学長メッセージ

学長 花村 邦昭

大妻コタカ先生の教育理念の根幹には「女性の自立」がありました。「強い意志」「正しい判断」「豊かな情操」を兼ね備えた「自立自存」の日本婦人の育成が先生の目標でした。

もちろん、そこには「実技実学」の裏づけがなくてはなりません。「求められるのは、熱心な研究心、周到な洞察力、的確な判断力、どんなに難しい仕事にも体当たりしてゆく勇気、周りとの協力同心」、加えて、「知識・学問を真剣に受け入れてそれを素直に実践してゆく実行力」、「人間は成長するにつれて希望や理想は高くなる。その高い目標を目指して人はさらに創意工夫し、努力する。そのようにして人は不断に成長する」、先生の教育理念はここに尽くされています。わが国の大学教育において強く求められているのもこれです。

いま政府主導で「男女共同参画社会」「一億総活躍社会」「女性が輝く時代」が提唱されています。それらが真に実現するためには、それを背後で支える社会インフラの整備もなされなければなりませんが、それと並んで大事なのが、人それぞれにその人に相応しい仕事とポストが用意され、その実績成果がそのプロセスも含めて適正に評価され、公正に処遇される社会システムの整備です。現代のようなグローバル化したダイバーシティ社会にあっては、われわれの思考の枠組みそれ自体にも旧套を脱する刷新が求められます。これらのイシュー群に正面から向き合い、自分なりの解を見つけるよう促し、手援けするのも大学教育に課せられた使命の一つです。

大学での学びでいま一つ欠かせないのが人間的成長、人格的成熟に資することです。コタカ先生は、ゲーテ晩年の「大切なのは高い志を抱き、それをなし遂げる技能と忍耐をもつことであり、その他はいずれも重要ではない」という言葉を引用しながら、学生たちに「高い目標とそれを目指す不断の努力」を求めました。先生はそれに付け加えて、「社会を向上させ、人類に幸福をもたらし、自分自身の幸福を創ること、それには、人に、物に、事に愛情をより深く、強く持つことです」と言います。先生の教えの根本に「感謝報恩」があります。「人間は森羅万象あらゆるものの恩恵を受けていまを生かされている。その恩に報いるには愛情をもってするしかない」、先生にとって「報恩」は「愛情」と同義でした。

「高い希望と理想」「幅広い社会への関心」「不断の努力」「人・物・事への深い愛情」、これらを体得した大妻生はいま各処でそれぞれ輝きながら働いています。このコタカ精神を継ぐ女性たちが数多く本学の門を潜ってくださるのをお待ちしています。

2014年4月 学長 荻上 紘一