お知らせ - 2018年

【学長通信】卒業の季節に想う


3月といえば卒業式です。これまで40年近く学生たちを社会に送り出してきましたが、私が、本学で卒業式を迎えるのは5年目になります。毎年、この季節になると、「自分は、どの程度きちんとした講義やゼミを行いえただろう」、「学生の期待にどれくらい応えられただろう」、という想いにとらわれます。大学での勉強は、専門知識や専門技能を習得することは勿論ですが、それ以上に、「どのように問題を発見するか」、そして、「それをどのように把握するか」、さらにそこから「どのように問題解決への道筋をつけるか」という、「ものの見方、考え方」を身につけることが要請されます。


毎年、新入生には、論理的思考の重要性を強調しています。今年度の入学式では、「学問は、どのような領域でも、そのそれぞれに、グラマー、ロジック、レトリックがあります。日本語のグラマー、ロジック、レトリック、英語のグラマー、ロジック、レトリックがあるように、家政学にも、文学にも、経済学にも、社会学にも、心理学にも、それぞれ固有のグラマー、ロジック、レトリックがあります。皆さん、卒業するまでに、ぜひ、このグラマー、ロジック、レトリックを身につけてください」という話をしました。卒業生の皆さんにもこうした力を身につけてもらいたいと思って、これまで講義を行ってきました。


といいますのは、女性をめぐる社会環境が、この20年間に緩やかにではあれ大きく変化し、女性がこうした力を持つことが、一層重要となっているからです。「ガラスの天井」がなくなったわけではありません。古い男女観もまだまだ広く残っています。しかし、日本の女性就業構造の特徴とされたM型雇用は、今、急速に解消しています。学校を出てから定年まで働き続ける女性が増えているのです。ただし、この裏面には、非正規雇用が2000万人を超し、その多くが女性であるという状況があります。


1999年6月には男女共同参画基本法が成立し、「職場、家庭、地域などのあらゆる場で、男女が対等の立場であらゆる分野の政策立案や決定に参画できる社会を実現する」という課題を掲げました。2015年8月には女性活躍推進法が成立し、「自らの意思によって働き又は働こうとする女性が、その思いを叶えることができる社会、ひいては、男女がともに、多様な生き方、働き方を実現でき、ゆとりがある豊かで活力あふれる社会の実現を図る」ことを課題としています。論理的思考力は、そのための必須の力です。


これらの法律は、女性の社会的活躍を後押しするものですが、法律は、その自動的な実現を保証するものではありません。男性の意識改革を前提としたうえで、女性が主体的にその実現を図っていくこと、そのために努力することが必要です。論理的思考力を身につけて社会に出ていくこと、そして、そうした力を錆びつかせないで保持し続けることを期待したいと思います。

 

学長  伊藤 正直