お知らせ - 2016年

【OGインタビュー】知事賞を受賞しました 管理栄養士・福川さん , ,

有料栄養士_福川さん

家政学部食物学科管理栄養士専攻OGの福川裕子さん(1987年卒)が平成26年度「東京都特定給食施設等栄養改善知事賞(優良栄養士)」を受賞しました(写真上)。

福川さんは総合卸商社「エトワール海渡」(東京・中央区)の社員食堂で管理栄養士として、社員の健康を食の面からサポートしている一方、中央区集団給食研究会にも所属して栄養改善を目的とする地域組織活動にも積極的に参画。受賞はこれらの功績が認められたものです。


2014年2月に、職場見学で訪れた在学生に、「糖尿病の恐ろしさを知り管理栄養士を目指すことにした。」と話してくれた福川さん。改めて管理栄養士を目指すきっかけ、日々の業務、食と健康への思いなどを聞いてみました。管理栄養士を目指している方はぜひご覧ください。


――管理栄養士を目指すきっかけについて詳しく教えていただけますか。

福川:高校時代、父の友人のAさんが糖尿病で亡くなったことが大きなきっかけになりました。Aさんは、病気についての知識や病気との正しい付き合い方を学ぶための入院「教育入院」までしたのですが、糖尿病を悪化させ、子ども2人を残して43歳の若さで旅立ってしまったのです…。好きなものを食べていただけなのに命を落としてしまう恐ろしい病気が糖尿病なのだと衝撃を受けました。
 高校時代には祖母の死もありました。死因は脳出血で、高血圧から引き起こされたものです。塩をとり過ぎると血圧が高くなり血管に負担がかかって脳出血になることを初めて知り、塩はカラダに必要と思っていた私は大きなショックを受けました。
 この2つの出来事をきっかけに、食事と病気との深い関わりに強い関心を抱くようになりました。もし食事に関して正しい知識があったなら幸せに暮らしていたかもしれない、もっと食について勉強してみたいという思いが募り、管理栄養士の道を目指すことを心に決めたのです。


――大学時代の学びはどうでしたか。

福川:家政学部食物学科は必修の授業が多く、実習や実験でレポートの提出も大変でした。ただ大妻はクラス指導主任制度があるので、いざという時にすぐ話ができる体制があったのが心強かったですね。私の指導主任は故坂本清教授(生化学)、副主任が当時は助手で現在は短大家政科教授の堀口美恵子先生。お二方には大変お世話になりました。堀口先生とは今でも交流があり、何かと相談させていただく良き先輩であり、お手本です。


卒業式_福川さん

卒業式で総代として卒業証書を受領、堀口先生(右)と校門で記念写真


――在学中、臨地実習はどこに行きましたか。

福川:管理栄養士課程は、病院・保健所・学校・企業の4施設の中から2施設の臨地実習が必須で、私は糖尿病のことを学びたかったので病院を希望しました。そして実習先の病院が偶然にもAさんが教育入院した病院だったのです!もしかしてAさんがこの病院に導いたのかも――そんなことを思いながら2週間の実習に臨みました。

実習先の病院で、Aさんと同じく糖尿病で教育入院した患者さん向けの講義を見学する機会がありました。その際、隣にいた男性患者さんが「お酒を飲むのは悪いことなんて頭ではわかっている!でも食べたいし飲みたいのを抑えられない。どうしたらそれを治せるのかそれだけが知りたいからここに来たんだよ」とつぶやくのを耳にしました。亡くなったAさんもそれを知りたかったのだろうな、と思うとともに、糖尿病治療の難しさを実感しましたね。講義では「糖尿病は血糖が高いと指摘されても悪い生活習慣を続け、長い年月を経て発症する人が多い」という話がありました。年を重ねてからではなく若いうちから生活・食習慣を正すこと、病院の門をたたかないよう「予防」に力を注ぐことの重要性を、実習を機に再認識しました。


――日々の業務を少しご紹介いただけますか。

福川:管理栄養士というのは、食を通じて傷病者の療養はもとより、それ以外の方々にも健康な食生活を送る際のアドバイザーとして、より良い方向へ導く役割があります。私の場合、社員食堂での給食経営管理と健康づくりのサポーターとして健康情報の媒体作成・健康増進イベントの企画・食事の相談が業務の中心になっています。
 給食のメニューはすべて私が決めています。私は2週間分をまとめて考えていますが、食材の栄養価・コストはもちろんのこと、メニューは社員を飽きさせないように好み・トレンド・バリエーションを考慮し、出来上がった時の彩りにまで気を配る必要があります。短時間で大量の給食を提供しますので、限られた調理器具で効率よく作業できるような調理工程を考えることも重要です。それを実現するため、栄養士をはじめ、給食作業に関わる人員の調整もしなければいけません。ヒト・モノ・カネを組み合わせ、どうマネジメントするか…難解なパズルを解くような業務です。

インタビュー_福川さん

――福川さんが職場で手掛けた取り組みなどをいくつかご紹介ください。

福川:弊社は「健康は食にある」を理念に掲げています。私が入社する前から、社員食堂で病院と同等の低エネルギー・低塩食を提供し、栄養相談を定期的に実施、直営クリニックとも連携するなど、もともと食と健康に関してかなり意識が高い企業だと認識しております。私は社員のさらなる健康促進のため、2002年に「社員食堂モニター制度」を立ち上げました。
 「社員食堂モニター制度」は、食堂担当者(管理者・管理栄養士・調理師など)と社員代表8人(20代から50代の各年代男女1名ずつ、1年交代で参加)で、社員食堂モニター会を年5回開催するという取り組みです。モニター社員からメニューや栄養情報などの提供方法についてヒアリングして改善することが目的です。モニター会でミニ健康教室として食と健康について話をすることもあります。参加者は、モニター会での意見や情報を課に持ち帰って伝えてくれるので、食と健康の重要性を社内に広く伝えることにもつながっています。
 健康増進イベントも定期的に開催しています。テーマを決めてそれに沿ったメニューを設定し、合わせて卓上メモ・ポスター・レシピ配布・貧血クイズ・血管年齢測定などを行い、楽しみながらわかりやすい情報と食事を提供するというものです。試行錯誤の結果、テーマを限定して短期集中型で情報提供を行うと認知効果が高いことがわかりましたので、2006年からは「貧血フェア」「野菜フェア」「血液サラサラフェア」などテーマを絞り、1週間ほどの期間でイベントを実施するよう改善しました。


エトワール海渡_福川さん

社内食堂モニター会(左)、食堂内のポスターと卓上メモ


――新しい企画の立ち上げなどで苦労した点、またどう乗り越えたか教えてください。

福川:最初に提案したことがすんなり実施できることは少なく、反対意見はやはりありましたね。そのような時に私が心がけたのは、なぜ実施が必要なのか理由を正確に伝えること、そして、納得してもらえるよう丁寧に説明し続けることの2点です。新しいことにチャレンジするには理由とともに、筋道を立て、メリットを示さないと人は動きません。伝える技術を磨く、諦めない心を持ち続けるのが最大のポイントではないでしょうか。そのためには、同じ目標を共有すること、お互い相手が困っている時には助け合えるような関係を日頃から築いておくことも大切ですね。


――外部研究活動も積極的に行っていらっしゃいますね。

福川:中央区集団給食研究会での活動では中央区内の集団給食施設の管理者及び栄養士が集まり、地区活動や勉強会・他社社員食堂や工場の見学会などを実施・開催しています。私はこの中央区集団給食研究会栄養士会の代表幹事を務めており、地区活動は年1回、健康イベント「ヘルスアップ栄養~ちょっとよりみち健康ロード~」で野菜摂取量アップのために栄養展示やアドバイスをしています(写真下)。社団法人東京都施設給食協会では、講演会のテーマや内容について企画する委員を約10年務めていました。



外部活動_福川さん

――今後の抱負を聞かせてください。

福川:昨年、優良栄養士として東京都都知事賞を受賞できたのは、周りの方々からの多くの支えや協力のおかげと感謝しています。これからもより一層、給食を通した健康づくりを推進していきたいと考えています。
 社員の健康が医療費の削減や病気による欠勤率低下ばかりでなく、仕事への意欲向上にもつながることから、企業経営においても社員食堂の活用が重要視されてきています。いつでも管理栄養士に相談できる直営給食ならではのメリットを生かして、社員の健康づくりに少しでも役に立てるように日々取り組んでいきたいと思っております。


――最後に、管理栄養士を目指す在学生、受験生へのメッセージをお願いします。

福川:将来どのような分野の管理栄養士を目指しキャリアを積むのか考えている方も多いと思います。管理栄養士としての幅広く正確な知識も重要ですが、合わせて大切なのが先生や先輩、何かの折にいつでも相談できる仲間をつくることです。多数の人の健康と命を預かる管理栄養士の業務は、常に科学的根拠に基づいたものでなければなりません。そのためには研究活動を継続して最新の知識を維持することはもちろん、とっさの時に相談できる体制を作っておくことがとても大切になります。私自身、今でも多方面にわたる諸先輩方に助言を頂き、支えられています。毎年、大妻の食物系OGが集って情報交換する「あじさい会」にも極力、顔を出すようにしています。人との縁はぜひ大切にしてください。


食べることは幸せや楽しい時間を運んでくれますが、栄養素のバランスが偏るとカラダへの疲労や病気などにつながります。仕事や家事で忙しい毎日を送る中、やむを得ず食事がおろそかになってしまう風潮がありますよね。そんな中で、食事の大切さや病気と食の関わりを伝え、人が健康に暮らせるよう、そして病気になっても悪化させないよう導くことができる唯一の職業が管理栄養士です。管理栄養士という職業が皆さんの憧れとなる存在になり、「子供たちが将来なりたい職業トップ10」に管理栄養士がランクインするよう一緒に頑張りましょう!

OG福川さん