成人としてのふるまいができるようになるために大事なことは、まず、「自己を正しく認識する」ことです。そのためには、「自ら学ぶ」こと、「精神的な自立」を実現することが大切です。「精神的自立」は「経済的自立」や「社会的自立」の前提です。自分で考え、自分で決定できるようにすること、主体的に物事をとらえられるような豊かな人格を形成することが、「女性の自立」のための条件なのです。

いうまでもなく、本学は実技実学も重視しています。実技実学は、社会において専門職業人となっていくためには不可欠なものです。しかし、ここでも、単純に、技術や技能を教える、知識を付与するのではなく、広い意味での「実践知」を身に付けることが重要です。「実践知」とは、現実の社会に直面した時に、それまでのやり方に拘泥するのではなく、あるいは、頭の中の思い込みだけで対応しようとするのでもなく、現実を的確に把握し、弾力的かつ創造的に物事に対処できる力のことです。

本学の教育理念は以上のようなものですが、私たちは、皆さんに、これからの大学生活を意義あるものにしてもらいたいと心より願っています。そして、意義ある大学生活を送っていくために、いくつかのことを皆さんに期待したいと思います。

ひとつは、主体的にものごとを考えて欲しいということです。高校までと違って、大学での勉強は、ものごとを知る、という以前に、どのように物事を考えるかという、考え方を学ぶ場という特徴があります。正解がないことを勉強するのが、大学での勉強だということもできます。論語に、「思うて学ばざれば則ち殆(あや)うし、学んで思わざれば則ち罔(くら)し」という言葉があります。あれこれ考えるだけで、きちんと知識を蓄えなければ正しい判断はできない、知識を蓄えてもどのように考えるかを知っていないと正しい結論を得ることはできない、という意味です。

ふたつは、これからの勉強を社会の動きと関連させながら進めていって欲しいということです。この2年間、世界は、新型コロナウイルス感染症covid-19という厄災のただなかにありました。そしてその厄災は現在も収束していません。コロナ感染症が世界的なものであったため、国境が封鎖されたり、出入国が制限されたりしました。多くの都市でロックダウンが行われ、劇場、ホール、学校など多くの人々が集まる場所が閉鎖され、飲食店などの営業が制限されました。それらは、コロナ禍を収束させるために必要とされる措置でしたが、そのことは同時にさまざまの社会活動、経済活動を制限させることになります。この両者の兼ね合いをどのようにとっていくかが問われることになります。

その判断は誰が行うのでしょうか。今回の蔓延防止措置、緊急事態宣言などに見られるように、一義的には、専門家、政策担当者がその判断を行うことになります。では、その判断を、専門家、政策担当者に完全に任せてしまってよいのでしょうか。科学が高度に発展してくると、それぞれの科学は、それぞれのグラマー、ロジック、レトリックによって進められることになります。非専門家が持つリテラシー、日常生活の基礎にあるグラマー、ロジック、レトリックは、科学のそれぞれの専門領域と共通言語を持てなくなります。とはいうものの、非専門家、つまり一般の人々は、その適否について判断することが要請されるようになっています。なぜかといえば、現代の科学技術と私たちの生活との関係は、以前とは異なるものになっているからです。科学技術の発展は、私たちの生活に正の影響だけでなく、さまざまな負の影響をももたらしており、科学技術の発展が人類を幸せにするものだとは、もはやナイーブに信じることはできなくなっているのが現代です。

私たちはただユーザーとして科学技術を習得していればよいというものではなく、そのような科学技術は果たして自分たちにとって本当によいものなのか、そのような技術を使うことが倫理的に正しい選択であるのかなどまで、私たち自身が判断をせまられるようになっています。科学者の社会的責任とはなんなのかという問題、市民と科学との健全な関係とはどんなものかという問題を、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は改めて提示しています。

学問は、どのような領域でも、そのそれぞれに、グラマー、ロジック、レトリックがあります。グラマーとは考える枠組み、約束事、ロジックとは論理的・理性的な思考法、レトリックとはそれを相手に伝える方法のことです。日本語のグラマー、ロジック、レトリック、英語のグラマー、ロジック、レトリックがあるように、家政学にも、文学にも、経済学にも、社会学にも、心理学にも、それぞれ固有のグラマー、ロジック、レトリックがあります。卒業するまでに、ぜひ、このグラマー、ロジック、レトリックを身に着けてほしいと思います。

みっつは、大学生活のなかで、先輩、同輩、後輩とよい関係をつくって欲しい、ということです。さきほど、「自立」とは何かということをお話ししました。「精神的自立」は、まず個の自立であり、個の確立です。しかし、このことは、自分さえよければいいということを意味するものでは全くありません。「他者との関係のなかで、自己を見つめ直し、相互の力を活かし合い、自己実現できる人間として自立すること」、これこそが本来の自立です。種々の人間関係のなかで、自分の位置をきちんと確立して欲しい、そして、ひとに共感する能力を培って欲しい。ひとの喜びを喜びとし、ひとの悲しみを悲しみとし、ひとの怒りを怒りとできる人になって欲しい。そのように私たちは考えています。

大学で勉強することによって、皆さんには、これまで見えなかった世界が新しく見えるようになってきます。また、見えるようになって欲しいと私たちは考えています。改めて新入生の入学をお祝いし、皆さんのこれからの大学生活が、実り多いものとなることを祈念して、私の式辞といたします。皆さん、本日はまことにおめでとうございます。


2022年4月
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

2021年度

卒業式式辞

本日、大妻女子大学を卒業される皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。大妻女子大学の教職員一同とともに、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。また、長い間、お嬢様方の本学での勉学をお支えいただきましたご家族や関係者の皆様にも、お礼とお祝いを申し上げます。コロナ禍第6波がなかなか収束せず、蔓延防止等重点措置が延長されている状況のもと、昨年同様、今年も卒業式を2回に分けて開催することといたしました。

コロナ禍の2年間、皆さんの学生生活は、さまざまの困難に見舞われてきました。2020年度は、入学式の中止に始まり、緊急事態宣言の発出に伴う前期開講の延期、オンライン講義への全面移行、クラブ活動・課外活動の中止、留学派遣・受入れの中止・延期などを実施せざるを得ませんでした。コロナ感染症の波が何度か訪れるたびに、こうした措置が繰り返され、今年度も、当初は、対面授業8割で講義を開始したにもかかわらず、4月26日からの緊急事態宣言の発出により、オンライン、オンデマンドの遠隔授業主軸に戻すことを余儀なくされました。6月20日の緊急事態宣言解除により、対面8割に戻すことができましたが、7月にはコロナ禍第5波の襲来により4度目の緊急事態宣言発出となり、この緊急事態宣言は9月30日まで続きました。

こうして、今年度も、対面と遠隔講義の組み合わせ継続、留学派遣・受入れの中止・延期、宿泊を伴う講義・演習等の中止、クラブ活動・課外活動の制限などが続きました。就職活動にも多くの支障が出ました。コロナ禍による業績悪化で新卒採用を中止したり縮小したりする企業が、サービス産業を中心に多く現われ、採用面接を対面からオンラインに切り替える企業も多くなりました。例年に比べて就職活動が長期化し、皆さんは多くの時間を費やさざるを得ませんでした。

何よりも、大学で、友達とおしゃべりをしたり、議論をしたりして、楽しい時間を過ごせなかったこと、それが2年間も続いたことに、とても残念な思いを持ったと思います。対面で人と接する活動は、人間の生活にとって不可欠のものです。そして、ともに考え、議論し、知を創造することは、教育機関にとって不可欠です。とはいえ、ICT環境が社会のなかで整備され、今後、海外や国内各地ともネットを通じた業務や交流が急速に広まっていくと予想される現在、この2年間のオンライン・オンデマンドの遠隔講義の経験は、皆さんのこれからの生活にプラスになっていくことを確信しています。

こうした困難が続いた中で、皆さんの頑張りにより、無事単位を修得して卒業を迎えられたことを改めて喜びたいと思います。これから皆さんは、新しい環境で新しい生活をスタートさせることになります。皆さんは、新しい環境で、新しい仕事を覚え、新しい人間関係をつくっていくことになります。

女性の就業をめぐる環境は、今大きな変化を迎えています。国内的には、日本の女性就業構造の特徴とされたⅯ型雇用はほぼ解消し、一般職が急縮するとともに、派遣や契約といった非正規雇用が急膨張しています。外に目を向ければ、グローバル化、AI化、SDGs、STEM重視などが進行しています。これまで続いているコロナ禍は、こうした女性の仕事をめぐる状況をどのような方向に換えていくでしょうか。その見通しは、現在の時点では必ずしもはっきりしていません。コロナ禍に始まったテレワークは、コロナ禍が収束しても一定程度は続くでしょう。一般職の縮小は加速するでしょうし、派遣や契約といった非正規就業は、今後も増えていくかもしれません、あるいは減るかもしれません。いずれにせよ、女性が働きやすく生きやすい社会に変えていくことが必要です。

その際に重要なことは、まず、第1に、社会へのまなざし、社会への関心を持ち続けることです。社会に出ていくと、仕事の世界は、さまざまな事柄を皆さんに要請してきます。その要請は、社会の制度や仕組みからくる場合もあります。あるいは個々の企業の制度や仕組みからくる場合もあります。あるいは歴史的な慣習や地域的特性からくる場合もあるでしょう。正しく適切な要請もあれば、おかしな不適切な要請もあるかもしれません。大学で皆さんが学んできたことは、それぞれの学問領域のグラマー、ロジック、レトリックです。グラマーとは考える枠組み、約束事、ロジックとは論理的・理性的な思考法、レトリックとはそれを相手に伝える方法のことです。大学でのこれまでの勉強は、そういった要請のどれが適切でどれが不適切かを判断することに必ず役立ちます。論理的・理性的に考えることを忘れないでください。

第2は、本学が掲げてきた「女性の自立」の精神を、維持し続けてほしいということです。「女性の自立」は、まずは、性差による差別を克服するような自立といえるでしょうが、目指してほしいのはその先です。「女性の自立」が「人間としての自立」であること、自己の尊厳を守る形での自立であること、すなわち「経済的自立」は、あくまで「精神的自立」を前提としたものであること、こうした自立を皆さんに追求していって欲しいのです。「精神的自立」は、まず個の自立であり、個の確立です。しかし、このことは、自分さえよければいいということを意味するものでは全くありません。他者との関係のなかで、自己を見つめ直し、相互の力を活かし合い、自己実現できる人間として自立することが大切です。人とのコミュニケーション、人間関係を大事にし続けてほしいと思います。

女性に対する期待は、これまでよりもずっと大きくなっています。2015年に制定された女性活躍推進法は、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図ること」を、その課題として掲げています。皆さんは、これからこうした変化の只中にある社会に乗り出していくことになります。自分の未来を自分自身で切り開いていく力を身につけていくことが、これまで以上に求められています。

これから、皆さんが社会に旅立つと、うれしいこと、楽しいこととともに、悲しいことやつらいことが、きっとおきてきます。そうしたときは、いつでも大学を訪ねてください。皆さんの母校は、皆さんの悩みや願いを、いつでも聞き入れ、少しでも力になれるよう努力します。

皆さんが、今後、多様な場で活躍されることを心から期待して、卒業のお祝いの言葉としたいと思います。
ご卒業おめでとうございます。

2022年3月19日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

入学式式辞

新入生の皆さん入学おめでとうございます。大妻女子大学の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。ご列席の御父母、ご家族の皆さまにも、お嬢様のご入学、心よりお慶び申し上げます。

大妻女子大学は、今から100年以上前の1908年、明治41年、大妻コタカによって、裁縫・手芸の私塾として呱々(ここ)の声をあげました。それから113年、現在では、本学は、家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部の5学部、短期大学部、大学院人間文化研究科を抱える総合大学となっています。

コタカが私塾を始めた113年前とは、一体どのような時代だったのでしょうか。当時の日本は、日清戦争、日露戦争を経て、資本主義国として確立していくさなかにありました。日露戦争は、日本の実力から言ってやや無理な戦争でもあったため、日本は日露戦後不況と呼ばれる不況に苦しんでいました。にもかかわらず、あるいは、そうであるからこそ、コタカは、女性が職業を身に付け、家族や社会を支える一員となることの大事さを強く認識したといえるでしょう。それまでの女子教育機関は、いわばエリートによるエリートのための教育機関でした。それに対し、コタカは、不況の中で苦しんでいる普通の家庭、何ら特別でない普通の女性が、社会の中できちんとした生活を営むにはどうしたらよいか、そして普通の女性が社会的に自立するとはどういうことか、そうしたことを考え続けて、大妻技芸学校の設立を決意したのです。本学は、創立以来「女性の自立のための女子一貫教育」を建学の精神としていますが、その「自立」の根源には、こうした若き日の大妻コタカの独自の考え方と強い意思があったということができるでしょう。

では、「自立」とは、どのようなものでしょうか。手に職を付けること、仕事に就くこと、言い換えると、自分で稼げる「経済的自立」こそが「自立」の本質と捉えられがちです。しかし、本学の創立者、大妻コタカは、「自ら学ぶ」こと、「社会に貢献できる力を身に付ける」こと、「その力を広く世の中で発揮していく」ことが、「女性の自立」につながると考えていました。コタカは、私塾をはじめてから9年後、この私塾を大妻技芸学校としますが、その際に「恥を知れ」という校訓を制定しました。これは、現在、しばしば口にされる他人に対しての言葉ではなく、「自分を高め、自分の良心に恥ずる行いをするな」という自分への言葉でした。

まず、「自己を正しく認識する」こと、そのために「自ら学ぶ」こと、「精神的な自立」を実現することが大切だと、コタカは考えたのです。「精神的自立」が「経済的自立」や「社会的自立」の前提としてとらえられているのです。自分で考え、自分で決定できるようにすること、主体的に物事をとらえられるような豊かな人格を形成することが、「女性の自立」のための条件なのです。

もちろん、本学では、実技実学も重視しています。実技実学は、社会において専門職業人となっていくためには不可欠なものです。しかし、ここでも、単純に、技術や技能を教える、知識を付与するのではなく、広い意味での「実践知」を身に付けることが重要だと考えていました。「実践知」、これはもともとのギリシャ語では、「深い思慮」という意味でした。現実の社会に直面した時に、それまでのやり方に拘泥するのではなく、あるいは、頭の中の思い込みだけで対応しようとするのでもなく、現実を的確に把握し、弾力的かつ創造的に物事に対処できる力が「実践知」です。

本学の教育理念は以上のようなものですが、私たちは、皆さんに、これからの大学生活を意義あるものにしてもらいたいと心より願っています。そして、意義ある大学生活を送っていくために、いくつかのことを皆さんに期待したいと思います。

ひとつは、主体的に物事を考えて欲しいということです。高校までと違って、大学での勉強は、物事を知る、という以前に、どのように物事を考えるかという、考え方を学ぶ場という特徴があります。正解がないことを勉強するのが、大学での勉強だということもできます。論語に、「思うて学ばざれば則ち殆(あや)うし、学びて思わざれば則ち罔(くら)し」という言葉があります。あれこれ考えるだけで、きちんと知識を蓄えなければ正しい判断はできない、知識を蓄えてもどのように考えるかを知っていないと正しい結論を得ることはできない、という意味です。

論語からもうひとつ引用します。「之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」という言葉です。あることについて知識をもっている人、理解している人は、それを好きな人にはかなわない。それを好きな人も、それを楽しんでいる人にはかなわない、という意味です。大学に入学したら、どうか好きな勉強の対象を見つけ、それを楽しむようにしてください。勉強は、本来は、そうした楽しいものですから。

ふたつは、これからの勉強を社会の動きと関連させながら進めていって欲しいということです。昨年1年間、世界は、新型コロナウイルス感染症COVID-19という厄災のただなかにありました。そして、その厄災は現在も収束していません。じつは、世界保健機構WHOは1980年に天然痘を根絶したと宣言し、今後すべての感染症を孤立させ治療するのに十分な医学上の努力が世界的規模で実行されれば、すべての感染症を根絶させることができると宣言しました。しかし、その後も、1980年代からのHIV(エイズ)、2002年のSARS、2009年の新型インフルエンザ、そして今回の新型コロナと、ウイルスによる感染症はたびたび人類を襲い、残念ながらその根絶にはいまだに成功していません。

コロナ感染症が世界的なものであったため、国境が封鎖されたり、出入国が制限されたりしました。多くの都市でロックダウンが行われ、劇場、ホール、学校など多くの人々が集まる場所が閉鎖され、飲食店などの営業が制限されました。それらは、コロナ禍を収束させるために必要とされる措置でしたが、そのことは同時にさまざまの社会活動、経済活動を制限させることになります。この両者の兼ね合いをどのようにとっていくかが問われることになります。その判断は誰が行うのでしょうか。今回の緊急事態宣言やその解除に見られるように、一義的には、専門家、政策担当者がその判断を行うことになります。では、その判断を、専門家、政策担当者に完全に任せてしまってよいのでしょうか。

科学が高度に発展してくると、それぞれの科学は、それぞれのグラマー、ロジック、レトリックによって進められることになります。非専門家が持つリテラシー、日常生活の基礎にあるグラマー、ロジック、レトリックは、科学のそれぞれの専門領域と共通言語を持てなくなります。とはいうものの、非専門家、つまり一般の人々は、その適否について判断することが要請されるようになっています。なぜかといえば、現代の科学技術と私たちの生活との関係は、以前とは異なるものになっているからです。科学技術の発展は、私たちの生活にさまざまな進歩をもたらしましたが、反面、負の影響をももたらしており、科学技術の発展が人類を幸せにするものだとは、もはやナイーブに信じることはできなくなっているのが現代です。

私たちはただユーザーとして技術の使い方を習得していればよいというものではなく、そのような技術は果たして自分たちにとって本当によいものなのか、そのような技術を使うことが倫理的に正しい選択であるのかなどまで判断をせまられるようになっています。科学者の社会的責任とはなんなのかという問題、市民と科学との健全な関係とはどんなものかという問題を、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は改めて提示しています。学問は、どのような領域でも、そのそれぞれに、グラマー、ロジック、レトリックがあります。日本語のグラマー、ロジック、レトリック、英語のグラマー、ロジック、レトリックがあるように、家政学にも、文学にも、経済学にも、社会学にも、心理学にも、それぞれ固有のグラマー、ロジック、レトリックがあります。皆さん、卒業するまでに、ぜひ、このグラマー、ロジック、レトリックを身に付けてください。

「何のために勉強するのか」と問われた時、直ちに答えをだせないかもしれません。ある程度答えがわかっているようでも、勉強している内容に興味と関心を持てないかもしれません。しかし、皆さんのこれまでの勉強、これからの勉強は、よりよき暮らし、よりよき生き方を考える時、必ず役に立ちます。そして、国家間・国内間の過度の格差の拡大は、よりよき暮らし、よりよき生き方を遂行していく前提条件を壊します。ですから、自分たちの暮らしが社会のどことどうかかわっているのかを常に考えながら、自分たちの勉強を進めていって欲しいと思います。

みっつは、大学生活のなかで、先輩、同輩、後輩とよい関係をつくって欲しい、ということです。さきほど、「自立」とは何かということをお話ししました。精神的自立は、まず個の自立であり、個の確立です。しかし、このことは、自分さえよければいいということを意味するものでは全くありません。「他者との関係のなかで、自己を見つめ直し、相互の力を生かし合い、自己実現できる人間として自立すること」、これこそが本来の自立です。種々の人間関係のなかで、自分の位置をきちんと確立して欲しい、そして、ひとに共感する能力を培って欲しい。ひとの喜びを喜びとし、ひとの悲しみを悲しみとし、ひとの怒りを怒りとできる人になって欲しい。そのように私たちは考えています。

大学で勉強することによって、皆さんには、これまで見えなかった世界が新しくみえるようになってきます。また、見えるようになって欲しいと私たちは考えています。改めて新入生の入学をお祝いし、皆さんのこれからの大学生活が、実り多いものとなることを祈念して、私の式辞といたします。皆さん、本日は誠におめでとうございます。

2021年4月
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

2020年度

卒業式式辞

本日、大妻女子大学を卒業される皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。大妻女子大学の教職員一同とともに、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。また、長い間、お嬢様方の本学での勉学をお支えいただきましたご家族や関係者の皆さまにも、お礼とお祝いを申し上げます。コロナ禍がなかなか収束せず、緊急事態宣言が解除されないという状況ですが、今年は、卒業式を2回に分けて開催するという形で、今日この日を迎えることができました。
この1年間は、皆さんにとって大変な1年間だったと思います。他の多くの大学と同様、本学でも、入学式の中止に始まり、緊急事態宣言の発出に伴う前期開講の延期、オンライン講義への全面移行、クラブ活動・課外活動の中止、留学派遣・受入れの中止・延期などを決定せざるを得ませんでした。ほぼすべての講義を、オンライン、オンデマンドで遠隔授業として行うことは、本学では初めての試みでした。準備の過程でも、実施してからも多くの試行錯誤が繰り返されました。
教員サイドでは、オンライン対策委員会を設置し、「オンライン授業実施ガイド」「オンライン授業マニュアル」などを作成し、あわせてオンライン授業講習会を開催しました。各学部にオンライン対策委員を配置して、教員のさまざまの希望や要請を学部・学科で共有できる体制を作ることに努めるとともに、従来からあるmanaba、UNIPAなどの学生用ネットシステムを利用して、講義の内容に対応したいくつかのタイプのオンライン講義形式を選択できるようにしました。
学生の皆さんにとっても新しい経験で、さまざまのご苦労を掛けたと思います。大学としても、情報通信環境の確保、プライバシー保護、新入生対策と経済的・精神的支援など、学生の皆さんが新たな環境に適応できるよう努力を積み重ねました。すなわち、通信環境整備の補助として、約8,000名の学生全員に一律5万円の学生支援緊急給付金を給付するととともに、希望する学生に対してノートパソコンの貸与を行いました。また、対面型の授業とは異なった双方向実現の工夫、オンライン講義のなかでの学生プライバシー保護の徹底に努めました。これと並行して、安全衛生を徹底しつつ、9月に改めて新入生向けの対面オリエンテーションを開催し、また、基礎演習などを対面でも開催するようにしました。
コロナ禍のなかで、小中高が、早い時期に対面授業を再開したこともあって、大学でも対面を再開してほしいという要望も寄せられました。しかし、大学には、小中高とは異なる困難がありました。小中等教育は、学習指導要領があり、単元毎に授業が進むようになっています。クラスの人数もほぼ一定です。カリキュラムは、学年単位で構成され、クラスごとの各科目の進度もおよそ同様です。これに対して、大学は、授業によって参加人数は、大きく異なります。一桁の実験系授業、10人レベルのゼミ、数十人レベルの実技系、数百人単位の大教室講義が混在し、さらに、カリキュラム登録はすべて個人単位でなされます。講義の学年配当はありますが、多くは複数学年にわたって受講可能です。ですので、対面とオンラインを混在させた形のカリキュラムを組むことは、著しく困難です。仮に、対面とオンラインが混在しないように時間割が作成できたとしても、登校したすべての学生が学内でオンラインを受講できるよう学習スペース、Wi-Fi環境などの学内インフラを整備しなくてはなりません。こうした困難の中で、なんとか円滑なオンライン講義を実施する努力を積み重ねてきました。
こうした困難が続いた中で、皆さんの頑張りにより、無事単位を修得して卒業を迎えられたことを改めて喜びたいと思います。これから皆さんは、新しい環境で新しい生活をスタートさせることになります。会社員になる人もいるでしょう。公務員になる人もいるでしょう。幼稚園や小学校、中学校の先生になる人もいるでしょう。自営業に就く人もいるでしょう。大学院に進学する人もいるでしょう。皆さんは、新しい環境で、新しい仕事を覚え、新しい人間関係をつくっていくことになります。
21世紀に入って、わが国の女性の仕事をめぐる環境は大きく変化しました。日本の女性就業構造の特徴とされたM型雇用、すなわち大学や短大を卒業して就職したのち、結婚や出産を機にいったん退職し、子供が一定の成長を遂げたのちに、もう一度働きに出るというM型雇用は、ほぼ解消に近づき、定年まで働く女性が増えています。グローバル化とAIの進展を背景に、これまで存在していた総合職と一般職という女性の職種区分も急激に縮小しています。
これまで続いているコロナ禍は、こうした女性の仕事をめぐる状況をどのような方向に変えていくでしょうか。その見通しは、現在の時点では必ずしもはっきりしていません。コロナ禍に始まったテレワークは、コロナ禍が収束しても一定程度は続くでしょう。一般職の縮小は加速するでしょうし、派遣や契約といった非正規就業はさらに増えるかもしれません、あるいは、大幅に減っていくかもしれません。いずれにせよ、女性が働きやすく生きやすい社会に変えていくことが必要です。本学もそうした努力を続けたいと考えていますが、その時に指標となるのは、創設者大妻コタカの「女性の自立」という考え方です。
「女性の自立」は、まずは、性差による差別を克服するような自立といえるでしょうが、目指してほしいのはその先です。「女性の自立」が「人間としての自立」であること、自己の尊厳を守る形での自立であること、すなわち「経済的自立」は、あくまで「精神的自立」を前提としたものであること、こうした自立を皆さんに追求していって欲しいのです。
そして、願わくは、そうした自立が、他の人々への強い共感に支えられたものであって欲しいと思います。他人の喜びを自分の喜びとし、他人の悲しみを自分の悲しみとし、他人の怒りを自分の怒りとできるよう、望みます。そして、これこそが、コタカの精神、コタカの望んだ生き方であったと思います。
これから、皆さんが社会に飛び立つと、うれしいこと、楽しいこととともに、悲しいことやつらいことが、きっと起きてきます。そうしたときは、いつでも大学を訪ねてください。皆さんの母校は、皆さんの悩みや願いを、いつでも聞き入れ、少しでも力になれるよう努力します。
皆さんが、今後、多様な場で活躍されることを心から期待して、卒業のお祝いの言葉としたいと思います。
ご卒業おめでとうございます。

2021年3月20日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

入学式式辞

新入生の皆さん入学おめでとうございます。大妻女子大学の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。御父母、ご家族の皆様にも、お嬢様のご入学、心よりお慶び申し上げます。
大妻女子大学は、今から100年以上前の1908年、明治41年、大妻コタカによって、裁縫・手芸の私塾として呱々(ここ)の声をあげました。それから112年、現在では、本学は、家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部の5学部、短期大学部、大学院人間文化研究科を抱える総合大学となっています。
コタカが私塾を始めた112年前とは、一体どのような時代だったのでしょうか。当時の日本は、日清戦争、日露戦争を経て、資本主義国として確立していくさなかにありました。
日露戦争は、日本の実力から言ってやや無理な戦争でもあったため、日本は日露戦後不況と呼ばれる不況に苦しんでいました。にもかかわらず、あるいは、そうであるからこそ、コタカは、女性が職業を身に付け、家族や社会を支える一員となることの大事さを強く認識したといえるでしょう。それまでの女子教育機関は、いわばエリートによるエリートのための教育機関でした。それに対し、コタカは、不況の中で苦しんでいる普通の家庭、何ら特別でない普通の女性が、社会の中できちんとした生活を営むにはどうしたらよいか、そして普通の女性が社会的に自立するとはどういうことか、そうしたことを考え続けて、大妻技芸学校の設立を決意したのです。本学は、創立以来「女性の自立のための女子一貫教育」を建学の精神としていますが、その「自立」の根源には、こうした若き日の大妻コタカの独自の考え方と強い意思があったということができるでしょう。
では、「自立」とは、どのようなものでしょうか。手に職を身に付けること、仕事に就くこと、言い換えると、自分で稼げる「経済的自立」こそが「自立」の本質と捉えられがちです。しかし、本学の創立者、大妻コタカは、「自ら学ぶ」こと、「社会に貢献できる力を身に付ける」こと、「その力を広く世の中で発揮していく」ことが、「女性の自立」につながると考えていました。コタカは、私塾をはじめてから10年後、この私塾を大妻技芸学校としますが、その際に「恥を知れ」という校訓を制定しました。これは、現在、しばしば口にされる他人に対しての言葉ではなく、「自分を高め、自分の良心に恥ずる行いをするな」という自分への言葉でした。
まず、「自己を正しく認識する」こと、そのために「自ら学ぶ」こと、「精神的な自立」を実現することが大切だと、コタカは考えたのです。「精神的自立」が「経済的自立」や「社会的自立」の前提としてとらえられているのです。自分で考え、自分で決定できるようにすること、主体的に物事をとらえられるような豊かな人格を形成することが、「女性の自立」のための条件なのです。
もちろん、本学では、実技実学も重視しています。実技実学は、社会において専門職業人となっていくためには不可欠なものです。しかし、ここでも、単純に、技術や技能を教える、知識を付与するのではなく、広い意味での「実践知」を身につけることが重要だと考えていました。「実践知」、これはもともとのギリシャ語では、「深い思慮」という意味でした。現実の社会に直面した時に、それまでのやり方に拘泥するのではなく、あるいは、頭の中の思い込みだけで対応しようとするのでもなく、現実を的確に把握し、弾力的かつ創造的に物事に対処できる力が「実践知」です。
本学の教育理念は以上のようなものですが、私たちは、皆さんに、これからの大学生活を意義あるものにしてもらいたいと心より願っています。そして、意義ある大学生活を送っていくために、いくつかのことを皆さんに期待したいと思います。
ひとつは、主体的にものごとを考えて欲しいということです。高校までと違って、大学での勉強は、ものごとを知る、という以前に、どのように物事を考えるかという、考え方を学ぶ場という特徴があります。正解がないことを勉強するのが、大学での勉強だということもできます。論語に、「学んで思わざれば則ち罔(くら)し、思うて学ばざれば則ち殆(あやう)し」という言葉があります。あれこれ考えるだけで、きちんと知識を蓄えなければ正しい判断はできない、知識を蓄えてもどのように考えるかを知っていないと正しい結論を得ることはできない、という意味です。学問は、どのような領域でも、そのそれぞれに、グラマー、ロジック、レトリックがあります。日本語のグラマー、ロジック、レトリック、英語のグラマー、ロジック、レトリックがあるように、家政学にも、文学にも、経済学にも、社会学にも、心理学にも、それぞれ固有のグラマー、ロジック、レトリックがあります。皆さん、卒業するまでに、ぜひ、このグラマー、ロジック、レトリックを身に付けてください。 論語からもうひとつ引用します。「之れを知る者は之れを好むものに如かず。之れを好む者は之れを楽しむ者に如かず」という言葉です。あることについて知識をもっている人、理解している人は、それを好きな人にはかなわない。それを好きな人も、それを楽しんでいる人にはかなわない、という意味です。大学に入学したら、どうか好きな勉強の対象を見つけ、それを楽しむようにしてください。勉強は、本来は、そうした楽しいものですから。
ふたつは、これからの勉強を社会の動きと関連させながら進めていって欲しいということです。グローバル化を、ヒト、モノ、カネ、情報の国境を越えた相互浸透と考えるならば、この30年の間に、グローバル化は持続的に進んだということができます。アメリカトランプ政権の高関税政策、イギリスジョンソン政権のEU離脱、大陸ヨーロッパ諸国の移民排斥などの反転現象が続いているとはいえ、大きく見れば、この流れはとどまることなく続いています。問題は、そうしたなかで、国家間、国内間の経済的格差が大きく拡大していることです。最近、SDGs(エスディジーズ)という言葉があちこちで聞かれます。2015年の国連サミットで採択され、2030 年までの15年間に取り組むべきさまざまの目標を掲げた「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2001年に国連で策定された MDGs(Millennium Development Goals)を引き継いだものですが、MDGs が開発途上国を対象としていたのに対し、SDGs の方は、先進国を含めたすべての国が追求すべき17の目標、その下に169のターゲットを掲げています。その17の目標は、①貧困をなくそう、②飢餓をゼロに、③すべての人に健康と福祉を、④質の高い教育をみんなに、⑤ジェンダー平等を実現しよう、⑥安全な水とトイレを世界中に、⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに、⑧働きがいも経済成長も、⑨産業と技術革新の基盤を作ろう、⑩人や国の不平等をなくそう、⑪住み続けられるまちづくりを、⑫つくる責任つかう責任、⑬気候変動に具体的な対策を、⑭海の豊かさを守ろう、⑮陸の豊かさも守ろう、⑯平和と公正をすべての人に、⑰パートナーシップで目標を達成しよう、というものです。
ここから明らかなように、ここでいわれている「持続的な開発」とは、人間開発のことです。国連は次のように言っています。「開発は、人々が大切だと思う生活が送れるように各自の選択肢を広げることである。…こうした選択肢を拡大する上において、何にもまして重要なのは、人間の能力を育てること、つまり人が人生において行い得る、あるいはなり得る事柄を全体として築き上げることである。…人間開発の目的は、人間の自由である。そして、能力を追求し人権を確立するうえで、この自由は不可欠である。自分で選択をし、自らの人生に影響を及ぼす意思決定に参加するためには、人は自由でなければならない。」
わたしたちは、皆さんにこうした問題についても関心を持って欲しいと考えています。皆さんは、大学での勉強は、こうした社会の動き、世界の動きと関係がないと思っておられるかもしれません。しかし、皆さんが高校で学んできたこと、そしてこれから学ぶことのすべては、社会とのかかわり抜きにはありえません。「何のために勉強するのか」と問われた時、直ちに答えをだせないかもしれません。ある程度答えがわかっているようでも、勉強している内容に興味と関心を持てないかもしれません。しかし、皆さんのこれまでの勉強、これからの勉強は、よりよき暮らし、よりよき生き方を考える時、必ず役に立ちます。そして、国家間・国内間の過度の格差の拡大は、よりよき暮らし、よりよき生き方を遂行していく前提条件を壊します。ですから、自分たちの暮らしが社会のどことどうかかわっているのかを常に考えながら、自分たちの勉強を進めていって欲しいと思います。
みっつは、大学生活のなかで、先輩、同輩、後輩とよい関係をつくって欲しい、ということです。さきほど、「自立」とは何かということをお話ししました。精神的自立は、まず個の自立であり、個の確立です。しかし、このことは、自分さえよければいいということを意味するものでは全くありません。「他者との関係のなかで、自己を見つめ直し、相互の力を生かし合い、自己実現できる人間として自立すること」、これこそが本来の自立です。種々の人間関係のなかで、自分の位置をきちんと確立して欲しい、そして、ひとに共感する能力を培って欲しい。ひとの喜びを喜びとし、ひとの悲しみを悲しみとし、ひとの怒りを怒りとできる人になって欲しい。そのように私たちは考えています。
大学で勉強することによって、皆さんには、これまで見えなかった世界が新しく見えるようになってきます。また、見えるようになって欲しいと私たちは考えています。改めて新入生の入学をお祝いし、皆さんのこれからの大学生活が、実り多いものとなることを祈念して、私の式辞といたします。皆さん、本日はまことにおめでとうございます。

2020年4月4日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

2019年度

卒業式式辞

本日、大妻女子大学を卒業される皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。大妻女子大学の教職員一同とともに、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。また、長い間、お嬢様方の本学での勉学をお支えいただきましたご家族や関係者の皆様にも、お礼とお祝いを申し上げます。
皆さんの4年間ないし2年間の学生生活はどうだったでしょうか。大妻女子大で過ごした日々のことを思い出してください。皆さんは、大学にどのような思いや期待、あるいは夢を抱いていたでしょうか。現在、その思いは叶えられたでしょうか。あるいは、全く違った思いや夢を持つようになったでしょうか。
これから皆さんは、新しい環境で新しい生活をスタートさせることになります。会社員になる人もいるでしょう。公務員になる人もいるでしょう。保育士さん、幼稚園や学校の先生になる人もいるでしょう。大学院に進学する人もいるでしょう。皆さんは、新しい環境で、新しい仕事を覚え、新しい人間関係をつくっていくことになります。
21世紀に入って、わが国の女性の仕事をめぐる環境は大きく変化しました。日本の女性就業構造の特徴とされた M 型雇用、すなわち大学や短大を卒業して就職したのち、結婚や出産を機にいったん退職し、子供が一定の成長を遂げたのちに、もう一度働きに出るというM型雇用は、ほぼ解消に近づき、定年まで働く女性が増えています。グローバル化とAIの進展を背景に、これまで存在していた総合職と一般職という女性の職種区分も急激に縮小しています。
1999年6月には男女共同参画基本法が成立し、「職場、家庭、地域などのあらゆる場で、男女が対等の立場であらゆる分野の政策立案や決定に参画できる社会を実現する」という課題が掲げられました。2015年8月には女性活躍推進法が成立し、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図る」ことを課題としています。女性たちの活躍の場を広げていこうという方向が、政策としては、21世紀に入ってはっきり示されるようになったということができます。
眼を世界に広げれば、女性の活躍の場は、さまざまな領域で広がっています。昨年12月、フィンランドでは、34歳のサンナ・マリン氏が新首相に選出され、女性主導の内閣が誕生しました。ドイツのメルケル首相ほか、バングラディシュ、ノルウェー、ナミビア、ミャンマー、セルビア、アイスランド、バルバドス、デンマーク、ベルギーでも、現役の女性首相が活躍しており、ネパール、中華民国、エストニア、シンガポール、トリニダード・トバゴ、エチオピア、ジョージア、スロバキア、ボリビア、ギリシャでは、女性が現役の大統領です。
経済の世界でも、IMF の専務理事からヨーロッパ中央銀行ECBの総裁に転じたクリスティーヌ・ラガルド、アメリカ連邦準備制度理事会FRB前議長のジャネット・イエレン、YouTubeCEO のスーザン・ウォジスキ、FacebookCOO のシェリル・サンドバーク、GMCEOのメアリー・バーバラなど、多くの女性が活躍しています。研究の世界でも、女性の活躍は大きく進んでおり、アメリカ、カナダ、EU、オーストラリアなどの主要12地域中9地域で、女性研究者の割合が 40%を超えるまでになっています。
こうした世界の動向のなかで、残念ながら、日本は、やや立ち遅れを見せています。世界経済フォーラムが国別の男女格差を示すジェンダー・ギャップ指数を毎年発表していますが、昨年12月に発表されたこの指数で、日本は121位となりました。ジェンダー格差が少ない1位から5位までは、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ニカラグア、その他、ドイツ10位、フランス15位、カナダ19位、英国21位、米国53位、イタリア76位で、日本はG7の中で圧倒的に最下位だったのです。中国は106位、韓国は108位で、日本より上でした。
この指数が、何を指標としているかといいますと、経済面での参加度や参加機会、教育の達成度、健康と生存、政治的活躍度の4つです。このうち、日本は、読み書き能力、初等教育、出生率ではジェンダー・ギャップが最も少ない国、世界1位だったのですが、中等教育、高等教育、労働所得、政治家・経営管理職、教授・専門職、国会議員数ではいずれも100位以下、経済分野でも、賃金格差67位、労働力参加79位、所得108位と、政治や経済の分野での立ち遅れが目立っており、このことが、世界経済フォーラムでは男女格差の大きさと判断されているのです。
こうした現状を克服し、女性が働きやすく生きやすい社会に変えていくことが必要です。
本学もそうした努力を続けたいと考えていますが、その時に指標となるのは、創設者大妻コタカの「女性の自立」という考え方です。100年以上も前、日露戦直後の時期に、コタカは、それまでの「エリート」でもなく、「中流以上の女子」でもなく、社会の中で何ら特別でない、ごくごく普通の女性が「社会的に自立するとはどういうことか」を考え続けて、大妻技芸学校の設立を決意しました。戦前の日本では、女性が社会の中で自分自身を確立することは、現在に比べ、はるかに困難でした。そうした状況の中、コタカは「女性の自立」のための独自の戦い方を、女性が社会に受け入れられやすい手芸・裁縫といった「技芸を身に着ける」ことから始めようとしたのです。本学院は、創立以来「女性の自立のための女子一貫教育」を建学の精神としていますが、その「自立」の根源には、こうした若き日の大妻コタカの独自の考え方と強い意思があったということができるでしょう。
「女性の自立」は、まずは、性差による差別を克服するような自立といえるでしょうが、目指してほしいのはその先です。「女性の自立」が「人間としての自立」であること、自己の尊厳を守る形での自立であること、すなわち「経済的自立」は、あくまで「精神的自立」を前提としたものであること、こうした自立を皆さんに追求していって欲しいのです。
そして、願わくは、そうした自立が、他の人々への強い共感に支えられたものであって欲しいと思います。他人の喜びを自分の喜びとし、他人の悲しみを自分の悲しみとし、他人の怒りを自分の怒りとできるよう、望みます。そして、これこそが、コタカの精神、コタカの望んだ生き方であったと思います。
茨木のり子という詩人に「学校 あの不思議な場所」という詩があります。その一部を読み上げます。

学校 あの不思議な場所
校門をくぐりながら蛇蝎のごとく嫌ったところ
飛びたつと
森のようになつかしいところ
今日もあまたの小さな森で
水仙のような友情が生まれ匂ったりしているだろう
新しい葡萄酒のように
なにかがごちゃまぜに醗酵したりしているだろう
飛びたつ者たち
自由の小鳥になれ
自由の猛禽になれ
(『茨木のり子集 言の葉 1』)

これから、皆さんが社会に飛びたつと、うれしいこと、楽しいこととともに、悲しいことやつらいことが、きっとおきてきます。そうしたときは、いつでも大学を訪ねてください。
皆さんの母校は、皆さんの悩みや願いを、いつでも聞き入れ、少しでも力になれるよう努力します。
皆さんが、今後、多様な場で活躍されることを心から期待して、卒業のお祝いの言葉としたいと思います。
ご卒業おめでとうございます。

2020年3月20日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直

入学式式辞

新入生の皆さん入学おめでとうございます。大妻女子大学の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。ご列席の御父母、ご家族の皆さまにも、お嬢様のご入学、心よりお喜び申し上げます。本日入学された皆さんは、先ほど宣言したように2138名です。
大妻女子大学は、今から100年以上前の1908年、明治41年、大妻コタカによって、裁縫・手芸の私塾として呱々(ここ)の声をあげました。それから111年、現在では、本学は、家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部の5学部、短期大学部、大学院人間文化研究科を抱える総合大学となっています。
コタカが私塾を始めた111年前とは、一体どのような時代だったのでしょうか。当時の日本は、日清戦争、日露戦争を経て、資本主義国として確立していくさなかにありました。
日露戦争は、日本の実力から言ってやや無理な戦争でもあったため、日本は日露戦後不況と呼ばれる不況に苦しんでいました。にもかかわらず、あるいは、そうであるからこそ、コタカは、女性が職業を身に付け、家族や社会を支える一員となることの大事さを強く認識したといえるでしょう。それまでの女子教育機関は、いわばエリートによるエリートのための教育機関でした。それに対し、コタカは、不況の中で苦しんでいる普通の家庭、何ら特別でない普通の女性が、社会の中できちんとした生活を営むにはどうしたらよいか、そして普通の女性が社会的に自立するとはどういうことか、そうしたことを考え続けて、大妻技芸学校の設立を決意したのです。
戦前の日本は現在よりもはるかに、階級的格差の強い社会、男女差別の強い社会でした。
女性には選挙権がなく、家制度も男子長子相続制でした。女性が社会の中で自分自身を確立することははるかに困難だったのです。そうした状況の中、コタカは「女性の自立」のための独自の戦い方を、女性が社会に受け入れられやすい「技芸を身に付ける」ことから始めようとしたのです。本学は、創立以来「女性の自立のための女子一貫教育」を建学の精神としていますが、その「自立」の根源には、こうした若き日の大妻コタカの独自の考え方と強い意思があったということができるでしょう。
では、「自立」とは、どのようなものでしょうか。手に職を身に付けること、仕事に就くこと、言い換えると、自分で稼げる「経済的自立」こそが「自立」の本質と捉えられがちです。しかし、本学の創立者、大妻コタカは、「自ら学ぶ」こと、「社会に貢献できる力を身に付ける」こと、「その力を広く世の中で発揮していく」ことが、「女性の自立」につながると考えていました。コタカは、私塾をはじめてから10年後、この私塾を大妻技芸学校としますが、その際に「恥を知れ」という校訓を制定しました。これは、現在、しばしば口にされる他人に対しての言葉ではなく、「自分を高め、自分の良心に恥ずる行いをするな」という自分への言葉でした。
まず、「自己を正しく認識する」こと、そのために「自ら学ぶ」こと、「精神的な自立」を実現することが大切だと、コタカは考えたのです。「精神的自立」が「経済的自立」や「社会的自立」の前提として捉えられているのです。自分で考え、自分で決定できるようにすること、主体的に物事を捉えられるような豊かな人格を形成することが、「女性の自立」のための条件なのです。
もちろん、本学では、実技実学も重視しています。実技実学は、社会において専門職業人となっていくためには不可欠なものです。しかし、ここでも、単純に、技術や技能を教える、知識を付与するのではなく、広い意味での「実践知」を身に付けることが重要だと考えていました。「実践知」、これはもともとのギリシャ語では、「深い思慮」という意味でした。現実の社会に直面した時に、それまでのやり方に拘泥するのではなく、あるいは、頭の中の思い込みだけで対応しようとするのでもなく、現実を的確に把握し、弾力的かつ創造的に物事に対処できる力が「実践知」です。
本学の教育理念は以上のようなものですが、私たちは、皆さんに、これからの大学生活を意義あるものにしてもらいたいと心より願っています。そして、意義ある大学生活を送っていくために、いくつかのことを皆さんに期待したいと思います。
ひとつは、主体的に物事を考えて欲しいということです。高校までと違って、大学での勉強は、物事を知る、という以前に、どのように物事を考えるかという、考え方を学ぶ場という特徴があります。正解がないことを勉強するのが、大学での勉強だということもできます。もちろん、ただ考えればいいという訳ではありません。「反証可能性」という言葉があります。ある発見や発明がなされたとき、別の人が同じ手続きを取れば、あるいは、同じ実験をすれば、同じ結果がでてくる、という意味です。つまり、「私はこう思う」というだけでは駄目で、「私がこう思うことは誰にとってもそうである、ということをきちんと 説明できる」ことが必要です。「考え方を学ぶ」とは、じつはそういうことを学ぶということなのです。そのために必要なものが、グラマー、ロジック、レトリックです。
学問は、どのような領域でも、そのそれぞれに、グラマー、ロジック、レトリックがあります。日本語のグラマー、ロジック、レトリック、英語のグラマー、ロジック、レトリックがあるように、家政学にも、文学にも、経済学にも、社会学にも、心理学にも、それぞれ固有のグラマー、ロジック、レトリックがあります。皆さん、卒業するまでに、ぜひ、このグラマー、ロジック、レトリックを身に付けてください。
ふたつは、これからの勉強を社会の動きと関連させながら進めていって欲しいということです。世界を見回してみると、あちこちで軋(きし)みが激しくなっているように思われます。トランプ政権は、アメリカ第一をますます声高に唱え、中国、ロシアだけでなく、欧州諸国や日本に対しても、高関税を課そうという保護主義を強め、メキシコ国境のフェンス拡大も続いています。イギリスでは、EU離脱のブレクジットを宣言したにもかかわらず、それをどのように実施するかについては、与党保守党内部でも意見が一致していません。大陸ヨーロッパでは、移民排斥の動きが高まり、排外主義を掲げる極右政党が支持を伸ばしています。中東やアフリカでは、民族間、宗派間の対立が激化し、女性や子供に対する暴力が蔓(まん)延しています。そして、国連の統計が明らかにしているように、国家間、国内間の経済的格差も大きく拡大しています。
わたしたちは、皆さんにこうした問題についても関心を持ってほしいと考えています。
皆さんは、大学での勉強は、こうした社会の動き、世界の動きと関係がないと思っておられるかもしれません。しかし、皆さんが高校で学んできたこと、そしてこれから学ぶことのすべては、社会とのかかわり抜きにはありえません。「何のために勉強するのか」と問われた時、直ちに答えをだせないかもしれません。ある程度答えがわかっているようでも、勉強している内容に興味と関心を持てないかもしれません。しかし、皆さんのこれまでの勉強、これからの勉強は、よりよき暮らし、よりよき生き方を考える時、必ず役に立ちます。そして、国家間・国内間の過度の格差の拡大は、よりよき暮らし、よりよき生き方を遂行していく前提条件を壊します。ですから、自分たちの暮らしが社会のどことどうかかわっているのかを常に考えながら、自分たちの勉強を進めていってほしいと思います。
みっつは、大学生活のなかで、先輩、同輩、後輩とよい関係をつくってほしい、ということです。さきほど、「自立」とは何かということをお話ししました。精神的自立は、まず個の自立であり、個の確立です。
しかし、このことは、自分さえよければいいということを意味するものでは全くありません。「他者との関係のなかで、自己を見つめ直し、相互の力を生かし合い、自己実現できる人間として自立すること」、これこそが本来の自立です。
種々の人間関係のなかで、自分の位置をきちんと確立してほしい、そして、ひとに共感する能力を培ってほしい。ひとの喜びを喜びとし、ひとの悲しみを悲しみとし、ひとの怒りを怒りとできる人になってほしい。そのように私たちは考えています。
大学で勉強することによって、皆さんには、これまで見えなかった世界が新しく見えるようになってきます。また、見えるようになってほしいと私たちは考えています。山登りをすると、これまで見えなかった新しい景色がだんだん見えてくるようなものです。小野十三郎の「山頂から」という詩を皆さんに贈ります。

山にのぼると
海は天まであがってくる。
なだれおちるような若葉みどりのなか。
下の方で しずかに
かっこうがないている。
風に吹かれて高いところにたつと
だれでもしぜんに世界のひろさをかんがえる。
ぼくは手を口にあてて
なにか下の方に向かって叫びたくなる。
五月の山は
ぎらぎらと明るくまぶしい。
きみは山頂よりも上に
青い大きな弧をえがく
水平線を見たことがあるか。
(『太陽のうた』昭和 42 年)

どうか皆さん、大学で勉強をすすめることで、それぞれの「広い地上の世界」や「青い大きな弧をえがく水平線」を見てほしいと、心から期待します。改めて新入生の入学をお祝いし、皆さんのこれからの大学生活が、実り多いものとなることを祈念して、私の式辞といたします。皆さん、本日はまことにおめでとうございます。

2019年4月6日
学長 伊藤 正直