お知らせ - 2012年

ゲストを招いて 年の瀬も講演会続く

木実谷院長講演 大妻女子大学では、年の瀬の忙しさにもかかわらず、学外からゲストを招いた講演会・シンポジウムが続けて開かれました。

 12月5日千代田キャンパスでは、日本初の重症心身障害児施設として有名な島田療育センター(東京・多摩市)の木実谷哲史院長が管理栄養士専攻に学ぶ3年生60人に対し、「命をささえる 命によりそう―重症心身障害児(者)施設の現状と課題」をタイトルに講演しました。同大家政学会食物学科分科会として行われたものです。(写真は、講演する木実谷院長、左上は小林提樹元教授

 同15日同キャンパスでは、大妻女子大学草稿・テキスト研究所(所長・兵頭晴子=文学部英文学科教授)の2012年度シンポジウム「翻訳〈小説〉の19世紀―19世紀における〈知〉の移動と文化変容―」が参加者およそ30人を集めて、日本文学科・木戸雄一准教授の司会で行われました。シンポジストとして招かれたのは、埼玉大学・山本良・准教授、成城大学・陳力衛教授と白百合女子大学・荒木正純教授です。

 同17日多摩キャンパスでは、神奈川大学(横浜・神奈川区)の小林孝吉事務局長が「グローバル世界と大学―神奈川大学の実践と課題(国際化の実践と問題点&雑誌刊行を含めた大学PR)」をタイトルに講演し、学生・教職員13人が参加しました。社会情報学部プロジェクト(生田班=生田茂▽吉原直樹▽三浦元博▽池田緑▽小泉恭子▽高野成彦▽中野希大)が企画した6回シリーズの連続講演会「多摩を知る。世界を知る。」の第4回として行われたものです。

 以下、各講演会の様子をリポートすると――。

食は人間らしさの証

 島田療育センターの木実谷院長は、重度心身障害児を抱える親は、子どもが口から食事を取ることにこだわり、チューブを通して食事を取るのでは、「この子は何のために生きているのか分からない」と訴えると講演で触れました。実際には、かめない、飲めない、気道に食べ物が詰まりやすいといった理由で、口から食事ができる入所者は三分の一以下にとどまるそうですが、治療よりもできるだけ人間らしい生活ができることを心掛けている施設ですから、2006年にはNST(栄養サポートチーム)室を設置し、管理栄養士が医師ら専門職員と連携しながら、障害児にとって食べ物をどんなふうに刻んだら食べやすいのか、どんな姿勢だったら食べやすいのかなどの研究に取り組み、成果を食事指導に生かしているそうです。院長は、「他人に優しい栄養士になってください」と学生たちを激励して、講演を終えました。

 島田療育センターは、本学多摩キャンパスの近隣にあり、OGが介護福祉士として採用された実績もあるのですが、同センターの礎を築いた初代園長・小林提樹さん(1907-93年)がセンター運営の第一線から退いた後の77~83年の6年間、本学児童学科で教授を務め、児童福祉学を担当していたことも忘れてはならないでしょう。

翻訳小説を取り上げ

草稿テキスト研 今回の草稿・テキスト研シンポは、しばしば「19世紀は『小説』の時代だった」と言われることに着目し、東西交渉が盛んになって異種混交的な「知」の移動が強まる中で、文化がどう変容し受容されていくのかを探るため、翻訳小説にスポットを当てました。

 シンポジスト3先生の研究報告タイトルは、次のとおりです。山本准教授「明治初期の翻訳と小説」▽陳教授「近代における『小説』概念の成立と中国への流布」▽荒木教授「明治期のもうひとつの翻訳形式『纂訳』をめぐって―大久保常吉(桜州)訳『大人国旅行・南洋漂流』(新古堂、明治二十年)をてがかりに―」。(写真は、シンポジウム討議の様子

批評を4半世紀社会へ発信

小林事務局長講演 神奈川大・小林事務局長は、5月に『埴谷雄高『死霊』論―夢と虹』(お茶の水書房)を出版するなど、文芸評論家という別の顔を持ち、雑誌「神奈川大学評論」(年3回発行)の編集には1987年の創刊以来、四半世紀にわたってかかわってきました。

 「同評論」は、通常の大学PR誌とは異なる、書店でも販売されるクオリティーマガジンとして知られ、「大学が社会に発信するには批評がなければならない」との編集方針のもと、創刊号の特集を「国際化社会と異文化の理解」としたのを皮切りに、日本、世界や人間にかかわる問題を特集し続け、筑紫哲也、落合恵子ら執筆者も広く社会から起用するなど、大学方針とは一線を画して出版されています。その論説は朝日新聞ほかマスコミに再三注目されるところとなり、おもねらないスタンスが結果として同大のステータスを高めてきました。そんな広報戦略が講演の後半では話されました。〔写真左は講演会冒頭の様子(立っているのは開会あいさつをする三浦元博教授)、同右が小林事務局長

 講演の前半では、小林さんが策定にかかわった「学校法人神奈川大学将来構想」(2008年)や一連の大学改革の取り組みが紹介されたのですが、「将来構想」の中の「100周年に向けた将来像(ビジョン)」の書き出しには、「世界は、情報通信技術の飛躍的な発展とグローバル化の急速な進展により、ボーダレスな社会へと変貌し、様々な価値観が入り交じり、不安定化する危険性を内在しながらも…」とあり、その後のリーマンショックやEU(欧州連合)経済危機を予見するかのような内容に感心させられます。これも小林さんが常にアンテナを張って雑誌編集に携わってきたたまものでしょう。おそらく講演のタイトルは学生の日常の関心とはかけ離れたものだったのではないかと想像しますが、わずかな人数とはいえ、「開催ポスターを見て興味を持った」と言って、学生5人(1年4人、2年1人)が自主的に参加し、最後まで聞き入って質問までしていたのにも感心しました。小林さんの講演が借り物の言葉の羅列ではない、批評精神で貫かれた内容だったことが聞き手にも伝わったからでしょう。

方丈記と平家物語のかかわり講演 小井土准教授

 文学部日本文学科の小井土守敏准教授は、12月15日、東京・千代田区の二松学舎大学で、「『方丈記』と『平家物語』」をタイトルに講演しました。『方丈記』成立800年記念シンポジウム&コンサート「今日は一日、方丈記――鴨長明の『心』を読む――」の第2部「二松学舎大学関係教員による、中学・高校・大学生、及び中学・高等学校教員のための『方丈記』講座」で、リレー講演の5番目に准教授は登壇し15分間講演したものです。

 小井土准教授は、平家物語(覚一本)の記述が方丈記の記事に依拠したとみられる部分を紹介するとともに、貴族・九条兼実の『玉葉』に依拠する部分が少ないのは、平家物語と方丈記が共に庶民的視点で書かれているからだろうとの見解を述べました。本年のNHK大河ドラマは「平清盛」でしたが、准教授も平家物語で1年を締めくくる形となりました。

小井土准教授と講座会場の様子