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【学長通信】オンライン講義の使い方・使われ方

学長通信

世界的に蔓(まん)延しているコロナウイルス感染症COVID-19は、現在も収束の兆しを見せず、日本も第三波のただ中となっています。全世界での感染者数は7,100万人を超え、死者数も160万人をこえるなど未曽有の事態となっています(2020.12.14時点)。ワクチンが開発されたというものの、歴史的な経験からみる限りは、今回の感染症が短期間で収束するとは必ずしも考えられません。コロナ禍の波は、人々の生活様式、行動様式を大きく変化させました。大学も同様で、この状況は現在も続いています。ほぼすべての大学で、さまざまな対処が図られてきましたが、前期・後期の講義がほぼ完了するこの機会に、本学での対応を振り返っておきたいと思います。


他の大学と同様、本学でも、昨年は、2019年度卒業式、2020年度入学式の中止に始まり、緊急事態宣言の発出に伴う前期開講の延期、オンライン講義への全面移行、クラブ活動・課外活動の禁止、留学派遣・受入れの中止・延期などを決定せざるを得ませんでした。そして、こうした事態への対応として、年次当初に、危機管理対策本部、オンライン対策委員会を設置しました。教育・研究の場、仕事の場で、できる限り迅速かつ適切な対処を図ること、オンライン講義、オンライン会議、在宅勤務・テレワークなどの円滑な遂行を図ることが、設置の目的でした。


なかで、もっとも緊急の対応が要請されたのが講義への対処でした。ほぼすべての講義を、オンライン、オンデマンドで遠隔授業として行うことは、本学では初めての試みでした。ですので、この実施に際して、相当量の検討作業・対処作業を短期間で行わなくてはなりませんでした。検討は、教員、学生、教務事務すべてにわたって、必要でした。


教員サイドでは、①教員のICT活用スキルの向上、②新しい講義スタイルによる事前準備・講義運営、学生の出席管理・レポート管理、成績評価など教員負担増への対処、③実験・実習・実技系科目への対処などが課題となりました。①についてはオンライン対策委員会を軸に、「オンライン授業実施ガイド」「オンライン授業マニュアル」などの作成、オンライン授業講習会の開催などを行いました。②については、各学部にオンライン対策委員を配置して、教員のさまざまな希望や要請を学部・学科で共有できる体制を作ることに努めるとともに、従来からあるmanaba(授業支援システム)、学内ポータルサイトUNIVERSAL PASSPORTなどの学生用ネットシステムを利用して、講義の内容に対応したいくつかのタイプのオンライン講義形式を選択できるようにしました。③については、コロナに対する安全衛生対策の徹底を前提とした対面授業と、オンラインも併用したハイブリッド型の実施を試行しました。


学生サイドでは、①学生の情報通信環境の確保、②オンライン講義への学生の適応への配慮とプライバシー保護、③新入生対策と経済的・精神的支援などが課題となりました。①については、通信環境整備の補助としておよそ8,000人の学生全員に一律5万円の学習補助を給付するととともに、希望する学生に対してノートパソコンの貸与を行いました。②に関しては、対面型の授業とは異なった双方向実現の工夫、オンライン講義のなかでの学生プライバシー保護の徹底(画像を出さない、個人情報を出さないなど)を図っています。③に関しては、実験・実技・実習系授業と同様に、安全衛生を徹底しつつ、9月に改めて対面でのオリエンテーションを開催し、また、基礎演習などを対面でも開催するようにしました。


教務事務サイドでは、①時間割調整、②学内インフラの整備などが課題となりました。とりわけ困難を極めたのが、時間割調整です。小中等教育は、学習指導要領があり、単元毎に授業が進むようになっています。クラスの人数もほぼ一定です。カリキュラムは、学年単位で構成され、クラスごとの各科目の進度もおよそ同様です。これに対して、大学は、授業によって参加人数は、大きく異なります。ひとケタの実験系授業、10人レベルのゼミ、数十人レベルの実技系、数百人単位の大教室講義が混在し、さらに、カリキュラム登録はすべて個人単位でなされます。講義の学年配当はありますが、多くは複数学年にわたって受講可能です。ですので、対面とオンラインを混在させた形のカリキュラムを組むことは、著しく困難です。仮に、対面とオンラインが混在しないように時間割が作成できたとしても(例えば同一日の2限が対面、3限がオンライン)、登校したすべての学生が学内でオンラインを受講できるよう学内インフラ(学習スペース、Wi-Fi環境)を整備しなくてはなりません。こうした困難の中で、なんとか円滑なオンライン講義を実施する努力を、これまで本学でも積み重ねてきました。


本学では、前期講義が終了した時点で、学生と教員に対してオンライン講義についてのアンケートを取りました。学生からの反応は、二極分化はあるものの、想定以上にオンライン講義に対する評価は高いものでした。学生の理解度も成績も対面に比べてむしろ上がったと評価する教員も多くいました。他面、教員からは、事前の準備にかなりの時間を要し、研究時間がほとんどとれなくなった、対面に比べ学生のダイレクトな反応がつかみにくい、講義に遊び(のりしろ)の部分を取りにくいといった意見も出てきました。学生からも、どんどん進むので疲れるという意見もありました。オンラインならではのメリットもみえましたが、対面で議論する、意見交換する、共同作業するなど、実験・実習・実技系に限らず、対面でなくてはできないことが数多くあることも自明です。


こうしたオンライン講義については、国立情報学研究所における「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」の連続開催(2020.3.26~2020.12.11、22回)によって、全国の大学や中高の教育機関の取り組み、MITなど海外大学における取り組みが紹介され、経験の共有が図られてきました(https://www.nii.ac.jp/event/other/decs/#22)。また、多くの大学で、オンライン講義の実施例がウェブなどで公開されています。本学も、これらの経験・教訓をできる限り共有したいと考えています。


じつは、本学では、前期講義を開始した時点では、9月からの講義は可能であれば、対面講義を軸とするものに戻したいと考えていました。しかし、7~8月の第二波によって、それがほぼ困難となり、後期もオンライン主軸の講義が続いてきました。現在の第三波の推移によっては、次年度もオンライン主軸を検討せざるを得ないかもしれません。


とはいえ、対面で人と接する活動は、人間の生活にとって不可欠のものです。ともに考え、議論し、知を創造することは、教育機関にとって不可欠です。コロナ禍が収束の兆しを見せない現在、これからもウィズ・コロナを続けざるを得ませんが、学生の皆さんが、大学で学び、習得し、自らの能力を発揮できる、そうした教育を継続し、実現することを最大限の課題として、今後の方針を策定していきたいと思います。


学長  伊藤 正直