大学紹介
入試・入学
学部・短大・大学院
研究
就職・キャリア
​学生生活
​留学・国際交流
地域連携・社会貢献

学長スピーチ集

式辞

2025年度入学式式辞

新入生の皆さんご入学おめでとうございます。ようこそ大妻女子大学へ。教職員一同皆さんのご入学を、心より歓迎いたします。ご列席の御父母、ご家族の皆さまにも、心よりお慶び申し上げます。

大妻女子大学は明治41(1908)年に、大妻コタカによって裁縫・手芸の私塾として創立されました。当時は女子が高等教育を受けること、まして職業婦人として社会に出て働くことは容易ではありませんでした。しかしコタカは「女子も自ら学び、社会に貢献できる力を身につけ、その力を広く世の中で発揮していくことが女性の自立につながる」と確信していたのです。以来100年以上にわたり、社会の変化に対応しながら発展を続け、現在では、家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部、そして本年4月にはデータサイエンス学部を開設し計6学部と、短期大学部、大学院人間文化研究科を併設し、多様な学びの機会を提供しています。さらに2026年には、人間関係学部から人間共生学部へと改組し、新たに共生デザイン学科を開設する準備を進めています。

本学は、「女性の自立のための女子一貫教育」を建学の理念としています。豊かな教養と思いやりの心を持ち合わせ、実技実学を身につけ、社会において指導的役割を果たせる女性を育成することを目的として、教育実践を進めてきました。

ここで言う自立とは、⼿に職をつける経済的な自立だけを意味するものではありません。⾃分で考え、⾃分で決定できるようにすること、主体的に物事をとらえられるような豊かな⼈格を形成することが、「⼥性の⾃⽴」のための条件だととらえていたのです。

また、⾃⽴とは個の確⽴です。自分らしく個性を発揮することでもあります。しかし、このことは、⾃分さえよければいいということを意味するものではありません。他者を思いやり、その立場を受け入れて、お互いが一体となる体験を共有してこそ真の自立であり、他者との関係性の中ででこそ発揮されるものです。自分の殻に閉じこもるのではなく、他者に流されるのでもなく、仲間や社会とのつながりを大切にしながら、自分らしく生きる力を育んでください。本学の卒業生は、こうした関係性を重視しながら、社会のさまざまな分野で活躍しています。皆さんも、ここで出会う仲間と共に成長し、将来の可能性を広げてください。

コタカは学生に対して終始「らしくあれ」と説いていました。「らしくあれ」とは、人間はそれぞれの持ち味があり、それを活かして生きると解釈することができます。つまり多様性を認め、人々が生まれ持ったさまざまな違いを認め、尊重することと言えます。これは個性と言っても良いものですが、独りよがりの個性を発揮するということではなく、他者との関係性の中で発揮されるべきとの考えです。これは先にお話しした、他者との関係性の中での「自立」とも大いに関係しています。

「自立」や「らしくあれ」の考えは校訓「恥を知れ」につながります。これは大正6(1917)年に大妻技芸伝習所が正式な学校として発足するにあたって、教職員、生徒の賛同を得て制定されたものです。この言葉は他人に対して使うと、大変強い意味になります。2022年広島県安芸高田市の当時に市長が、議会で居眠りをしていた議員に対して「恥を知れ。恥を」と言って注目を集めたことが思い出されます。しかし、この校訓について、コタカは「決して他人に対して言うことではなくて、あくまでも自分に対して言うことである」と言っています。「人に見られ、聞かれて恥ずかしいことをしたかどうかを自分で戒めることである」とつねづね教えてきました。これは、客観的に自己を見つめ、他者に対して恥じることの無いように生きると言うことです。

ところで、皆さんは、これまで勉強を楽しいと思って取り組んできたでしょうか。私は、小学校での勉強は、知らないこと、新しいことを知ることができ、ワクワクしながら楽しく取り組んでいたように思います。しかし、中学や高校での勉強は、良い点数を取れた時の達成感はありましたが、将来どのように役に立つのかが疑問で、今一つ楽しいと思わなかったというのが正直なところです。もちろん、中学や高校の勉強には、受験という目標がありました。また、勉強は、思考力や論理的な能力を鍛え、問題解決能力を身につけるためにも、とても重要であると言われています。しかし、「勉強」という言葉は「勉め」を「強いる」と書くように、その語源には「無理強いする」という意味が含まれていたようです。他から強いられることは楽しいわけがなく、辛いものになってしまいがちです。また、皆さんは高校までは「生徒」と呼ばれていました。「生徒」は、「先生に従って学ぶ者」という意味を持っています。

一方、大学では「学習」という言葉を使います。「学習」とは、知識を学び習得することという意味になります。また、大学では「生徒」ではなく「学生」と呼ばれます。「学生」とは学びで育つ人という意味になります。学習にも学生にも、他から強制される、あるいは従うという意味は含まれていません。知らないことを知ることの楽しさ、ワクワクしてもっと知りたいと思う気持ちが学ぶことの本質です。大妻での学びの中で、他者から強制されるのではなく、自らが学ぶワクワクできる対象をぜひ見つけて欲しいと思います。

皆さんは新しい環境の中で期待と不安が入り混じっていることでしょう。これからの大学生活では、学び、挑戦し、多くの人と出会うことで、自分自身を大きく成長させる機会がたくさんあります。皆さんのこれからの選択の一つひとつが、未来の自分をつくります。「興味があることに、一歩踏み出してみること」。その一歩が、きっと新しい発見や成長につながります。これからの大学生活が、皆さんにとってかけがえのないものになることを願っています。私たち教職員は、学生となった皆さんの成長を全力でサポートします。

改めて、ご入学おめでとうございます。

2025年4月5日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 市川 博

2024年度卒業式式辞

本日、大妻女子大学を卒業される家政学部、文学部、社会情報学部、人間関係学部、比較文化学部、短期大学部、そして大学院の皆さん、ご卒業まことにおめでとうございます。大妻女子大学の教職員一同とともに、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。また、長い間、お嬢様方の本学での勉学をお支えいただきましたご家族や関係者の皆様にも、お礼とお祝いを申し上げます。コロナ禍もようやく終息の様相をみせるなか、今年度は、コロナ禍以前の通常の授業に復帰することができ、皆さんが無事卒業を迎えることができたことを心から喜びたいと考えます。これから皆さんは、新しい環境で新しい生活をスタートさせることになります。新しい仕事を覚え、新しい人間関係をつくっていくことになります。

21世紀に入って、わが国の女性の仕事をめぐる環境は大きく変化しています。日本の女性就業構造の特徴とされたM型雇用、日本型標準家族を基準とした雇用の形、すなわち大学や短大を卒業して就職したのち、結婚や出産を機にいったん退職し、子供が一定の成長を遂げたのちに、もう一度働きに出るというM型雇用はほぼ解消に近づき、定年まで働く女性が増えています。グローバル化とAIの進展を背景に、これまで存在していた総合職と一般職という女性の職種区分も急激に縮小しています。

1999年に「男女共同参画社会基本法」が施行され、2016年には「女性活躍推進法」が施行されるなど、21世紀に入ってから、女性の社会的地位や役割に対する認識は、大きく前進しました。「男女共同参画基本法」は、「男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること」が前提であると宣言しています。また、「女性活躍推進法」は、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図ること」をその課題に掲げています。

さらに、2024年6月に決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2024」では、「政策の実施に向けた取組をさらに具体化すべき事項及び新たに取り組む事項」として、「Ⅰ企業等における女性活躍の一層の推進、Ⅱ女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の一層の推進、Ⅲ個人の尊厳と安心・安全が守られる社会の実現、Ⅳ女性活躍・男女共同参画の取組の一層の加速化」の4項目を掲げています。そのなかで、例えば、Ⅰでは、「企業における女性の採用・育成・登用の強化、女性起業家の支援など」を掲げていますし、Ⅱでは、「女性の所得向上・経済的自立・男女間賃金格差の是正に向け、リスキリングの促進や賃金差異の「見える化」を進める」ことなどを強調しています。

以上のように、女性に対する期待は、これまでよりもずっと大きくなっているということができます。しかし、法律や政策が提起されれば、それが直ちに実現されるかといえば、そうとは限りません。残念なことですが、日本のジェンダー平等は諸外国に比べて大きく立ち遅れています。世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数、その2023年の日本の順位は146か国中125位、2024年は118位でした。2006年が80位でしたから、近年、その順位は下がり続けているといえます。

こうした状況を克服していくことが緊急に求められています。その見通しは、現在の時点では必ずしもはっきりしていませんが、いずれにせよ、大事なことは、安定した生活を送ることができるような賃金や労働条件が保証されることです。女性が働きやすく生きやすい社会に変えていくことが必要です。本学もそうした努力を続けたいと考えていますが、その時に指標となるのは、創設者大妻コタカの「女性の自立」という考え方です。

「女性の自立」は、まずは、性差による差別を克服するような自立といえるでしょうが、目指してほしいのはその先です。「女性の自立」が「人間としての自立」であること、自己の尊厳を守る形での自立であること、すなわち「経済的自立」は、あくまで「精神的自立」を前提としたものであること、こうした自立を皆さんに追求していって欲しいのです。ワークライフ・バランス、あるいはワークライフ・インテグレーションを正面から考え、実践していくことが求められています。「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図ること」、女性たちが、「精神的自立」を前提とした「人間的自立」を確保していくこと、このことが現在強く求められています。

皆さんが、今後、多様な場で活躍されることを心から期待して、卒業のお祝いの言葉としたいと思います。
ご卒業おめでとうございます。

2025年3月22日
大妻女子大学 大妻女子大学短期大学部
学長 伊藤正直